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Just like starting over〜アメリカ帰りの幼馴染に振り回されちゃって~からのあかりんとTallのそれから〜  作者: 優月菜


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*嬉しいお誕生日は続く


「美味しかった!本当パパ有難う!ここで、まさか甘鯛(ぐじ)に出会えたり、高級食材の特上みたいなお寿司も食べられるなんて……」


お腹がいっぱいの灯は、まるでおっさんのように腹を撫でまくる。

それを見ておばあちゃんが、


「灯?なんだか、そこだけポッコリして、あなたまさか?」

「え?」

「赤ちゃんじゃないの?」

「えっ?それは……」


享が気を効かせて話の間に割って入っておばあちゃんに声を掛けた。


「おばあちゃん、そろそろいつもソープドラマ※1の時間だよ。リビングにいこうか?」

「あ、そうそう。サンタバーバラ※2が面白いのよ」

「へえ、一緒に見ようかな」


「灯もね、来なさいよ」

「うん、ちょっと片付けたらね」

「灯、ここは僕に任せて一緒に行きなさい。また享にヤキモチ妬かれても厄介だからね」

「じゃあ、パパこそ一休みして、ここに来てからずっと何かしらしてくれてる。疲れちゃうよ」


灯に真っすぐな瞳を向けられた達志は大げさに


「その顔には弱い!もう本当にあかりんは可愛すぎる。じゃ、僕もちょっとだけ休ませてもらうことにするよ」

「はい、どうぞどうぞ。ごゆっくり」


そして一人になった灯は、お寿司のことを思い出し笑いしながら、黙々と片付けをこなしていった。

足元にいたはずのマールがいない。

『偉いね、マール。言わなくてもおばあちゃんのそばに行ったんだね』


そんなマールに達志が手術の予約を勝手に入れたと聞いたときは灯は驚き、内心怒りが湧き上がっていた。

こんな、まだあどけなさも残るようなマールに去勢手術をするなんて、アメリカでは6ヶ月ほどの時に受けるのが当たり前になっていたが、灯には成犬になる前にという意味がよくわかっていなかった。


達志から聞かされたメリットで、ようやく理解した灯だったが、それでもやはりちょっと辛い。

『病気でもないのに』

お皿から汚れをさっと払う。

その時、いきなり後ろから抱きしめられて、肩を揺らすほど驚く灯に享が囁く。


「何考えてたの?」

「びっくりした」

「なんで?足音聞こえたでしょ?」

「ちょっと考え事してたからかな……聞こえなかった」


後ろから手を回すと、お皿やグラスに着いたちょっとした汚れだけを取るをどんどん繰り返していく。


「さあ、後は食器洗にいれるだけだから」

「有難う、Tall」


食器洗い機に入れてしまえば、後は勝手に終わるのを待つだけだ。


ずっと灯の後ろにくっついたままで作業をする享。

あかりの耳元で囁く。


「さっきの灯……すごく可愛かった。愛してるって何度も言いそうになっちゃたよ」


そういいながら灯の耳たぶを甘噛みした。


「ん……」


灯の反応に享の方が胸が熱くなる。

『やばい、さっきの灯を思い出す』


「やばい」

「え?」

「僕の方がマールより危険だ」


享は庭に走って出て行ってしまった。


「Tall?!何処行くの?」


マールがリビングからやって来たかと思ったら、享を追いかけて飛び出して行った。

少し先の方で、じゃれ合って遊んでいる一人と一匹。


灯はその邪魔をせずに部屋に戻り、そっと鍵を閉め、享へのクリスマスプレゼントであるセーターの続きを編み始めた。

これは本人にだけは絶対ばれたくない。


夜はおばあちゃんと早々と寝る。

日中は洗濯をしたら天日干しが一番健康にいいと思っている灯は何はともあれ、乾燥機任せにせず、どんなものでも全部外干しにする。


朝昼夜、ご飯の用意も細心に注意を払って、野菜も肉も食べやすい大きさにする。

フードプロセッサーを使うと細かすぎて「食べた気がしないと」おばあちゃんが悲しがるからだ。

灯は下ごしらえに結構時間をかけるようになっていた。

食べて片付けたら、もう次のご飯の支度という日すらあった。


おばあちゃんが昼寝をしている時間が一番進みそうではあるが、うっかり自分も寝てしまうことがある。

地味にコツコツ、こういった合間時間にやるしかない。


縄編みのやり方はおばあちゃんに習うことになったが、おばあちゃんくらいになると、口頭ですらすらと言えるらしい。


そこでまずは設計図(パターン)を言ってもらい、灯が書き取った。

それを呪文のように唱えながら

「Row 1 (RS)……P2…… C4F…… P2.……」


手順はこういう意味だ。

1. Row 1 (RS):

「1段目(表面)を編む」(RS=Right Side、つまり作品の表側)

2. P2 (Purl 2):

「裏編みを2目」編む。縄編みの模様をぽっこり浮き立たせるための背景部分

3. C4F (Cable 4 Front):

 これが縄編みの核心(設計図の指示)

 • 4本の目をいじるよという意味(2目と2目を交差させる)。

 • F (Front) は、縄編み用の補助針(U字型の針など)に移した目を、

 「編み地の前側(手前)」にキープして待たせておくという意味。

 • 具体的な動き: 最初の2目を補助針に移して手前に休ませ、次の2目を普                        

  通に表編み(Knit)し、最後に休ませておいた2目を補助針から表編み。

  これで編み目がねじれて、縄の形になる。

4. P2 (Purl 2):

  最後にまた「裏編みを2目」編んで、この段の模様が完成……という訳だ。


そのおばあちゃんが言った”設計図通りに編むだけよ”に灯は悪戦苦闘していた。





※1ソープドラマ(いわゆる昼ドラ)

1930年代頃、アメリカのラジオでこうした主婦向けの連続ドラマが放送されていた際、洗剤や石鹸のメーカー(プロクター・アンド・ギャンブルなど)が主なスポンサーだったことから皮肉や親しみを込めて「ソープオペラ(石鹸の劇)」と呼ばれるようになった。

※2『サンタバーバラ』(1984〜1993年)

日本でもWOWOW開局当初に放送されていました。「階段を転げ落ちて、起き上がったら(大人の事情で)役者が別人になっていた」といった、ソープドラマならではのハプニングや突飛な展開が語り草になっている。  


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