第二話:優等生の防衛線と、不穏な残り香
第2話です!
一難去ってまた一難。
チャラい共犯者のペースに巻き込まれたアイラが、生徒会室で最大の危機を迎えます。
どうぞよろしくお願いします!
キーンコーンカーンコーン
六限終了のチャイムが鳴る。
荷物をまとめ、さて……今日も生徒会室に向かわねば。
「さようなら、アイラさん」
「ええ、さようなら、また明日」
ニッコリ笑顔を浮かべて同級生たちに挨拶をする。
……先日の一件で忘れられてるだろうが、私は一応、一応主席の優等生の生徒会長なのだ。
ただ一点、高い魔力適性があるという点を隠して……
というところで気になってるのが、先日のチャラい女子生徒のことだ。おそらくあの子も記憶処理はされなかった「例外」だろう。魔法使いと一般人の間って言ってたけど一体どういうことなのだろう……
考えても仕方ない、と切り替えて生徒会室に向かうことにした。
「うん、ちゃんと合ってますね。予算案はこれで大丈夫です」
リサに書類チェックをしてもらい、一安心。リサの目は鋭いからどんなミスでも誤魔化せない。
そういう私も几帳面でミスはしないよう心がけてるので、リサとの仕事の相性は抜群なのだ。
(真面目にやればアイラはちゃんとできる信頼できる人なんですよね……この前のようなイレギュラーを除けば)
そうリサが思ってることは私は露知らず。
「アイラ、別棟の進路指導室へこの書類を届けてくれますか?私が行くよりアイラが行った方が生徒会の面子もいいですし」
「一言余計だよ、別にリサが行ったっていいじゃない」
「私は別の仕事があるので」
「はいはい、行ってきますよ〜っと」
生徒会室に残ったリサ。
別の仕事とは、先日のエナドリ事件のことだった。
あれを作っていた元凶は叩いたが、輸送ルートは確立されてなかった。
フィオナに直接聞いたのだが、自分は作ってるだけで輸送の人とは顔を合わせてないと言っていた。
こういうのは輸送してる人間が一番タチが悪い。
机の上に置かれた例のエナドリの缶を長め、未だ掴めない輸送人の尻尾の行く末を、リサは他のメンバーから隠れて未だに調査してるのであった。
本館から西棟へ続く薄暗い渡り廊下。
地味に遠いんだよな〜と思いながら歩いてると、ふと異変に気づく。
(……ちょっとした空間の歪み……低級の魔力異常?)
でも発生源はわからない。仕方ない、資料を届けてから寄り道するとしよう。
そう思いながら階段を降りようとすると、思わぬ人物に遭遇する。
「やほ〜生徒会長さんっ」
先日のチャラ女性生徒_______セナだ。
校則違反のスカートの丈に緩めたネクタイ。金髪の髪を緩く巻いた彼女は、先日ぶりに姿を見せた。
「待ち伏せ?今度は何?」
「いやさ〜生徒会長サマ……う〜んアイラちゃん!アイラちゃんさ〜お願い事があって」
と、急に距離を詰めてくる。パーソナルスペースって知らない?
「今忙しいんですけど……というか近い!」
書類の束でぐいっと距離を取り、改めて話を聞く。
「ごめんごめん〜いや聞いてよ、ちょっと困っててさ」
「何?」
そう聞くとセナは踊り場にある配電盤を指差す。
「そこ、配電盤の隙間で魔力のもやがいるんだよね〜これほっとくとまずいやつでしょ?でもアタシじゃどうにもできなくって〜」
そう言われて見てみると確かに低級魔力のもやが渦を巻いていた。さっきの違和感はここだったのか。
「ね〜お願い!これなんとかして!」
「いやでも今急いでて……」
というよりこの子の前で魔力行使をしたくないし余計なことに巻き込まれたくない。これだってセナがいなければ隠密に処理したのに……
「放置したら大好きな平穏な日常が壊れちゃうかもよ?」
「ッ……!!」
図星だ。図星すぎる図星だ。
「はぁ……仕方ない、誰にも言わないでよね」
「言う訳ないじゃん〜!」
一般生徒が来ない死角に移動する。
資料の影で指先を立て、無詠唱かつ陣の展開も無しに極小、高精度の対消滅術式を打ち込む。
「はい、これでいいでしょ」
「すっっっっげえ〜!!!本当に優等生なんだ!」
クソデカボイスやめなさい!誰かに気づかれたらどうするの!
そう思いながらやれやれとその場を離れようとする。
「ね〜アイラちゃんならもっとすごいことできるんでしょ?ねえねえ」
「あ〜もううるさい!アンタ一応一般人でしょ!これ以上介入してこないの!」
そう言うとセナは衝撃の事実を告げてくる。
「え〜?アタシが実はこの前のエナドリ事件の関係者だとしても?」
「は?」
危うく資料を取り落とすところだった。なんだって?
「あれは大元は叩いたよ、それに情報提供者だってアンタでしょ?」
「う〜ん、あーんな派手なこと起こしてこれ以上関わるのなんてやめよと思ってアイラちゃんに教えてあげたんだよね」
派手なこと……綱渡りのことか。
「まぁアタシの収入は減っちゃったけど、余計なことには巻き込まれたくないし〜?事件も解決結果オーライ!でもあの事件を軽々解決しちゃうアイラちゃんの魔法能力は興味が湧くなあ……」
まるでモルモットを見るような目で見られるものだから流石に耐えかねた。
「もうわかったわかった!あの事件は情報提供感謝いたします!今後一切関わってこないで!」
そういって無理やり押し切って進路指導室へと向かった。
去り際に「ちぇっ、つまんないの〜」と言われたが聞かなかったことにする。
無事進路指導室に資料を届け終え、生徒会室へ戻ってきた。
ドアを開けると西日が長く伸びた室内にペンを走らせるカリカリという硬い音だけが響いている。
「ただいま、リサ」
リサの手がピタリと止まる。デスクに置かれた時計の針は、私が出て行ってからすでに20分経過していることを示している。
リサはすぐには返事をせず、ゆっくりと顔を上げてメガネの奥の鋭い目で私の足元から頭の先まで見つめる。
いつもなら「お疲れ様」と穏やかな笑みを浮かべるはずのリサの表情筋が冷ややかに固定されている。
私は平静を装いながら自分の席へ戻ろうとするが、すれ違いざまリサがかすかに鼻先を動かす。
私が書類の整理を再開しようと手を伸ばした瞬間、リサが静かにペンをデスクへ置く。
「……アイラ」
感情の読めない硬質な声が室内の空気を凍りつかせる。
「進路指導室へ行って戻るだけにしては、ずいぶん時間がかかったのね?」
私が「先生に少し質問をされまして」と返そうとするのを遮るように、リサが机の上の『違法エナドリの空き缶』へ指先を滑らせながら、冷たい視線をアイラの瞳にまっすぐ突き刺す。
「その言い訳を聞く前に……どうしてあなたの制服から、私が今追っている『運び屋』と同じ匂いがするのか、論理的に説明してもらえますか?」
短くなってしまった(いや1話が長かった)
もうちょっと膨らませられたかな…と思いつつもとりあえず2話はこのくらいにしとこうと思いました。
うっかりすると百合になるんだよなこいつら……




