第四話:司法取引と、すれ違う視線
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ついに違法エナドリの取引現場へ潜入したセナ。
しかし現場には、なぜか冷徹な副会長・リサの姿が……!?
「一般人の副会長に魔法の存在がバレたらマズい! アタシが体を張って誤魔化さなきゃ!」
必死にリサの目を隠し、変な言い訳で庇おうと孤軍奮闘するセナ。
一方でリサは、裏で淡々と敵の術式を解析&絶対零度のガードプランを構築していて――?
セナの哀しい空回り劇場、第4話です!
薄暗い旧配管スペースの中、リサの懐中電灯がセナの顔を鋭く照らし出している。
「生徒会長サマがたった今、何をしてたか知りたくない?」
というセナの言葉が反響し、私の心臓が跳ね上がる。
(ここで魔力行使や術式中和の件をバラされたら、会長の座も、平穏な日常も完全に終わる……!)
最悪の事態が頭をよぎる。頼むからそれにだけはならないで……!
リサは懐中電灯を固定したまま、視線だけを私へと滑らせ、冷徹な声で
「……どういうことか、説明しなさい」
とセナに続きを促す。
セナは悪びれる様子もなくヘラヘラと笑い、アイラの方へチラリと視線を送りながら口を開く。
「実はさ〜、アイラちゃん、アタシがここにフィオナの『ヤバい特製在庫』を隠してたのを知って、一人で回収・隠滅しようとしてたんだよね〜」
「生徒会や副会長に迷惑かけないように、会長自ら危険なブツを一人で抱え込もうとしてたってワケ。健気でしょ〜?」
……それってつまり、魔法の存在はリサ(一般人)には一切伏せつつ「アイラが独断で動いて現場を押さえてた」って形にしてるってこと……?
セナはリサから見えない角度で、アイラに向かって「話を合わせろ」とウインクを投げてくる。
うぐ……ここは合わせるしかないか。
私はセナの意図……つまり、魔法を盾にした無言の脅迫と、共犯関係への引き摺り込み……を瞬時に理解し、内心で激しい胃痛を覚えながらもポーカーフェイスを張り直す。
鞄の奥にしまい込んだ『無力化済みのエナドリ缶』をあえて少しだけ見せる。
「……リサに余計な危険を冒させたくなかったのは事実だ」
とセナの嘘に乗っかる。
「西棟の捜索を一人で志願したのも、この場所にあるかもしれない危険物を生徒会役員たちが見つける前に安全に確保するためだったんだ」
……生徒会長としての責任感、そう装って論理を伝える。
頼む……納得してくれ……
リサは眉をひそめる。そりゃ私の無謀とも取れる単独行動にショックは受けるだろうし……
「……アイラ。あなたの責任感は理解できますが、危険な薬品の回収を一人で行うなんて生徒会長として軽率すぎます」
ごもっともだ、言い返す言葉もない。
しかし、同時にセナへ再び冷たい視線を向け直す。
「そして、あなた。運び屋本人であるあなたが、なぜアイラにその情報を流し、ここで待ち合わせていたのか……ここは暗すぎますね。生徒会室へ来てもらいましょうか」
夕暮れが深まり、赤黒い影が落ちる生徒会室。
リサは入室するなり内側から鍵をかける。そしてセナを着席させ、逃げ場を完全に塞ぐ。これは本気モードだ。
リサはデスクに腕を組み、冷え切った声で淡々とセナの違反事項を読み上げる。
「校則第8条違反、認可外薬品の学内持ち込み、販売。生徒会活動への妨害及び立入禁止区域への不法侵入、以上で間違いありませんね」
「明日の朝一番で生徒指導部と校長へ報告します。停学、あるいは退学処分は免れないでしょうね」
その宣告を受けてもセナは怯えるどころか背もたれに深く寄りかかり、ニヤニヤと笑う。
「アタシを首尾よく退学にしてさ、それで全部解決すんの? 副会長」
その言葉にリサが眉をひそめる。
「……何が言いたいのですか、はっきり言ってください」
「フィオナが捕まった後、アタシにあの特製在庫を押し付けてきた『本物の元締め』がいるんだよね〜」
「アタシを今ここで警察や先生に突き出したら、トカゲの尻尾切りでそいつら逃げちゃうよ? まだ学内の別の奴にルート作り直すだけだし」
「………」
リサが沈黙した。こいつ……何を考えてる?
