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劇場版 ブルーストーム 火の翼の台頭  作者: Fawole Oluwaseyi


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第36章

「あははっ! みんな、すごかったよ!」イズミは瓦礫の山から軽やかな足取りで離れると、二人のもとへ小走りで駆け寄った。


アストが彼女の頭上を飛び、ボルトはギズモを頭に乗せたまま、彼女の傍らに忠実に寄り添って歩いていた。


リクヤは荒い息をつき続けていたが、戦いの興奮が冷めるにつれ、ようやく肩の力が抜け始めていた。


「やったな……アヤネ」彼は息を漏らし、背を向けたままの彼女の方へ、疲れの滲む足取りで数歩歩み寄った。


「うん……」アヤネの声は小さかった。「やったね……」


その瞬間、彼女の体がふらりと揺れた。


リクヤは目を見開いた。「アヤネ!」


彼はとっさに身を乗り出し、弓を取り落としながら、地面に倒れ込む寸前の彼女を支え止めた。彼は彼女をそっと抱きかかえ、その背中を自分の胸に預けさせた。


「アヤネ!?」彼は彼女を軽く揺さぶりながら、震える声で叫んだ。「アヤネ! 目を覚ましてくれ!」


イズミも急いで駆け寄ったが、意識を失った少女の姿を目にすると、その表情は安堵から一瞬にして不安へと変わった。


「アヤネ!」彼女は叫んだ。「アヤネ、大丈夫なの!?」


ボルトもすぐに心配そうに鳴きながら彼らの傍らに座り込み、鼻先でアヤネの脚を突いた。ギズモはボルトの頭から飛び降りるとアヤネのもとへ急ぎ、その小さな手で彼女の頬を優しく叩いた。


イズミは両手を組み合わせ、目元に涙を浮かべた。


「アヤネ! お願いだから、死なないで!」彼女は叫んだ。


「アヤネ……」リクヤは呟いた。


腕の中の少女に意識を集中させるにつれ、彼の呼吸は落ち着いていった。彼は左手を上げ、彼女の右の頬を優しく包み込むと、親指で閉じたまぶたの下をそっと撫でた。


その瞬間、彼は自分の疲れなど忘れていた。他のことは何も目に入らなかった。ただ、彼女が無事であることを確かめたかったのだ。


やがて、アヤネのまぶたが小さく震えた。


リクヤは動きを止めた。


ゆっくりと彼女の目が開いた。視界はまだ定まらない様子で、彼女は自分を取り囲む心配そうな顔ぶれを見つめ、やがてその視線をリクヤに向けた。 「みんな……陸矢……」彼女は力なく呟いた。


リクヤの顔に、すぐに安堵の笑みが広がった。「アヤネ!」


「無事だったんだね~! よかったぁ~!」イズミは心底ほっとした様子で、涙を流しながら声を上げた。


「イズミも無事でよかったよ」アヤネが微笑むと、イズミは涙ぐみながらも笑みをこぼした。


ギズモは嬉しそうに鳴き声を上げると、アヤネが本当に無事か確かめるように優しく彼女の頬をポンポンと叩き、すぐにボルトの頭の上へと駆け戻っていった。


アヤネは微笑みながら、そばにいる三匹の動物たちに視線を向けた。


「みんなも無事でよかった。本当によく頑張ったね」彼女はくすりと笑った。


ボルトが優しく吠え、ギズモがそれに応えて鳴き声を上げると、アストは誇らしげに翼を広げ、元気よく鳴き声を響かせた。


「アヤネ、さっきは本当にカッコよかったよ~!」イズミは身を乗り出し、身振り手振りを交えて興奮気味に言った。「まず、あの岩の下から自力で抜け出しただけじゃなくて、腕をひねって元の位置に戻しちゃったでしょ! 最初はちょっと不気味だと思ったけど、リクヤが言ってた通り、本当に体が柔らかいんだね~!」


「えっと……」リクヤは気まずそうに苦笑いした。


「それから」イズミはさらに興奮を募らせながら続けた。「……あの『黒月(クロツキ)』の戦士たちを、ものすごい身のこなしと正確さで相手にしてたよね! 空高く吹き飛ばしちゃったりして~! あれはマジで、今まで見た中で一番カッコいい光景の一つだったよ~!」


アヤネは小さく笑った。「ありがとう……」


リクヤも彼女と同じように微笑みながら、彼女が上体を起こすのを慎重に手伝い、やがて彼女の隣に正座するようにして膝をついた。


イズミはすぐに彼の方へ向き直り、興奮で茶色い瞳を輝かせた。


「リクヤだってそうだよ~! 本当にすごかった! あの弓の扱い、信じられないくらい見事だったね~!」


リクヤは彼女に視線を向け、くすりと笑った。「イズミのおかげだよ」


アヤネは同意するように頷いた。「うん。あなたがいなかったら、あの武器は手に入らなかったわ」


イズミは後頭部をさすりながら、くすりと笑った。


「まあ、私だけの力じゃないけどね」彼女は三匹の動物の方を向いた。「あの武器を戦場まで運ぶのを手伝ってくれたのは彼らだから。だから、彼らのおかげでもあるのよ」


アスト、ボルト、ギズモが揃って頷いた。


イズミは視線をリクヤに戻し、その表情を和らげた。


「それに、リクヤにも感謝しなきゃね。彼があなたの能力について詳しく教えてくれたの。彼のアドバイスがなかったら、あなたの柔軟性や身軽さを活かしたあの鎖鎌(くさりがま)を設計することはできなかったわ」


