第49話/幕間 消失 召喚士ハジマは推理する
「くそっ! 勇者はどこに消えたんだっ!?」
14年前、異世界転移装置の起動実験失敗による施設大爆発以来の失敗だ。
一体何が起きたのか。ゲートが繋がった時は確かに1つだった魂が、こちらの世界にくる際に2つに増えていたのが原因か?
それはごくごく小さな魂だった。召喚直前になってペットでも抱きしめたのだろうか?
勇者消失とは、召喚儀式25人目にして前代未聞の大失敗だ。次の召喚に早くて3ヶ月はかかるが……。
ちらりともう1人に目を向け『ヤツの負担が大きいか。当分は召喚できないな』と判断する。その間に異物混入対策を考えることにしよう。
それにしても、召喚できたはずの勇者はどこにいってしまったのか?
この世界への転移と、言語スキルの付与は成功したはずだ。再び時空の狭間にのまれて、その中を永遠にさまようことになったのか、あるいは過去か未来に飛ばされたのか。
……未来か。
あるいは今回の勇者こそが『大いなる災い』なのかもしれないな。だとすれば私は、それに立ち向かう勇者を用意しようとして、それそのものを用意してしまったことになるのか。いやはや、なんともなんとも。
そしてふと、男……召喚士のハジマは妙なことに思い至る。
去年、最前線で戦う兵士たちの間におかしな噂が流れていると聞いたな。確か『機械仕掛けの魔女』だったか。
なぜ今そんなことが頭に浮かんだのだろう? しかし何かが引っかかる。魔女、爆発事故、14年前……。
そういえば昔、妙な話を耳にしたことを思い出す。南の果ての小さな村に大きな人形を連れた黒髪が住み着き、不思議な魔術や道具を開発したが、魔物に襲われて死んだ。そしてその後、人形が動き出し、自分の意思で村を出たというもの。そいつが死んだのが確か14年前ではなかったか?
……もしかしたら、その男が過去に飛ばされた25人目の勇者だったのかもしれないが、もう死んでいるのなら用はない。しかし人形連れか。まさか異界から来た人形に魂が? ありえないことだとは思うが、気になる。『機械仕掛けの魔女』の噂を詳しく調査しておいた方がいいか。もし人形にも魂が宿っていたのだとすれば、それが例え人間ではなくとも異界から来た魂である以上、勇者の可能性がないとは言い切れないのだから。
「……あるいは、大いなる災いになりうるか。どちらにせよ、私は私の目的のために勇者を召喚し続けるだけだが」
呟くハジマは被っていたフードを外す。
そこにいたのは、この世界では非常に珍しいとされる黒髪を持つ中年の男だった。




