第32話 看板娘は困惑する
───リンナの休日明け。
「じゃあ、来週には村を出るんだね?」
[急にごめんなさいっ!]
「まぁ、いつでも戻っておいで。アンタなら大歓迎だ」
[ア、アネゴぉ〜〜〜]
「アネゴォ〜〜〜ッ!」
「[ん?]」
声が重なる。
飛び込んできた男によると、あの悪ガキコンビが昨夜から帰って来ないと騒ぎになっているそうだ。……名前なんだっけ? そうだ。ウィンとウォートだ。あたし達だけの秘密の名前。
[あ、あの……あたし昨日、夕方まで一緒に遊んでて……]
「何か! 何か言ってなかったか!?」
[こ、このあと内緒でどこかに行くって……]
「そ、それはどこなんだ!?」
[秘密だ、って……]
「チッ! 役立たずの野良ゴーレムが! じゃ、じゃあアネゴすみません、何か分かったら……」
「ああ。すぐ連絡するよ」
「……気を悪くしないでおくれよ。子どもが行方不明で気が立ってるんだ。ところで、何かヒントはないのかい?」
[確か……『あれを作るにはベルメタルフラワーが必要だ』とか小声で……]
「ベルメタルフラワー!? あれは黒い森にしか生えないはずだよ!? あの子達、なんだってそんな所へっ!?」
アネゴが珍しく声を荒らげる。黒い森とは、村から街へと向かう途中で横目に見える、その名の通りに真っ黒な森のことである。多数の魔物が生息するとされるが、夜でもない限りは魔物達は積極的には森から出てこない。ただ、森に入るものには容赦ないが。
「すぐ助けに行かなくちゃ! 手練れを集めて……って、リンナっ!?」
アネゴは壊れた店の扉が落ちる音で、リンナが飛び出したことに気付いた。