アヤネのターコイズブルーの瞳が見開かれた。彼女はゆっくりと、隣にいる少年のほうを向いた。


リクヤは視線を地面に落としたまま、彼女と目を合わせないようにしていた。拳を太ももの上で固く握りしめ、頬から耳にかけて赤く染まっていく。


「本当に……」アヤネは静かに言った。「私の能力に合わせて、あの鎖鎌を作ってくれたの?」


リクヤは息を呑んだ。太ももに置いた指にさらに力を込め、やがて彼は頷いた。


「う、うん」彼はゆっくりと顔を上げ、彼女と視線を合わせた。


一瞬、彼は彼女のターコイズブルーの瞳の美しさに心を奪われた。


「君の柔軟性を活かせるものが……いいと思ったんだ」彼は緊張しながら唾を飲み込んだ。「君だけの、特別な武器をね」


アヤネの胸が、どきりと高鳴った。「どうして?」


リクヤの頬はさらに赤く染まった。


心にずっと抱えていた想いを口にする勇気を振り絞り、彼は再び拳を強く握りしめた。


「だって、アヤネはすごいから」彼はゆっくりと息を吸い込んだ。「ずっと……出会った頃から、君に憧れていたんだ。君の情熱も、強さも……そして、その意志の強さも」


彼の声が和らいだ。「そのすべてが、俺をもっと強くありたいと思わせるんだ」。彼の視線が再び自分の太ももに落ちる。「それに、黒豹と小夜鳴(さよなき)の対決で君の戦いぶりを見てから、その思いはさらに強くなった……」


彼の指先がわずかに震えた。「中野と戦う君の姿……すごく心を動かされたよ。その時気づいたんだ。君に対して抱いていたこの感情は……単なる憧れなんかじゃないって」


ゆっくりと、陸也は再び顔を上げた。今度は、その瞳に迷いはなかった。


「本当は……」彼は息を呑み込んだ。「君のことが好きなんだ、彩音」


彩音は目を見開き、その頬をほんのりと赤く染めた。


「それも、日ごとに強くなってる」陸也は緊張した様子で息を吐いた。「毎日、君への想いが増していく。時には、好きすぎてどうにかなりそうだと思うくらいに」


彼の声が震えた。「それが怖いんだ。だって……だって俺は――」


彼が言葉を言い終えるか終えないかのうちに、彩音が身を乗り出した。


彼女の手が、優しく彼の頬を包み込む。


陸也は目を見開いた。


彩音は目を閉じ、激しく高鳴る鼓動を感じながら、そっと彼に唇を重ねた。


その瞬間、周囲のすべてが消え去ったかのように思えた。


陸也は驚きのあまり立ち尽くし、今起きたことを理解するにつれて、顔を真っ赤に染めていった。


やがて、彼はゆっくりと目を閉じた。彼女の触れる感触に身を委ねるように寄り添い、優しく口づけを返した。


イズミは即座に顔を真っ赤にして両手で頬を覆い、ギズモは小さく「キュッ、キュッ」と鳴き声を立てた。


ボルトは興奮して舌を出し、尻尾を激しく振っていたが、アストは親密な瞬間を目撃するのが恥ずかしいのか、片方の翼で顔を覆っていた。


余韻を残す数秒の後、アヤネとリクヤはゆっくりと身を離し、互いを見つめ合いながら目を開けた。二人の頬は共に紅潮していた。


「私も好きだよ、リクヤ」アヤネは茶目っ気のある笑みを浮かべ、彼の頬に手を添えたまま言った。「仲良くできないと胸が痛くなるくらい、あなたのことが好きなの」


彼女の遊び心のある笑みが、ふわりと柔らかなものに変わった。「ケンカするのは嫌……だって、あなたと一緒に笑い合って、楽しい時間を過ごしたいだけなんだから」


リクヤは信じられないといった様子で口を半開きにし、驚きに眉を上げながら、震える息を漏らした。


「ど、どうして?」


アヤネは優しく彼の顔を包み込んだ。「だってあなたは……」彼女は言葉を切り、ターコイズブルーの瞳を優しく細めた。「私が今まで出会った中で、一番面白くて……一番誠実な人だから」


彼女の指が優しく彼の髪をすくい、目にかかっていた一房の髪をどけると、再び彼の頬にそっと触れた。


「それにあなたは、私がずっと望んでいた通りの人だったの。小さい頃、私の『柔軟すぎる体』のせいでみんなが背を向けていた時、ずっと願っていたような人」


彼女の声が優しく響く。「揺るぎない優しさ……そして賢さ……みんなが私のことを『変わり者』だと思っていた時に、現れて私の能力に興味を持ってくれたのは、あなただった」


彼女の唇に、小さな笑みが浮かんだ。「私と同じことに興味を持ってくれて……私のことを理解してくれた」


彼女の頬がさらに赤く染まる。「そして、いつの間にか……私はあなたに恋をしていたの」


リクヤの心が高鳴った。彼女の言葉が胸に深く染み入り、抑えきれないほどの幸福感に圧倒され、瞳に涙が浮かんだ。


何も言わず、彼は再び彼女の方へと身を寄せた。片腕で彼女を抱き寄せながら、もう片方の手で優しく頬を包み込み、再び口づけを交わした。彩音はすぐにそのキスに応え、そっと彼に手を添えて胸元へと滑らせた。


