第8話 黄色
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「“黄”...。てめぇ。」
「骨が折れましたよっ。とはいっても、神の血を浴びた貴女は色を奪われたとしても死ぬことはないでしょうがねっ。」
この時代には存在しないはずのシルクハットをかぶった少女。顔は継ぎ接ぎになっており、体の露出し肌の見えている部分も同様に痛々しい様子である。
「ややっ。」
「ふむ、よけられましたね。えぇ。」
瞬時に移動して伊勢守は少女に斬りかかる。
色持ちの魔女である彼女は一瞬でそれをかわす。
「“黄”...。」
「元気にしてましたかっ?“黒”さんっ。」
“黄”
色持ちの魔女の中で最低最悪と評され、教会の「神代を生き抜いた占星術師狩り」にも協力し、魔女のイメージを作り上げた彼女。
「さてさて、大罪は3つ目ですねっ!」
「3つだと...?」
「赤さん。さすがに心臓なくて動くのは化け物すぎませんかっ?」
「俺がいつの時代を生きたと思ってる?」
「老害みたいな発言です...ねっ。」
“黄”が“赤”との会話に夢中になっている所に割り込むかのようにナイフを振るう“黒”。
「反応が遅れましたねっ。貴女の魔法は本当に厄介ですねっ。」
「私も忘れてもらってもこまるわ~。」
ナイフをよけようとするも風のいたずらか“黄”は背中を押され斬撃を食らうことになる。
「さすがは無銘の魔剣っ。切ることだけに特化したものというだけはあるっ。しかし、刀にしなかったのが弱て...。」
“黄”の首を落とす伊勢守。大概の占星術師であれば流石に死ぬところではあるが、魔女達はこの程度で死ぬことはない。
神代を生きた彼女達。
「微妙にウザいですねっ。まぁ、とれるもんもとれましたし、ここで」
「「「「!?」」」」
4人は黄がしようとしていることに咄嗟に反応したが間に合わなかった。
「教えてませんでしたねっ。私は、死にかけるとっ。
―禁断の匣―」
基本的に星の力、つまり、地球の力を基にした占星術は一定の霊力を保有していれば使用することができ、使用していく中で“固有式”や“魔剣”、“術式解放”等に昇華していくことになる。
逆に初めから自分専用となる魔法は原則として昇華先を持たない。これは魔法が占星術よりも劣っているという訳ではなく、魔法が強すぎるが故に昇華先に到るまでの研鑽を継ぐ人物いないことに起因する。
だが、神代の時代に神々と戦争を繰り広げた色持ちの魔女達は違う。彼女達は神との戦闘において、自身の魔法の核心部分を理解し、昇華させた。
強力で有るが故に開けてはいけない魔法の核心部分を開けることに対し、人々は畏怖と尊敬の念をこめて開けてはいけない匣を開けた原初の女性の名をつけた。
「なるほどっ。それが貴女の魔法ですかっ!“黒”。」
「仕方ないでしょう。ここで使わなければいつ貴女を殺せるのかしら?」
「それもそうですねっ。魔法の核心部分は分かりませんが私の魔法でさえ打ち消す...。」
魔女の魔法は概念である。そして、魔法は個人そのものでありそれを他人が理解することは永遠に不可能である。
魔女の戦いはいつも不確定で不完全。―禁断の匣―ですら強力な魔法という認識であり必殺ではない。
(厄介ですねっ。魔法の無効とは聞いた事もありませんねっ。)
魔法は占星術と違い展開式や変換式を持つことはない。故に無効にする汎用的な手段が存在しない。魔法を使う人間が発動するかしないかを決めるしかないのである。
しかしながら、“黄”は自身の魔法が無効化されたことを理解していた。
(というよりも、魔法の発動そのものがなくなったっ。というべきですかねっ。)
「...。」
無言で斬りかかる伊勢守。当然、“黄”はよけようとするが...。
「うざいですねっ。半人半霊の残りかすがっ」
「動けないでしょう~。精霊をなめないで欲しいわ~。」
反応の遅れは魔法戦においての命取り。
「グ
ラ
ヴ
ィ
タ」
4人に一気に重力が掛かる。対象にならなかったのは“黄”のみ。となると考えられるのは...。
「時間をかけすぎ。不意打ちまでしてここまで時間がかかるなんて...。」
「ややっ。“四大騎士”の貴女が助けに来るとはっ。」
「まるでバンシーと墓場鳥ね。」
「んっ?」
「どちらもうるさいってことよ。」
「なるほどっ。それでは退散しましょうかねっ。」
「逃がすわけないでしょ。」
重力に変換されている霊力の奔流をもろともせず迫る“黒”。しかし、その刃は届かない。
「なっ...。」
“黒”の前に現れる少女。
そして、自爆。
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「異端審問官もただではないのに...。」
「まあ、助かったから良いではないですかっ。」
「貴女は黄色と狼ね。」
「私は、黄色なのですがっ。」
「どちらも嫌われるものってことよ。」
「ひどいっ。」
“黄”の助けに入ったのは教会の最高戦力の一つ“四大騎士の一人、“霊智”である。
本来、“聖女”と相容れる人物ではないが、彼女は彼女の考えでここに来ていた。
若し仮に、王太子シャルル派にいる魔女が入れ込んでいる少女が“聖女”と同等の人物であれば...。
――――――――――――
同時刻 オルレアン近郊(ジャンヌ達とは別方向)
「ゴホッ...。ゴホッ...。」
咳き込む女性。肌は異常に青白く月明かりを反射している。
フランス占星術の名門アクレシア家の裏切り者、アリシア=アクレシア。病に冒されながらも母である初代アクレシア家当主と渡り合った少女。
彼女も伊勢守と同じく教会から派遣された刺客の一人である。両者の主が違い目的も違う。
彼女の目的は精霊の雫。
“玄武”への対抗策にして最後の希望。それを見つけるためにこの場に来た。―半人半霊―の姉妹がそろうこの場が必要なのである。
――――――――――――
「こうしてフランス王国の運命の一戦は複雑な様子を示し始めた。
救国の聖女が勝利してフランス王国は独立、イングランドは血の薔薇の戦争が始まる。
しかしながら、こちらはどうなるのか...。
―原初の魔女―の最後の弟子か
―不浄の魔女―か
神の文字を二つ名に入れることを許されたものか
それとも円卓に立ち、精霊を従えたものか
永遠の命を求めるものか
はたまたそれ以外なのか...。」
この銀髪少女はジャック・ド・モレーと名乗っていた者。
神に従い
神に背き
そして、焼かれたはずだった。
「そこのところどうなんですか?“語り手さん”」
かくして、フランス王国の運命をかける戦いは混迷を極めようとしていた。
アクレシア家のバ...現当主の質問コーナー
「ったく。何でこんな質問の回答がアタシなんだよ。出番当分ないぞ。
んで、占星術師の名前についてか?
基本は本名を名乗ることはないな。
理由?
まぁ、呪殺されたくないのであればいいがな。馬鹿娘はやってるみたいだがな
二つ名?
自分で決めるやつもいるし、他人からもいるな。けど、神の文字は入れないな。例外は一人だけ居るがあいつは“代行者”と渡り合う化け物だ...。例外だな
さて、当分アタシは暇だからここで休憩でもしておくか」




