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初恋相手との文通は清らかに紡がれる  作者: 香雪 莉子
年末祭編

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4-1.解き明かされる過去


ナイクル侯爵の叫びにホール全体がシーンと静まり返る。聞こえるのは、ナイクル侯爵の荒い息遣いのみで、王を含め全員が彼の言葉を理解するのにしばらくかかった。



「……婚約拒否?」



最初に声を出したのはゼファル公爵だった。青白い顔で、つい言葉が漏れてしまったというようにナイクル侯爵の叫びを真に理解しきれていない。



「なんだ、兄であるあんたが知らないわけがないだろう。」


「勿論、知っていた。そうじゃない、……お前は、そんなことで妹を」


「そんなこと!?」



既に両脇を騎士団員にがっしりと固められてはいるものの、目を剥き出すかのように今度はゼファル公爵を睨み出す。



「彼女と出会ってからずっと、ずっとだ!! どうか婚約させてほしいと願ってきた。本人にも伝えていた。しかし彼女は、自分の婚約は王家が決めることだと一度も首を縦にふらなかった!

そんな折、王女とガルクス公爵嫡男との婚約の噂を耳にした。」



突然話に登場した自分に、ガルクス公爵は驚きつつも、静かにナイクル侯爵を見つめ続ける。



「公爵家が相手ではどうにもならない、そう思って一度は諦めた。いくらサーシャ国の王族の血を引くといってもこちらは侯爵家。それくらいはわかっていた。……しかしその数ヶ月後! ガルクス公爵は隣国の王女と婚約した!!!!!

腹立たしかった、私が泣く泣く諦めた彼女を差し置いて、留学先で知り合った隣国の王女となんて、待っていた彼女が不憫で仕方なかった。その事実を聞いてすぐ、私は貴方に謁見を願い出た、覚えていらっしゃいますか国王陛下。」


「……。」


「ガルクス公爵が娶らないのであれば、ぜひ私にと頼み込もうとした矢先、貴方は私の言葉を遮りこう告げた。

【妹には愛する者がいる、その者に嫁がせると内々に決定している。】

そうおっしゃいましたね!!!!」



全員がナイクル侯爵の独白に静かに耳を傾ける。亡き王女とガルクス公爵との婚約話を知らなかった者が多く、全員が初めて知る事実に次第に興味が引かれていっていた。



「……私は、絶望しました。既に彼女には愛する者がいたのか、と。もしかしたら、他国の王族に嫁ぐのやもしれないと、静かにその場を後にしました。彼女が傷ついていないのなら、とそのまま王城からお暇しようとしたその時、見かけたのですよ。

伯爵家の次期爵位も継がない次男と彼女が楽しそうにお茶しているのをね。」



国王や公爵家の人間たちは、それを聞いて内心でやはり、と全てを理解した。



「公表前でしたからね、その場には学友だという他の男女もいましたが、すぐにわかりました。ガルクス公爵にも向けたことのない笑みでその男を見つめていた。……たかが、伯爵家の次男に!!! 侯爵家の嫡男である私を、ずっと彼女を慕っていた私を、差し置いて!!!!


目の前が真っ暗になり、腹の底から憎しみが噴き出してくる感覚でしたよ。」



公表されていなかった亡き王女の想い人の存在に、ホールが一瞬ざわつく。しかし、国王をはじめとした重鎮たちは顔色を変えておらず、ナイクル侯爵の発言が事実であることを物語っていた。



「もう、どうでもよくなりました。私よりも下位の男に取られるなんてとんでもない。だから殺してやったんですよ。あんなに上手くいくと思っていませんでしたがね。」


「……だが、ここ最近の襲撃とそれらは関係ないだろう。」


「……国王陛下は相変わらず脳内がお花畑でいらっしゃる。」



国王を敬う態度を一切見せなくなったナイクル侯爵に全員が眉間に皺を寄せる。



「……王女が亡くなってすぐ、犯人は私だとわかっていらしたでしょう。それでも捕まえることもしなかった、適当に理由をつけて尋問することもできたはずだ。……でも、何もしなかった。

……なぜだ!?!?!?!?

大事な妹が亡くなって、あの、美しい王女が亡くなって、我が国の損失だというのに、貴方たちは何もしなかった!!!……もう嫌になりましたよ、この国が。だから、壊してやろうと思った。それだけです。」



理解し難い話に国王やゼファル公爵は拳を握りしめ、王女をよく知る王妃やガルクス公爵も怒りに震えている。

美しく、身分に関係なく分け隔てなく接する王女は、貴族からも平民からも慕われていた。兄たちとの兄妹仲も良く、王家は安泰だと言われていた。



「……まあ、そなたの言い分は大体わかった。ではこちらから全ての事実を話そう。」


「事実だと……? そんなの、今私が言ったことがすべて……」


「何事もわかったつもりになるのは恐ろしいことだよ、ナイクル侯爵。」



ガルクス公爵は哀愁の表情を見せながら、国王に静かに視線を向ける。発言の許可だと理解した国王は、静かに頷いた。国王から許可を受けたガルクス公爵が一歩前に進み出る。



「自分のいる場所から見えたものが正しいと思うことは致し方ないかもしれないが、私たち貴族や当主になるような人間にそれは決して許されない。あまりに多くの者の生活や命を預かっているからな。」


「……何が言いたい。」


「単純に、君の視野が狭いということだよ。」


「な、んだと……!!」


「……答え合わせをしてやろう。」




とても大事に書きたい場面だったので、更新までに時間がかかってしまいました。

少しずつ再開していきます!



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