かけがえのない数秒間、二人はただ互いをしっかりと抱きしめ合っていた。


やがて二人は身を離し、額が触れ合うほどの距離で、互いに頬をほんのりと紅潮させながら優しく微笑み合った。


イズミは鼻をすすり、頬を伝い落ちた涙を拭った。


「ついに、だね」彼女は温かな笑みを浮かべた。「本当に嬉しいよ。ようやくって感じだね」


アヤネとリクヤも、互いに抱きしめ合ったまま笑みをこぼした。


その瞬間、広間が激しく揺れた。石の天井から岩の塊が崩れ落ち、地面に叩きつけられると同時に、あたり一面に土煙が舞い上がった。


ボルトは即座に立ち上がり、激しく吠え立てた。その頭上に乗っていたギズモは、ボルトの毛皮に必死にしがみつきながら、不安げな鳴き声を上げていた。


「何事!?」イズミが声を上げた。


アヤネとリクヤも素早く立ち上がり、険しい表情で武器を構えた。


アヤネは鎖鎌の金属の鎖をしっかりと握りしめ、リクヤは和弓を掲げ、すでに次の矢に指をかけていた。


その時、雷鳴のような咆哮が広間に響き渡った。白い装束をまとった戦士たちが次々と入り口からなだれ込み、彼らに向かって突進してきた。


「クロツキだ!」イズミが息を呑んだ。


「下がってろ、イズミ!」リクヤが命じた。


彼は素早く矢筒から二本の矢を抜き取り、弓の弦につがえた。


鋭く弦を引き絞り――


ヒュッ!


二本の矢が、一筋の光のように放たれた。


同じ瞬間、アヤネが前方へと駆け出した。熟練の技で鎖鎌を振り回し、鎖が空を切る。分銅のついた先端が石の床を打ち、耳をつんざくような金属音が響いた。


「ああっ!」衝撃で岩や破片が広間に飛び散る中、アヤネは敵の群れへと突っ込んでいった。


彼女は鎖を振るって一人の戦士に絡みつかせると、その体勢を崩して引き倒した。その間も、脚と空いた片手は淀みなく連動して動く。迫りくる刃をすり抜け、攻撃を身を屈めてかわし、素早い蹴りと的確な打撃で反撃する。彼女は流れるような、まるで苦もなくこなしているかのような正確さで、戦士たちの間を縫うように立ち回った。


リクヤもまた、次々と繰り出される刃の間を素早く動き回り、乱戦に加わった。彼は熟練の足さばきで攻撃をかわしつつ、弓の木枠を使って戦士たちの体勢を崩し、間合いを取っては次の標的へと矢を放った。


喧騒の頭上では、アストが広間を舞い、やがて急降下して戦場へと突っ込んだ。


「カァッ!」その鳥は急降下し、油断していたクロツキの戦士に激突して、見事にその体勢を崩させた。


その近くでは、イズミが割れた大きな木片を振り回し、別の戦士の顔面を打ち据えた。直後、真っ直ぐに突進してきた二人目の攻撃者の攻撃を身を屈めてかわす。


「ああっ!」


その戦士が再び飛びかかってきた。だが、彼女に届くより早く、ボルトが猛々しい唸り声を上げて躍りかかり、彼を横へと弾き飛ばした。


「グルルッ!」ボルトはイズミの前にしっかりと陣取り、彼女と残る敵との間に立ちはだかって守るような姿勢を見せた。


「いい子よ、ボルト!」イズミが叫んだ。


一方、ギズモは駆け抜けていく別のクロツキの戦士を見つけた。


悪戯っぽく鳴き声を上げると、そいつは戦士のマントの下へと一直線に潜り込んだ。


「ああっ?! マントの中に何かが入ったぞ!」戦士は悲鳴を上げ、必死になって服を掴んだ。「どけろ! どけろ!」


ギズモは素早く這い上がり、戦士の顔の近くに姿を現すと、その目や鼻を激しく引っ掻いた。


「ぐわっ!」戦士はよろめきながら後ずさりし、腕を振り回した末に自分の足に躓き、仰向けに倒れ込んだ。


ギズモは素早く飛び退いて地面に無事着地すると、間髪入れずに別のクロツキの戦士に向かって駆け出した。


「ひっ!」


そいつはまた別のマントの下へと消えた。


「ま、待て! 何だ、これは……?!」


戦士の驚愕の叫びは、やがて必死に暴れる音にかき消されていった。ギズモがクロツキの隊列を大混乱に陥れ始めたからだ。


そのネズミはついにクロツキの隊列を抜け出し、イズミとボルトの元へと駆け戻ってきた。床の上で憤ったように鳴き声を上げながら、その小さな拳を固く握りしめていた。和泉は舌打ちをし、白い外套をまとった戦士たちが次々と増えていく様子を視線で追った。


「ちっ! 多すぎるわね!」


アヤネとリクヤが素早く彼女の傍らに集まり、三人は迫りくる大軍を睨み据えた。


「囲まれた!」リクヤが鋭い声で言い、和弓に矢をつがえる。


アヤネは眉間に皺を寄せ、食いしばった顎に力を込めながら、鎖鎌の鎖をしっかりと握りしめた。


その時、戦場を切り裂くような素早い動きが走った。


敵陣の最後尾にいた数人の「黒月(クロツキ)」の戦士たちが突如として吹き飛ばされ、互いに激突しながら倒れ込んでいく。三つの人影が敵の隊列を強引に突破してきたのだ。


「ヒャッホー!」ヒカル、カズキ、ミツルの三人が雄叫びを上げて突撃する。武器を煌めかせながら「黒月」の陣形に飛び込んだ彼ら――ヒカルはトンファーを振るい、カズキは鎖分銅を操り、ミツルは二振りの小太刀で混戦を切り裂いていく。


「みんな!」リクヤが声を上げ、その表情に安堵の色が浮かぶ。


アヤネとイズミも、仲間の姿を見て嬉しげに笑みを交わした。


「アヤネ! イズミ! リクヤ!」ヒカルが笑みを浮かべて叫びながら両手のトンファーを振るい、立て続けに二人の「黒月」の戦士をなぎ倒す。


「無事だったか!」カズキが声を上げ、金属製の鎖を敵の戦士の足に巻きつけて力任せに引き寄せた。


「ぐあっ!」白い装束をまとった戦士はバランスを崩し、仰向けに地面へ叩きつけられた。


その一方で――


ヒュッ!


