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猫と少女の師弟関係  作者: 猫野 甚五郎
第二章 水の街ウォーレイン
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23話 復活祝い

 二人が向かっているのは街の近くにある林。果物や木の実、きのこなど食べられるものが多く取れる場所だ。水魔の森と違い危険な魔物も居ないので、散歩がてらのんびりと向かっていた。


「いい天気だなぁ……」

「お日様……ぽかぽか……」


 サラサが治り気が抜けたのか、二人とも日の光を浴びながらぽやぽやとしている。こんな状態でもたまに襲ってくる魔物は要が一撃で倒しているのが恐ろしい。


「しっかし、水魔の森は大変だったな。さすが禁足区域といったところだ。あんな事がなければ意向とは思わないな」

「うん、あそこは女の敵」


 蔓に捕まってまさぐられるわ、体に匂いが染み付くわで散々だったユーフィ。ちなみにマインドイーターたちの消化液を食らうと服が解けるというさらに女泣かせの攻撃がある。


「それに、足を引っ張っただけだった…………」

「まだ気にしてたのか。ユーフィは色々と大変な目にあってたがそのお陰でこっちが攻撃しやすくなったってのもあるし、そういう意味では助かったよ。散々だったユーフィには悪いが」

「むぅ、もっと強くならないと」


 よっぽど何もできなかった事が堪えたのか、また修行をがんばろうと決意するユーフィ。このまま落ち込んだままだったらどうしようかと思っていた要だったが、意外と前向きなユーフィを見てほっと一安心する。


「ま、そう思うことは悪い事じゃないが、焦らずがんばろう」


 林に着いた二人は辺りを見回す。この林は水魔の森とは違い木々がそこまで密集しておらず、見通しは良い。

 二人は早速目当ての果物を探し始めた。もちろんそれ以外の果物や木の実など、色々食べられるものがあるのでそれも採取するのを忘れない。手当たり次第に採ってアイテムボックスへとせっせと仕舞っていく。木の上になっている物は要が上って叩き落とし、それをユーフィが拾っていった。

 これだけ乱獲していたらすぐなくなってしまいそうだが、この林にあるものは大体二、三日で復活するのでまったく問題ないのだ。


「これ……も違う。あれ……も違う」


 暫く探していたが、なかなか目当てのものを見つけられない二人。というのも、サラサが好きな果物は珍しいものでなかなか発見されない。だから店に並ぶ事も滅多に無く、こうして二人が探しに来たというわけだ。


「カナメ、匂いで見つけて」

「無茶言うな、俺は犬か! そもそも嗅いだ事も見たことも無いわ!」


 なかなかの無茶振りに、突っ込みまくる要。その後も探せど探せど見つからず、違うものばかり見つかる。果物だけでなく薬草やきのこなども大量に手にいれ当分食料には困らないかもしれない。


「ちょっと休憩するか」

「うん、せっかくだからさっき採った果物食べる」


 探すのに疲れた二人は丁度休憩するのに居場所を見つけたので、休む事にする。木の根元に腰を下ろし、採ったばかりの果物を取り出す。

 真っ赤なその果物は表面は硬いが、割ってみると中から果汁があふれ出し、桃のように柔らかい果肉が現れた。一口食べると口の中でとろけ、じゅわっと果汁が弾ける。


「甘くて、とろとろ」

「これは美味しいな。いいデザートが手に入った」


 その果物の美味しさに虜になった二人は黙々と食べ進める。すると甘い匂いにつられたのか茂みからウサギやリス、小鳥といった小動物達がひょっこりと顔を出し集まってきた。

 手持ちの果物はまだまだたくさんあるので、集まってきた動物たちに分け与える二人。皆嬉しそうに食べている。

 そして出来上がったのが、小動物に囲まれて身動きができなくなってしまった。要にいたっては真っ白でもっふもふのウサギに左右から擦り寄られ、頭には小鳥が止まってつつかれ、背中にはリスが寝そべっているというある意味ハーレム状態。


「カナメ、もてもて?」

「嬉しくないわ!」


 そういっている間にも、ほっぺたにぐいぐいと顔を押し付けてくるウサギたち。なかなか積極的だ。

 ユーフィは膝の上で寝ているウサギを撫でつつ、成されるがままのカナメをほほえましそうに見ていた。

 しばらく物凄いまったり空間を展開していた二人だったが、そろそろ探索を再開しようと立ち上がる。身動きが取れなかった要は、周りに居た動物たちを説得して何とか抜け出した。実は猫訳にゃんやくのお陰で言葉が通じたりする。要からの一方通行だが。

 ついでにだめもとで目当ての果物を知らないかと聞いてみる。


「まあ知らないだろうな……って、お?」


 すると動物たちがこっちだと言わんばかりに、一つの方向へと向かっていく。まさかとは思いつつも少し期待してその後を付いていく。

 すると付いて行った先には大きな大木。そしてその枝には葉っぱに隠れた目当ての果物、黄金に光る頭サイズのゴールデンボールがなっていた。


「いや、話を聞いたときはそんな果物無いだろうって思ったが、本当にあるんだな」

「うん、びっくり」


 二人とも開いた口が塞がらないといった様子で、キラキラと輝くゴールデンボールを眺めていた。なんというか、それだけがもの凄く浮いている。とりあえず要はその木に登って、生っていた三つを回収した。


