*飛行機に乗って
引き続き、あかりんとTallのそれからをご覧頂き有難うございます!
この後、享の秘密やらなんやら、思いも寄らぬ展開が!
じれじれからのイチヤイチャも加速して参りますが、邪魔も……
あ楽しみに♪
『これ、何?何で私一人で飛行機に乗ってんの』
昨日の夜、なんだかんだでお互い謝りあって、お互いが大事な存在という事を改めて感じた二人。
そして今日は旅立ちの日だが、見送りは昨日の結婚式の時に一切断った。
お別れではなく始まりだと灯も享も考えたからだ。
見送られる方も見送る方も結局淋しい気持ちにならずに済む様、式の後に挨拶を済ませた二人は、今日、新婚旅行でハワイに向けて出発をする搭乗手続きをするところだった。
チェックインカウンターに並んだ灯と享。
享が自分達の番になった時に航空券とパスポートを一緒に出す。
すると、地上係員が享に囁くように話す。
「横溝様、申し訳ございませんが、行き先がご変更になっております」
「え?」
「緊急事態とのことで申請がございまして、享様はロサンゼルス、宮守灯様はマサチューセッツにとお伺いしております」
「緊急事態?それは、会社の方からの要請ですか?」
「そう、伺っております」
「仕方ない……では、その様にチェックインをして下さい」
「かしこまりました」
搭乗ゲートで、それぞれ違う行き先になった灯と享は搭乗待ちをしているが、
「何で?新婚旅行にハワイに寄ってから、本国に行くんじゃなかったの?」
「ごめん、今は詳しくは話せない。急に出勤はよくあることで……」
「いったい、どんな仕事してるかも、まだ教えてもらってないんだけど」
「本当、ごめん!あ、でもロスに行くからって遊びに行く訳じゃないからね!」
「遊びに行くんじゃないのは分かるけど……私は一人で、ニューヨークで乗り継ぎしてマサチューセッツのボストンの空港に行くって何で決まってるの?」
「多分、達志が決めたんだと思う。おばあちゃん家に先に灯を連れて行く為に」
「達志パパが?」
「一人でハワイもないだろうし、僕がいないワシントン(近く)の新居に行かせる訳にも行かないから……仕事は一件片付けないと帰れないんだ」
「いつ帰れるか分からないって事?」
「言うなれば……そう言うことになる」
「一緒にいるんじゃなかったの!!」
「灯、本当ごめん!」
「新居ってワシントンなんだ?」
「あれ?それも伝えてなかった?ごめん」
灯は享の会社の方針か何かは知らないが、休暇を返上させる、しかも新婚旅行の途中なのに切り上げさせるなんて理不尽なところに、何で享は勤めたのだろうと思った。
先に享の方が出発する。
「灯、怒らないでお願い。ミッ◯ーマ◯スのぬいぐるみ買ってくるから」
一瞬、灯の目がキラっと光りはしたが、憮然とした態度のままだ。
そんな灯を抱きしめて、享はキスする。
「もう、誤魔化さないで!」
灯が身体を離そうとするも、むしろガッチリホールドされて、頭を抑えられてキスを続ける享。
灯は享の濃厚なキスに流れを持って行かれてボンヤリしてしまう。
「あ、やばい!時間だ!灯!灯!本当ごめん!気をつけて行ってね。ボストンの空港で達志が絶対待ってるから!安心して!じゃ!」
小走りにどんどん離れて行く享、何回も振り返っては手を振って姿が見えなくなった。
灯は一人取り残されたが、案内掲示板がパタパタと音を立てて、変わるを見て、そろそろ自分も搭乗ゲートに向かわないとと移動し始めた。
と言う訳で冒頭に戻る。
『眠れない……』
パンアメリカン航空のファーストクラスのスリーパレットシート※であるも、一人きりの灯は不安になる。
途中、ニューヨークで乗り継ぎがあり、ボストンまで行くには十六から十八時間ほどかかる。
ほぼ丸一日飛行機に乗っている様なものだ。
『これから、どうなっちゃうんだろう……Tallが仕事人間だと思わなかった』
灯は英会話のレッスンの甲斐があり、無事ニューヨークでの乗り継ぎを済ませ、今マサチューセッツに向かう飛行機の中だ。
『達志パパ、本当に来てくれてるのかな……?』
十二年ぶりの再会。
隣の家のカッコいいパパが、義父となるとは……縁の不思議を感じた灯。
『Tallは大人になってたけど、パパはどんな感じなのかな?』
数時間後、ようやくボストンはジェネラル・エドワード・ローレンス・ロガン国際空港に到着。
到着便名を確認し、手荷物受取所のCarouselと呼ばれるターンテーブルに向かう。
灯の荷物はファーストクラスだったので優先荷物タグが付けられ、早めに出て来た。
出迎えの人でごった返す到着ロビー。
税関を終えてガラス張りの一方通行の扉を押し開けると、そこが到着ロビーだ。
扉の向こう側には、名前を書いたミーティングボードや花束を持った出迎えの人、旅行会社の添乗員、タクシーの運転手などが人垣を作って待っている。
その中に一際、目立つスラッとした明るい茶色の髪の紳士がおり、灯に手を振っている。
灯が移動する方に、その紳士も移動する。
そして、
「あかりん!!」
享そっくりな声で名を呼ぶと、ロビーに出たところで灯はそのまま高く抱き上げられた。
「きゃ!」
「大きくなったね」
降ろさないまま、頬にキスされるも
『達志パパ変わってない』
灯は思わず、その紳士の首に抱きついた。
「パパ!」
「あかりん!本当の娘になってくれて有難う!」
「こちらこそ。嬉しいです」
お互い見つめ合って笑いながら、達志が灯を大事なものでも置く様に静かに灯を下ろしたところで、彼女はようやくボストンの地を踏んだ。
注:ここから物語は英語の会話になりますが、作者の都合により、日本語表記のままです。
※スリーパレットシート
パンアメリカン航空のファーストクラスは、|Sleeperetteと呼ばれる超大型の電動リクライニングシートになっている。脚をゆったり伸ばせるレッグレストを備え、当時の技術で最も水平に近い角度(深く倒れるリクライニング)まで傾くシートのこと。