ミツルは頭上を切り裂く刃を身を屈めてかわすと、踵を軸に素早く回転し、攻撃者の顔面に鋭い蹴りを叩き込んだ。相手は横へとよろめく。


彼は即座に二振りの小太刀を交差させて続く二撃を防ぐと、力強い蹴りを敵の胸板に浴びせ、後方へと押し返した。


その瞬間、別の「黒月」の戦士が横から彼に襲いかかった。


ミツルの目が見開かれた。刃が彼に届くその直前――


ヒュッ!


一本の矢が飛来して攻撃を阻み、戦士の武器を弾き飛ばした。


その直後、強烈な蹴りが襲撃者の脇腹に叩き込まれ、相手はよろめきながら後退した。


ミツルが振り返ると、そこには弓を構えたままの陸也(リクヤ)が立っていた。陸也は自信に満ちた笑みを浮かべ、小さく頷いてみせた。


ミツルは不意を突かれて一瞬きょとんとしたが、やがて表情を和らげ、笑みを返した。


彼もまた頷き返す。


二人は言葉を交わすことなく戦場へと向き直り、並んで戦い続けた。


アヤネは「黒月(クロツキ)」の兵たちの間を軽やかに舞うように動き回り、金属製の鎖を大きく弧を描くように振り回しながら、敵の剣や槍の穂先をすり抜けていった。


彼女は息を吐き出すと、鎖鎌の分銅(ふんぶんどう)を前方へと振り放った。


ドスッ!


分銅が数人の「黒月」の戦士たちに激突し、彼らを後方へと吹き飛ばした。


「いいぞ、アヤネ!」カズキが声を上げ、別の戦士を弾き飛ばしながら彼女の方へ歩み寄った。「俺たちの武器、お揃いってことだな! まあ、似たようなもんって意味でだけど!」


「そうね!」アヤネは不敵な笑みを浮かべた。


彼女は低い姿勢で転がり込むように動き、鎖を別の戦士の足首に絡め取ると、鋭く引き絞った。


バランスを崩した「黒月」の戦士は、仰向けに地面へと叩きつけられた。


「でも、私のは刃が付いてるけどね!」彼女はそう言って、にやりと笑った。


「へっ!」カズキは短く笑った。


彼は身を反らして剣の一撃をかわすと、鋭く脚を跳ね上げた。その踵(かかと)が敵の顎(あご)を捉え、相手の顔を横向きに弾き飛ばす。


「ぐあっ!」さらに二人の「黒月(くろつき)」の戦士が、不意にイズミへと突進してきた。


彼女は身を翻し、大きな木の塊を構えて防御の姿勢をとる。


「イズミ、危ない!」ヒカルが叫んだ。


だが、二人の戦士が彼女に届くよりも早く――


ドォン!


二人は蹴り飛ばされ、仲間の数人に激突して転がった。


見覚えのある二人の姿が現れ、イズミは息を呑んだ。「サヤカ!シズカ!」


サヤカは自信ありげな笑みを浮かべた。「援軍の到着よ!」


彼女は突進し、「黒月」の隊列を切り裂くように進んだ。次々と戦士たちが足元をすくわれて倒れ、その周囲の石床に叩きつけられていく。


一方、シズカは薙刀(なぎなた)の刃を石床に突き立て、それを支点にした。


力強い一振りで空中に身を躍らせると、彼女は空中で一回転し、両足で周囲の戦士たちの顔面を蹴り抜いた。


戦士たちは次々と意識を失い、崩れ落ちていく。


「無事でよかった!」ヒカルが安堵の笑みを浮かべると、サヤカは彼の隣に着地し、茶目っ気たっぷりに笑いかけた。


すぐそばでは、カズキの相手が彼の足元に崩れ落ち、同時にシズカも彼の隣に降り立った。


二人は前方に視線を向けた。さらなる「黒月」の戦士たちが、すでにこちらへ突進してきていた。


シズカの表情が険しくなる。「でも、相手はもっと大勢よ」


迫りくる戦士たちを前に、彼女は薙刀を握りしめた。


その時、頭上や周囲から、激しい足音が響き渡った。


月守(つきもり)の戦士たちが突如として天井から舞い降り、周囲の小部屋からも雪崩れ込むようにして、あらゆる方向から戦場へと押し寄せた。


その光景を目にした一行の顔には、安堵の笑みと自信に満ちた笑みが浮かんだ。


「よしっ!」ヒカルが拳を突き上げ、歓声を上げた。


月守の戦士たちの群れの中から、見覚えのある姿が飛び出してきた。


メイだ。


彼女はすでに鉄扇を手にし、優雅な身のこなしで黒月(くろつき)の隊列をすり抜けていく。その動きは正確かつ流麗で、敵の攻撃を軽やかにかわしながら、次々と戦士たちを打ち倒していった。