「つまり何が言いたいかというと、アタシの処分を生徒会預かりにしてくれるなら、元締めを釣るためのエサになってやるし、取引現場の情報もぜーんぶ吐くよ?」
リサはその言葉に激しく眉を寄せる。
「法と規律」を重んじるリサにとって、違反者との取引など言語道断だ。それは私も十分わかってる。だが「学内の安全を根本から守るためには元締めを確実に根絶やしにする必要がある」という強い正義感の間で葛藤してるのだろう。
リサは判断材料を求めるように私を見る。
「……生徒会長として、あなたはどう思う?」
胃痛をこらえながら
「……元締めを野放しにする方が学内への被害が大きい。証拠を完全に固めて元締めごと叩くためなら、一時的に利用するのも手かもしれない……かな」
リサは深く溜息をつき、眼鏡を外して眉間を揉む。
「わかりました。ただし条件があります。元締めを押さえるまでの間、あなたの身柄と行動はすべて生徒会――特にアイラに監視させます」
リサは「元締めの取引予定をまとめるための正式な記録用紙を取ってくる」と言い、資料棚のある隣の役員準備室へ向かい、一時的に部屋を出る。
室内には私とセナの2人だけが残され、一気に緊迫した空気に変わる。
リサが隣室へ消え、扉がしまった瞬間、自分でも「優等生の仮面」が剥がれ落ちたのを自覚した。
「……良い度胸してるじゃん、セナ?さっきの配管スペースのデマカセといい今の取引といい、よくも私を共犯に引き摺り込んでくれたね?」
セナの目の前に詰め寄り、机に手をついて低い声で睨みつける。
「おっ、素が出た〜!生徒会長サマそういう顔もできるんだ〜」
セナは怯えるどころか楽しそうに口角を釣り上げる。こいつ……
「なんでリサに『魔法』のことを言わなかった?あれをバラせば私を完全に脅して手駒にできたじゃないか」
「あんなの普通の人間に言ったって『頭おかしくなった』で終わりだし、リサ副会長みたいな堅物に話したら話がややこしくなりすぎるじゃん」
そう、セナ視点リサは『一般人』なのだ。生徒会丸ごと魔法使い集団だとは思ってもみないだろう。
……はぁ、だから話がややこしくなってたのか……
「何よりさ、あの配管スペースで無詠唱でサクッと暴走を止めたの見て確信したの。アイラちゃんは『本物のバケモノ級』だって。そんな激ヤバ戦力、敵に回すより味方に引き込んだ方がアタシの生存率上がるに決まってんじゃん?」
私のことを化け物扱いするが、セナの方もなかなかの化け物だ。異常に鼻が効き、生き残るための損得勘定がずば抜けてる。
私は「はぁ……」とひとつため息をつく。
「それで、その『元締め』ってのは何者なんだ。まさか普通の不良やチンピラじゃないだろ」
と本題を切り出す。
「フィオナにあの原料(魔力活性物質)を卸してた連中、どう見ても高校生のツテじゃない。大人の裏組織……それも、アイラちゃんみたいな『あっち側(魔法使い・裏の理)』の連中だよ」
「運び屋をやってたアタシだから分かる。あのエナドリはただの小遣い稼ぎの密売じゃなくて、学内の生徒を使って『未認可の魔力薬物の人体実験』をしてたんだ」
背筋に冷たいものが走る。最初からこれはただの校内風紀の乱れではなく、裏の魔法社会が一般学園を侵食し始めてたのだ。
セナはニヤリと笑い、指を立てる。
「アタシは退学を免れて身の安全を確保したい」
「アイラちゃんは平穏な学校生活を守るために、その元締めを誰にも知られずに『裏で隠密処理』したい」
リサ副会長は正義感で元締めを警察に突き出したい」
「ね? 目的は違っても、やることは『元締めを叩く』で一致してるでしょ?」
とセナが持ちかけ、私は反論できずに思わず舌打ちした。
ちょうどその後だった、リサが書類を手に戻り、生徒会室の机に広げた。
リサは冷静なトーンで話し始める。
「今週末、取引現場を押さえます。セナを囮として接触させ、生徒会が外側から証拠を押さえて現行犯で警察へ突き出します」
淡々と方針を提示していく。
「へ〜い了解〜!生徒会長サマの監視なら大人しく従いま〜す」
セナは調子良く手をあげる。
椅子の上で足を組み、爪をいじりながらニヤニヤと笑っている。
リサが見てない隙に私へ向けて「うまく話がついたじゃん? 現場ではよろしくね、生徒会長サマ」と言わんばかりのウインクとサムズアップを投げてくる。こ、こいつ……
セナが呑気にスマホをいじっている隙に、アイラとリサは無言で視線を交わす。
魔法で互いにメッセージを送る。
アイラ:(このエナドリの魔力濃度、元締めはただの不良じゃない。裏の危険組織だ)
リサ:(はい。現場には相応の戦闘・拘束術式を展開する覚悟で臨みます)
アイラ&リサ:(この何も知らない調子のいい一般人生徒が現場でミンチにされないよう、私たち2人の魔法で裏から徹底的に保護しつつ、元締めを瞬殺・制圧する)
これらを一瞬のうちに行い、リサはトントンと書類を整え、冷ややかな視線でセナを射抜く。
「いいこと、セナ。不審な動きを少しでも見せたら、即座に生徒指導部へ突き出しますからね」
はいは〜い、副会長サマには絶対逆らいませーん(笑)」
と適当に敬礼。
「決行は今週金曜、放課後。各自、万全の準備を」
本当にこいつらどっかでくっつかないんですかね?
百合小説書いてる気分になってきて草生えました。
スピンオフかな……




