第42話 夢想 自律可動式愛人形の誕生
『……やった! やったぞおおおおおおおおお!!!!!』
目を開ければ、若い男が喜んでいる。何がそんなに嬉しいのだろう?
『ノダ! ノダ! ノダノダノダッ!! 僕は遂に、遂にあなたの願いを叶えたよっ!!』
ノイズが走る。意識が遠のく。あたしは一体……?
[ここは……?]
『ここはかつて、僕らの秘密基地だったんだ。覚えてないかい? 君とノダが住んでいたんだよ?』
ノイズが走る。意識が遠のく。
『ダイアンさん! 何をする気なんだっ!!』
『うるっせえ!! 邪魔するなソラッ!! 人形はゴーレムになどならず、人形のままでいるのが一番幸せなんだよっ!!』
『それはあなたが決めることじゃないっ!!』
『じゃあ誰が決めるんだ!? 神か!? お前か!? ノダかっ!? あいつはな、もう死んでるんだッ!!』
[ノダ……]
ノイズが走る。意識が遠のく。
『リクちゃんもいれば、きっと喜んでくれたでしょうね……』
『ねーちゃんには俺から手紙を書いとくよ! 飛んで帰ってくるかもな!』
『ノダさんも……きっと……』
ノイズが走る。意識が遠のく。
『リ、リンナ……手、握ってもいいかな……?』
[いいよ〜?]
『や、柔らかいな……俺、女の子の手を握るのなんて初めてなんだ……っ!!』
[でもあたし、ゴーレムだよ〜?]
『ゴーレムだって、人形だって、リンナはリンナだろ?』
[へっへっへ〜♪ カイはおだてるのが上手だね〜?]
『別におだててるわけじゃ……』
[ん? なんか言った〜?]
『な、なんも言ってねーよ! た、ただ、ノダが今のリンナを見たらどう思うのかなー? ってさ!!』
ノイズが走る。意識が遠のく。
[ごめんね、みんな……でもあたしは、ノダさんを生き返らせる。何年かかっても、必ず……ッ!!]
ノイズが走る。意識が遠のく。
『リンナ。本気の思いには、本気で返せ』
[リク……]
『少なくともノダは、ずっと本気で生きていた。お前のことも、本気で愛していた』
[ノダ……さん……]
ノイズが走る。意識が遠のく。
[あたしはノダさんを生き返らせる。そしてまた愛してもらうのっ!]
[人形、死人の愛に固執してどうする?]
[だってあたしは、生きているからっ! 愛されているからっ!]
[死んだ者は生き返らない。そんな当たり前がなぜわからない?]
[生き返らせる。ノダさんがいなくて、あたしだけが生きているのはおかしいから!]
[話にならないか……人形はただ、人形のままでいればいいと言うのに……ならば教えてやろう。その男が死んだのは……]
ノイズが走る。意識が遠のく。
[壊れたか人形……てこずらせおって。……ふん、気まぐれだ。お前を修理してやろう。ただし記憶は失ってもらう。それでもなお、愛があると言うのなら……その身を持って示してみせよ!!]
ノイズが走る。意識が遠のく。
ノイズが走る。意識が遠のく。
ノイズが走る。意識が遠のく。
『凛菜……あ、あ、愛しているよ……』
[……あたしも、愛してる]
言いたいけれど、あたしは喋れない。
そっと、震える腕に抱き締められる。
抱き締め返したいけど、あたしは動けない。
『ああ……凛菜のにおいがする……やっぱりこのにおい、落ち着く……』
肩越しの甘い囁き。
あたしは喋れないから、精一杯、伝わることを願って念じる。
[ノダさんのにおいも、あたしは好きだよ]
ノイズが走る。意識が遠のく。
ノイズが走る。意識が遠のく。
ノイズが走る。意識が遠のく。
「……ンナッ! おいリンナッ!! また俺を置いて勝手にいなくなっちゃうのかよっ!? やっと会えたのに!!」
[カ……イ……?]
「リンナッ!? 目が覚めたのかっ!! よ、よかったーーーっ!!」
[ここ、は……?]
「あ、ああ。 森の中だけどな、捜索隊からは離れてて、人目につかない安全地帯だ。俺、そういうのに詳しいからさ」
[カイ、大人になったんだね……]
「まだ19だけどな……って、リンナ!? 記憶が戻ったのかっ!?」
[う、うん……そうみたい……でもごめん、もうちょっとだけ眠らせて……]
「あ、ああっ! ゆっくり眠ればいい! ここは安全だし、俺が付いてるからなっ!!」
再び意識をなくした眠り姫を見て、カイは思う。
───リンナは変わらないな。出会った時から、ずっと。