「メイ!」ミツルが声を上げた。黒月の戦士を一人弾き飛ばすと、彼女はついに彼の目の前で足を止めた。


メイが彼に視線を走らせると、その表情はすぐに和らいだ。


「ずいぶんボロボロね」彼女はくすりと笑った。


ミツルも同じように笑みを返した。だが彼が言葉を返すより早く、黒月の戦士の一人が背後からメイに襲いかかった。


振り返りもせず、メイは片脚を振り上げ、その男の顔面を正確に蹴り飛ばした。男は床に大きく吹き飛ばされた。


彼女はまるで何事もなかったかのように、穏やかな笑みを浮かべたままだった。


「いやはや、今の動きは我ながら神業だったわ」彼女は片手を上げ、何気ない仕草で頭の横をさすった。


ミツルはその動きを目で追った。そして、彼の表情が一変した。


彼女の手首に視線が止まり、目が見開かれる。そこには傷があった。


「なっ……メイ、怪我してるじゃないか!」ミツルは叫び、すぐに彼女の手を取って手首を確認した。


手首の側面を、細い血の筋が伝い落ちていた。


メイは気まずそうに笑った。「ミツル、大丈夫よ。本当に」


ミツルはきっぱりと首を横に振り、鋭く視線を彼女に向けた。「だめだ! お前が怪我をするなんて、あってはならないことだ!」


彼女の手首を掴む指先がわずかに震え、彼は顔を近づけながら顎に力を込めた。「誰にやられたんだ? 前にいたあの『黒月(くろつき)』の軽薄な男か?」


レンマの名を思い出し、彼の声が低くなる。かつて清華寺(せいかじ)でメイが対峙するのを目撃した、あの黒月の戦士だ。


「えっと……」メイは言葉を濁した。


「絶対に殺してやる」空いた方の手を強く握りしめ、ミツルの表情に暗い影が差す。


彼は素早く懐から小さな布を取り出すと、手際よく細長く裂き、メイの負傷した手首に丁寧に巻き付けた。その手つきは驚くほど優しかった。


「お前を傷つけた報いは受けさせる……」彼は歯ぎしりするように呟いた。「その陶器のような肌に傷をつけたこともな!」


メイは瞬きをし、それから小さく笑った。こめかみには、気まずげな汗の粒が浮かんでいる。


「そこまでしなくていいのよ、ミツル」彼女は安心させるように微笑んだ。「もう私が片付けたから、心配しないで」


「本当か?」ミツルが静かに尋ねる。


メイは頷いた。「本当よ」


ミツルは安堵の息を漏らした。「無事で本当によかった」


メイは温かい笑みを浮かべ、手を伸ばして彼の髪をくしゃくしゃとかき混ぜた。


ミツルの頬がたちまち熱を帯びる。彼は恥ずかしげに、しかし愛情のこもった笑みを浮かべて彼女を見上げた。


「あのさ、二人とも?」カズキは振り下ろされた剣を身を屈めてかわすと、武器を黒月の戦士の脇腹に叩き込み、相手の体勢を崩してから二人のほうをちらりと見た。


「再会の邪魔をするのは悪いけど……」彼は顎で戦場の方を指し示した。


メイとミツルが振り返る。さらなる黒月の戦士たちが、すでにこちらへ向かって突進してきていた。


二人は即座に身構えた。


メイが鉄扇を勢いよく開くと同時に、ミツルは二振りの小太刀を握りしめた。


そして二人は、迫りくる敵陣へと突進していった。


月森(つきもり)の戦士たちが加勢したことで、戦況は明らかに彼らに有利へと傾いていた。


だが、黒月(くろつき)の兵たちは次から次へと波のように押し寄せてくる。


誰も言葉を発する間もなく、さらに二つの影が乱戦のさなかに飛び込み、立ちはだかる敵を切り伏せていった。


「アオイ!」サヤカが声を上げた。


「ライト!」ヒカルが叫んだ。


「悪い、遅れたな!」ライトは黒月の兵の列に剣を打ち込みながら答えた。その口元には不敵な笑みが浮かんでいる。「来る途中でちょっとしたトラブルがあってさ!」


アオイは何も言わなかった。ただ前へと突き進んだ。


彼女は熟練の身のこなしで黒月の兵たちの間をすり抜け、鋭い蹴りを一人に見舞うと、もう一人の胸元に拳を叩き込んだ。剣を身を屈めてかわし、身を翻して別の兵の足元を払う。敵の攻撃に足止めされることは決してなかった。