「この林にあるのはこれだけなのか?」


 動物たちに聞いてみるといっせいに首を縦に振る。


「なるほど。だから希少なんだな」


 結構な広さの林に三つしかならないとなったら、なかなか出回らないのも仕方が無い。


「よし、それじゃあ俺たちはこれで。教えてくれて助かったよ」


 要がお礼を言うと、どういたしましてといった風に一斉に鳴く動物たち。そして一列に並び、戻っていく二人をお見送りする。


「カナメ、やっぱりモテモテ」


 無事目的を達成した二人は沢山の動物たちに見送られながら、街へと戻っていった。





「見つかったか?」


 ゼルの家に戻るとテオルが丁度準備をしているところだった。


「ああ、問題なく見つけたぞ」

「それはすごいな。見つけようと思って見つけられるものでもないんだが、運が良いな」

「モテモテのお陰」

「モテモテ?」

「い、いや、なんでもない。それで場所はここなのか?」


 ユーフィが余計な事を喋らないよう慌てて話題をそらすカナメ。話をさえぎられたユーフィはちょっと不満そうだ。


「ああ、他に居場所も無いしな。ここなら庭もあるし、入りきらない場合は部屋も使えばいい。それにサラサも病み上がりだからな」

「たしかにな。ここなら何かあってもすぐ休めるもんな」


 皆サラサのことを気遣ってここにしたようだ。準備の方も庭にテーブルが用意され、家の中ではせっせと料理の方を作っていた。


「あら、おかえりって、本当に見つけてきたのね……」


 要たちは取ってきたゴールデンボールをリーナに手渡して冷やしてもらうことに。渡されたリーナはその光輝くゴールデンボールを物珍しそうに眺めていた。


 その後、細かな手伝いをしていると、仕事を終えたノーブル商会の人たちが徐々に集まってきた。

 そして日が暮れた頃にすべての準備が整い、ノーブル商会の人たちも仕事を終えて全員が集まった。辺りは暗いが、周りにちゃんと明かりをともしているのでここら一帯は明るくなっている。こうしてサラサの復活祝いが始まった。





「みなさん、今日は集まっていただきありがとうございます。そしてこの度はサラサのために皆さんが協力してくださったお陰で、こうして元気に今日を迎える事ができました。本当に、本当にありがとうございました」


 集まった人の前で感謝の思いを伝えたゼル。それを聞き、無事でよかったと泣き出す者や、何時もお世話になっているからと逆にお礼を言う者などさまざまな反応が返ってきた。この様子を見るだけでゼルの信頼の厚さが分かるだろう。そして次に出てきたのがサラサ。


「えっと、みんなのおかげでげんきになりました。ありがとう!」


 大勢の前でという事で緊張し、少したどたどしかったが精一杯感謝の気持ちを伝え、満面の笑みを見せるサラサ。そんな姿を見れただけで、がんばった人たちは報われるだろう。こうして挨拶が終わったところで皆がそれぞれ食事を開始する。


「この……肉は……やばいな……」

「肉汁……じゅわじゅわ……美味しい」


 今回一番の功労者である二人は、水魔の森で取ってきたお肉の美味しさに取り付かれ、ひたすら堪能していた。あの姿に反してとても柔らかいお肉で、ぎゅっと旨みが詰まっている。それが口に入れた途端に、肉汁とともに溢れ出す。味付けも塩胡椒とシンプルなもので、よりお肉の旨みを引き立たせていた。二人が夢中になるのも仕方がないだろう。


「お前ら、むさぼり過ぎじゃないか?」

「「だって美味しいから」」


 あきれたテオルに声をかけられ、息ピッタリで返事をする二人。そしてまた食事に戻る。テオルはこれは暫く駄目だな、と回れ右をする。

 しばらく食事を堪能した二人は、落ち着いたところでサラサの元へ足を運ぶ。


「あ、おねーちゃんにねこちゃん!」

「よ、サラサ。楽しんでるか」

「うん、どれもとってもおいしーの!」

「なら提供したかいがあったな」


 サラサだけでなくほかの参加している面々もとても楽しそうに食事をしていて、がんばってよかったとあらためて実感する。


「それじゃあそろそろメインのデザートにしましょうか」


 ゼルはそう言うと家の中へ冷やしていたゴールデンボールを取りにいく。今日一番の目玉だ。そして食べやすいように切り分けたものをサラサの前へと持ってくる。


「パパ、これって……」

「そう、サラサの好きな果物だよ。二人がわざわざ取ってきてくれたんだ」

「ふわぁ~、ね、たべていい?」

「ああ、一番はやっぱりサラサだな」


 許可を得たサラサはさっそく一切れ口に頬張る。するとほっぺたを手で押さえ、蕩けた様なとても幸せそうな顔をする。


「あまくて、おいし~い!」


 そして目をぎゅっとつぶって体をじたばたさせ、その美味しさを体全体で表現する。そんな姿を見たら食べたくなったのか、ユーフィは涎がたれないよう注意しつつ、じっとその姿を見ている。要も尻尾を振って目をキラキラさせていた。


「お二人もどうぞ」


 見かねたゼルが二人の分も用意してくれ、二人もぱくりと一切れ頬張る。


「「っ~!」」


 すると二人も幸せそうな顔をしつつ、目をつぶりその美味しさに酔いしれる。

 サラサとユーフィと要。三人が並んで幸せそうにしている様子を周りはほほえましそうに見つめつつ、俺も私もと皆が順番に口にしていく。そして誰しもが口に入れた瞬間幸せそうな表情になった。


 こうしてサラサの復活祝いは大成功に終わった。


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