蛇足
読んでも読まなくてもいい話。
すごく短いです。
さて、次の話は――
「なあ、おい」
おや、何かな。
「いい加減教えてくれない? ここはどこで、どういう理由で恥ずかしい話をさせられているのか」
ふむ?
……実はね、ここは死んだ人間が来る場所なんだ。
「へぇ?」
閻魔の裁きを知っているかな? 浄玻璃鏡で亡者の行いを検め、六道のいずれに向かうのかを決定するのだが。
「これがそれだと?」
君の過去の行いをここで語る理由としては妥当だろう?
「……まぁいいけど。それにしたって、どうしてあんな話をさせられたのか。年代だって、ばらばらだし」
ああ、そこには明確な意図がある。
主人公っぽさが低い順番に――話がひとつ進むごとに、君がより当事者に近く、そして君自身の問題としてより深刻なものになるように話を選んだ。
……なんでそんなことを、という顔だねぇ。ひど――ごほん、なんでもないです。
まぁ、どうしてこの話の選び方をしたのかについては、大した意味はない。
結局のところ、人が興味を持つ話というのは、物語というものは、問題を解決する過程を語るものだ。
主人公は物語の中で必ずなにがしかの問題に直面する。
問題自体は何でもいい。殺人事件でも、誰かの所持品がなくなったでも、構いやしない。その問題が高尚であろうと、低俗であろうと、聞き手が興味を持つ場所に違いはない。
聞き手が感動するのは、主人公の行動に対してだからだ。
物語の中で、主人公は問題を解決するために行動する。
その行動の結果として、主人公が他人を助ければ物語は英雄譚になるだろう。他人を不幸にすればそれは悲劇となり、主人公自身が不幸になるならばそれもまた悲劇か、あるいは喜劇かな。
「…………」
おっと、失礼。少し話が脱線したな。そう怖い顔をしないでくれ。
結局どう話を選んだところで、君が見つけた問題を君自身が解決する話しか選ばないのだから、せめて話の選び方で遊んでみようとそう思っただけだよ。
深い意味はないさ。
「……あっそ。で、私はいつになったら解放してもらえるの?」
もう少し――私が満足するまで語り合えたらかな。
「生きて返してもらえるのかしらね」
さてね。
では、話を続けようか。