やがて、彼女は足を止めた。


薄紫色の瞳がアヤネを捉えた。茶髪の少女が最後の一撃となる蹴りを放ち、相手をよろめかせて後退させたところだった。


アヤネは姿勢を正し、振り返った。


二人の視線が交差する。


「アオイ!」彼女の顔がぱっと明るくなった。


アオイの唇が震えた。迷うことなく、彼女はアヤネのもとへと駆け寄った。


「アオイ! いやあ、会えて本当によかっ……」アヤネが言い終わるか終わらないかのうちに、アオイは彼女に腕を回し、きつく抱きしめた。


アヤネは動きを止めた。肩を震わせながら自分を強く抱きしめるアオイを前に、一瞬、驚きに目を見開いたまま立ち尽くす。


「よかった……」アオイが囁いた。アヤネを抱きしめる腕に力がこもる。「無事で本当によかった……アヤネ」


アオイはゆっくりと震える目を開いた。こらえようとしたものの、その縁には涙が溜まっていた。


「すごく怖かった……」声が震えた。「あなた、もう……」


彼女は最後まで言葉にすることができなかった。


アヤネの表情が和らぎ、彼女は優しくアオイを抱きしめ返した。


「私も会いたかったよ、アオイ」


やがて他のメンバーも集まり、その心温まる再会の光景に微笑みを浮かべた。


「リクヤ!!」突然ミツルが駆け寄ってリクヤを力いっぱい抱きしめ、涙を流しながらヒカルとカズキもその輪に加わった。


「みんな……苦しいって……」リクヤは圧迫感で顔を歪めながら、息苦しげに声を漏らした。


「アヤネ~!」サヤカも急いで駆け寄り、アオイとアヤネの間に割り込むようにして抱きついた。


やがて、三人の少女たちは楽しげに笑い声を上げた。


シズカは腕を組んでその様子を眺めながら、優しく微笑んで首を横に振り、イズミもその隣で温かな笑みを浮かべていた。


「みんなに会えて本当によかった」ようやく三人の男子の抱擁から解放されたリクヤが言った。


彼は、少し離れた場所に立っていたライトの方を向いた。


ライトは彼を横目で見やり、「無事で何よりだ」と言った。


リクヤは微笑んだ。「ライトも無事でよかったよ」


ライトは口元を少し動かすと、一歩前に出て、リクヤの額をデコピンで弾いた。


「このバカ……」


「痛っ……」リクヤは額をさすりながら顔をしかめたが、すぐにクスクスと笑い出した。


続いてライトはアヤネの方を向いた。「アヤネも無事でよかった。イズミもな」


アヤネはにっこりと笑った。「ありがと、影の少年」


「うるさいな」


一同は楽しげに笑い合った。


その傍らでは、アストが嬉しそうに鳴き、ボルトが優しく吠え、ギズモも小さな鳴き声を立てて応えていた。


「みんな無事でよかった」メイは鉄扇術の扇を手に持ったまま、一歩前に出た。


「メイ!」アヤネの瞳が輝く。


銀髪の少女は微笑み、小首をかしげた。


アオイの視線が、メイの手にある扇へと移る。「メイ……それって……?」


全員が彼女の視線を追い、その精巧な作りの武器に注目した。


メイは小さく笑った。「そう。雪(シュエ)一族の鉄扇術の扇よ」


イズミが目を丸くする。「待って……それって……まさか!?」


メイは頷いた。「ええ。かつてリアン様ご自身が振るわれた、あの武器よ」


イズミはすぐに歩み寄り、扇に施された精緻な意匠をじっと見つめた。「すごい……! 間近で見るのは初めて!」


「なにしろ、四百年以上前のものだからな」とカズキが口を挟む。


ヒカルも同意するように頷いた。


ライトは思案するように唸りながら、メイの扇を観察した。「つまり、あれが雪一族に伝わる三つ目の日本の武術武器ってわけか」


「全員が持っているわけじゃないの……」メイは静かに答えた。「……私だけよ」


「えっ?」と全員が声を揃える。


メイは彼らに視線を向け、小さく、どこか謎めいた笑みを浮かべた。「その話は、また今度ね」


誰かがそれ以上問い詰める前に、ミツルがリクヤの方を向いた。


「おい、リクヤ。これ、お前の分だ」


陸也は瞬きをした。満が彼に見覚えのある品を手渡したからだ。


陸也の口から、小さく息を呑む音が漏れた。「俺の眼鏡だ……」


彼は安堵の表情でそれを見つめた。フレームは無傷で、レンズにもひび一つ入っていなかった。


「ゲストハウスの荷物の中にあったから持ってきたんだ」と満は説明した。「もう一つの方が壊れちゃってたから、必要になるかと思って」


「ありがとう。予備を持ってきていてよかったよ」陸也は息を含んだような笑い声を漏らしながら、眼鏡をかけた。


「これがあるとやっぱり違うな」彼は眼鏡の位置を鼻筋に合わせ、視界を鮮明にした。「これでちゃんと見える……それに、ちゃんと戦える」


沙耶香は戦場の方へ視線を向けた。そこでは、戦いの余波がまだ周囲に広がっていた。


「まさか、この旅行でこんなことになるとは思わなかったわね」


静は肩をすくめた。「少なくとも、私たちが相手にしていた主力の敵は倒せたわけだし」


一樹が彼女の方を見た。「お前たちもか? 俺も自分の相手を倒したよ」


「ああ、俺もだ」と光が付け加えた。


「私も」と満が口を挟んだ。


「私たちも同じよ」と彩音も言った。


陸也は頷いた。「そうだな……」


彼の表情が思索的なものに変わった。「……あの『黒月』の連中――影尾や鉄也と戦っているとき、妙な感覚があったんだ」


全員が彼の方を向いた。


「なんていうか……自分の中で、急激に力が湧き上がるような感じがしたんだ」


静が目を見開いた。「あなたも? 私だけかと思ってた」


「俺もそうだった……」とライトが呟いた。


その隣で、葵も静かに頷いた。


彩音は思案深げな表情で、手にした鎖鎌に視線を落とした。「それに、もう一つ気づいたことがあるの……」


彼女は顔を上げ、仲間たちを見渡した。「私たち、変わったのよ。特に、目が」


陸也は頷いた。「ああ。彩音、お前の瞳には、黒目の周りにライムグリーンの輪が二重に浮かび上がっていた」


アヤネは彼の方に目を向けた。「あなたも、瞳に琥珀色の輪が浮かんでいたわ」


「アオイの目も変わっていたよ」と、ライトも彼女をちらりと見て付け加えた。「彼女の目にも、同じように輪が加わっていたんだ」


ヒカルは腕を組み、周囲の仲間たちを見回した。「つまり、俺たち全員にそれがあったってことか」


サヤカが眉をひそめた。「だから、急に力が湧き上がってきたのかな?」


「そうかもしれないね」と、メイが静かに答えた。


彼女は思案深げな様子で、仲間たちに視線を向けた。「でも、何が起きたのか、まだ分からないことだらけだわ」


イズミは集団から少し離れた場所に立ち、彼らの会話を静かに見守っていた。


片腕を腹部に当て、もう一方の肘をその腕に乗せると、彼女は考え込むように指先で顎を軽く叩いた。


瞳に浮かんだ輪……突然の力の高まり……彼女の視線は、一人ひとりの顔を順に追っていった。


ふむ……確かに謎だわ。彼女は目を細めた。一体何が、彼らにあのような変化をもたらしたのだろうか?


その考えをさらに深める間もなく、サヤカがアオイの方に視線を向けた。


「だから剣を持ってないの?」と、彼女はからかうように言った。


アオイは横目で彼女を見ると、鼻で笑った。「長い話になるわよ」


その時、突然、部屋が激しく揺れ、足元の石の床が大きく震えた。


「うっ、今度は何よ?」シズカがうめき声を上げ、他の者たちと一緒に上の方を見上げた。


その隙を突いて、数人のクロツキの戦士たちが、注意をそらされた一行に向かって突進してきた。


「危ない!」


彼らが到達するより早く、横からツキモリの戦士たちの隊列が駆けつけ、次々と敵を迎え撃って押し返していった。


その中に見覚えのある顔を見つけ、アヤネは目を見開いた。「ルナ!?」


キヨツキ五人衆の末っ子である彼がこちらを振り返り、顔いっぱいに明るい笑みを浮かべた。


「みんな! アヤネ!」彼は嬉しそうに声を上げ、小走りでこちらへ近づいてきた。「ああ、みんな無事で本当によかった!」


葵たちは彼の新しい姿を目にし、驚きに目を見開いて歩み寄った。


「へえ、いいじゃない」葵は小さく微笑んで言った。「ようやく本物の侍らしく振る舞う気になったのね?」


皆の視線が、月守(つきもり)の侍の装束を身にまとったルナに注がれる。


ルナは気まずそうに後頭部をさすった。「言っただろ、俺たちは侍なんだって」彼は照れくさそうに笑った。


「ちょっとした息抜きが必要だっただけさ!」前方にいた彼が声を上げた。


彼は槍を突き出し、黒月(くろつき)の戦士の剣を弾き飛ばすと、そのまま相手を打ち倒した。ルナと同じ伝統的な装束に身を包んだ兄弟たちも共に戦い、残る敵を押し返していく。


「そうね。ちょっとした息抜き、か」メイは穏やかな笑みを崩さなかったが、その眉はわずかにピクリと動いた。


ルナの笑みが消え、視線が石の床へと落ちた。


「それでも……俺がしたことは、どんな言葉でも正当化できない」彼は剣の柄を強く握りしめた。「俺は臆病者だった。一番必要な時に逃げ出して、みんなを見捨てたんだ」


肩を落とした彼の顔に、淡いラベンダーシルバーの前髪がかかる。「自分が嫌でたまらなかった……侍だと名乗っておきながら、あんなことをした自分が」


その場に静寂が流れた。


「絶望していたんだ……」ルナは静かに続けた。「でも……君が現れたんだ、アヤネ」


アヤネの表情が和らいだ。


「子供たちや俺の盾となって立ちはだかる姿……迷いなく俺たちを守ってくれた姿……」彼の指が剣をさらに強く握りしめる。「それを見て、俺はすべてを見つめ直したんだ」


アヤネは息を呑んだ。


「ただの女たらしで、自分は役立たずだと思い込んでいた。変われるなんて信じてもいなかった」


彼の声に力がこもる。「でも、君のおかげで変われるんだって思えたんだ、アヤネ」


ルナはゆっくりと顔を上げた。その銀灰色の瞳には、新たな決意が宿っていた。


「君はすごいよ」彼の表情が真剣なものに変わる。「それに、君をがっかりさせてごめん」


彼の誠実な言葉に、アヤネの頬がほんのりと赤らんだ。彼女が言葉を返すより早く、残りの清月(きよつき)の兄弟たちが近づき、ルナの隣に並んだ。


ツカサが前に出て、深く頭を下げた。 「私たちを許していただければと思います。」


他の四人の兄弟もそれに倣い、彼と並んで頭を下げた。


「すまなかった」彼らの声が重なり合って響く。


一同は互いに顔を見合わせた。


やがて、和樹は肩をすくめ、口元に薄い笑みを浮かべながら、両手を頭の後ろで組んだ。


「まあ……他に選択肢があるわけでもないしな」彼は戦場の方へ顎をしゃくった。「この戦いを生き残るには、お前たちの力が必要だ」


司と兄弟たちは顔を上げ、決意を込めた眼差しを交わした。「ああ」


ルナは綾音の方へ数歩歩み寄ったが、彼女の痛々しい姿を目にすると、その表情はすぐに和らいだ。


「綾音……大丈夫か?」影尾と鉄也が彼女に手をかけた光景が脳裏をよぎり、彼の眉間に皺が寄る。


「あの黒月の連中……まさか――」言いかけるかどうかのところで、綾音はそっと後ろへと引き寄せられた。


陸也が二人の間に割って入り、片手で弓をしっかりと握りしめたまま、もう一方の腕で綾音の腰を抱き寄せ、自分の方へと引き寄せたのだ。


その表情は穏やかだったが、声にははっきりとした警告の色が混じっていた。


「俺なら、距離を置くね」


突然の展開に不意を突かれ、ルナはきょとんとして瞬きをした。「え?」


「綾音から少し離れていてくれ」陸也の茶色い瞳がわずかに細められる。「彼女を気遣ってくれるのはありがたいが……」


彼の視線はルナに向けられたままだ。「……言っておくが、綾音は自力で連中を片付けたんだ。見ての通り、彼女は無事だよ」


一同は驚いて陸也を見つめた。彩音の顔はたちまち真っ赤に染まった。


「えーと……」ヒカルは二人を交互に見ながら瞬きをした。「待てよ……これ、どういう状況?」


「ああ」和樹は頭の後ろで組んでいた手を下ろし、眉を上げた。「てっきり、まだ仲が悪いのかと思ってたけど」


彩音はさらに顔を赤らめながらも、茶目っ気たっぷりの笑みを浮かべてみんなの方をちらりと見た。


「うん……そのことなんだけど」彼女は陸也の腰に両腕を回し、彼に身を寄せるように抱きついた。


「もうそういうのは乗り越えて……」彼女は温かい笑みを浮かべて陸也を見上げた。「……付き合うことになったの」


静寂。


泉以外の全員が、その場に凍りついたように固まった。


「……」


そして――


「ええっ?!」全員が一斉に声を上げた。


「二人って……付き合ってるの?!」さやかが興奮で琥珀色の瞳を輝かせながら叫んだ。


「待てよ……さっきまで喧嘩してたのに、急に付き合うことになったのか?!」満はあんぐりと口を開けて呆気にとられた。


「つまり……本当に付き合ってるってこと?」葵はまだ心底驚いた様子で眉を上げた。


彩音がくすりと笑う一方で、陸也はみんなの視線を浴びて顔を真っ赤にしていた。


泉は腰に手を当て、誇らしげな笑みを浮かべて目を閉じた。


「わあ。二人とも、本当によかったね」静香が優しく微笑んだ。


「うん。私も」芽衣も同意するように頷いた。


「やるじゃん、陸也!」ヒカルはにやりと笑うと、陸也の肩に腕を回し、もう片方の手で彼の髪をぐしゃぐしゃとかき回した(その間、女子たちは彩音を興奮気味に囲い込んでいた)。「お前にそんな度胸があったなんて知らなかったよ!」


「ああ! 見直したぜ!」和樹も笑いながら加わった。


陸也が苦笑いしていると、満が歩み寄り、軽く拳を合わせてきた。


「よかったな、相棒」満が微笑んだ。


「俺も嬉しいよ」と、歩み寄ってきたライトも言葉を添えた。


「ありがとう」リクヤは頷き、視線をアヤネの方へと向けた。彼女は今、女子たちに囲まれていた。


続いて彼はミツルに目をやり、少し身を乗り出して声を潜めた。


「お前だって、まだ遅くはないさ」


ミツルの頬がたちまち赤く染まる。「な、何だよ!?」


彼は反射的にメイの方を見た。彼女は他の女子たちの中に混じり、穏やかな笑みを浮かべていた。


ミツルは慌てて視線を逸らした。顔はさらに赤くなっている。


「アヤネ……リクヤ」ルナの声に、二人はそちらを向いた。彼は温かい笑みを浮かべ、新たに結ばれた二人を見つめていた。


「二人とも、本当によかったね」やがて彼の表情が、決意を帯びたものに変わる。「俺も証明してみせるよ。村のみんなが頼れる、立派な戦士になってみせる」


リクヤはニヤリと笑った。「そうだな」


サヤカは腕を組み、からかうような笑みを浮かべた。「ようやく男らしくなってきたじゃない」


ルナはその言葉に、照れくさそうに微笑んだ。


その時――


ゴゴゴ……


広間全体が再び揺れ始めた。天井から小石が崩れ落ちる中、全員が周囲を見回す。


アオイが一歩前に出た。その表情は瞬時に真剣なものへと変わる。


「でも、お祝いに浸っている時間はなさそうね」


彼女は揺れる広間に視線を走らせてから、仲間たちを振り返った。そのラベンダー色の瞳には、強い決意が宿っている。


「クロツキのリーダーの元へたどり着いて……」彼女は拳を固く握りしめた。「……奴を倒すのよ」


「そうね」アヤネは力強く頷いた。「まだ、お姉ちゃんたちを探さなきゃいけないし」


ツカサは前方の戦場に目をやった。そこでは、黒月(くろつき)の戦士たちが次々と広間へと押し寄せてきていた。


「お前たちは先に行け。残りの黒月は俺たちがここで食い止める」


彼の視線が、一番下の弟に向けられた。「ルナ、お前も一緒に行け」


ルナは驚いて瞬きをした。「えっ? でも、ツカサ兄ちゃん……」


「みんなにはお前の力が必要なんだ」タカツキがそう言い、兄の隣へと歩み出た。


「ここは俺たちに任せろ」ミツキも槍を握り締めながら言葉を添えた。


「ああ」キサラギも兄弟たちの隣に並び、ルナに向かって力強く頷いた。


「兄ちゃんたち……」ルナは小さく呟いた。


並び立つ四人の姿を見つめ、彼は息を呑んだ。


ツカサは剣を抜き放ち、自信に満ちた笑みを浮かべて肩越しに振り返った。


「行けよ、チビ」


ルナの瞳が感極まって潤んだ。彼は兄弟たちに感謝を込めた小さな笑みを向け、力強く頷いた。


「うん」


アオイが不意に前方の通路へと向き直った。「行きましょう。時間がないわ」


彼女は駆け出した。


「おう!」と皆が声を合わせた。


アヤネ、リクヤ、ヒカル、カズキ、ミツル、ライト、メイ、サヤカ、シズカ、そしてルナが彼女を追って走り出し、イズミもアスト、ボルト、ギズモと並んで続いた。


ツカサは彼らが通路の奥へと消えていくのを見送った。その顔には誇らしげな笑みが浮かんでいた。


そして、彼は再び戦場へと向き直った。


剣を掲げる。兄弟たちも武器を構え、迫りくる黒月の戦士たちを睨み据えて、彼の隣で陣形を整えた。


「よし、野郎ども……」ツカサの笑みがさらに深まった。「清月(きよつき)の力、見せつけてやろうぜ」

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