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初恋相手との文通は清らかに紡がれる  作者: 香雪 莉子
年末祭編

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5-6.彼女の行方

立て続けに何日か更新忘れてしまったので、複数話投稿予定です!


「……?」



ナイクル侯爵は思ってもいなかった質問につい怪訝な顔を隠せない。まさかこの流れでただの学院生であるあの女の話をされるとは思わなかった。



「……ゴルドー伯爵令嬢?」


「質問に答えろ。」


「……。私は知らん。」


「貴様っ……!」


「本当だ。そこのガルクスのとこの精霊ならわかるんだろう?

襲撃を指示をしたことは認めよう。しかし、お前が捕まえたという刺客もその女には一人しか送っていないし、連絡が途絶えていたから成功したかどうかも私はわかっていなかった。だからその後のことは何も知らん。」



しらを切っているようにも見えるが、この期に及んで嘘をつく必要もないとナイクル侯爵はあっけらかんと答える。シリウスはガルクス公爵のフクロウを見やるが、首を振っていることから嘘をついていないのだろう。

見る見るうちに青くなったシリウスは、横にいる自分の守護精霊に目を向ける。その表情は強張っていた。生きているのはわかっているが、彼女の所在がわからない現状に最悪の事態を想定していなかったわけではない。「まさか、」と思っただけだが自分の守護精霊のその表情を見て、自分の予想が確信に変わる。今までずっと自分の背後にいた精霊王の方へ静かに顔を向ける。


そこには、案の定「ようやく気付いたか」とも言いたげな精霊が尻尾をゆらゆらさせてこちらを悠然と見下ろしていた。



「……もしかして、連れていったのか。」


『……かもな。』


「……無事、なのか。」


『一応な。』


「……すまなかった、間に合わなくて。」


『……お前は悪くない。だが他のは別だ。』


「……そうだな。……会えるか?」


『……まあ、お前は会えるだろうな。』


「……。」



シリウスは神妙な面持ちで考え込んでしまった。その様子に「何かあったのか」と国王たちも心配そうに見つめる。シリウスと精霊王の会話に割り込むことなどできないが、ゴルドー伯爵令嬢がこちらの()()()()()()に連れて行かれたことは明白だった。


シリウスはしばらくして、視線をある人物たちの方に向けた。そこには、真剣な眼差しでこちらを見つめているルークと、前で手を組み涙目になりながらこちらを見つめるルイーザがいた。

その周囲には、同じようにセリーナの行方を心配しているユグネル子爵家とファベルク伯爵家の面々がいる。全員が「シリウスならきっと、」と思っているのが伝わるが、こればかりは自分ではどうしようもできそうもない。

シリウスが悲しい顔をしているのを見たファベルク伯爵とルークは、手に負えない何かがあったのだと理解して心が冷えていくのを感じた。


そんな様子を知ってか知らずか、精霊王は続ける。




『まさかこれで終わりとは言わないよな?

そっちのあれこれは興味がないが、あと一人、裁くべき人間がいるだろう。』


「……ここでか?」


『無論だ。』



誰のことを指しているのか正確に理解しているシリウスだが、精霊王が裁きたいと言っている事とは別に、こちらとしても裁くべき事象がある人物だった。それでも、ここでそれら全てを話すのは彼女にとってよくないのでは、と渋っているところであった。


しかし、精霊王がそれを望む以上、それをしなければ自分ですらセリーナに会えないかもしれないという恐怖があった。

誰かが会えなければ()()()()()()()()()()()()


シリウスは「わかった」と答えると、国王たちにもう一人ここで罪を裁いてもいいか打診する。一連の会話を聞いていた国王は間髪入れずに許可を出す。

それを見た騎士団長をはじめとした騎士たちがシリウスを見て指示を待っている。ナイクル侯爵の最も近しい存在であるレイオール侯爵を呼ぶのでは、と考えているのが伝わってくるが、シリウスが指した人物は意外な名前であった。



「……ゴルドー伯爵を前に。」



至る所から「えっ」と困惑する声が聞こえた。確かに長女に関する事についてはあまりいい心象はないが、それでも根は真面目な男である。悪事に手を染めるとは考えつかない人間の筆頭であるとも言えるゴルドー伯爵が呼び出されたことに全員が理解に苦しんだ。


抵抗されることなく前に連れ出されたゴルドー伯爵だが、なぜかその横には騎士に付き添われたゴルドー伯爵夫人までいた。今にも泣き出しそうに震える夫人に、シリウスは声をかける。



「ゴルドー伯爵夫人、貴女は関係な……」


「申し訳ございません!!!!!」



シリウスの言葉を遮りながらその場で膝をつき謝罪を始める夫人に、シリウスも隣の伯爵も全員が驚いて固まる。



「セリーナ……む、娘を、蔑ろにしている夫を止められませんでした。妻である私も同罪です。どうか、どうか……っ」


「……っ」



そう言って膝をついて頭を何度も下げる伯爵夫人に、隣にいる伯爵はみるみるうちに目に涙を浮かべた。ここまで私を庇おうとしてくれている妻の言葉を無視し続けた自分が恥ずかしく、情けなく感じた。


そんな夫人の姿に多くの人間が憐れみの視線を向けるが、シリウスだけは静かに微笑んでいた。


" あの子の近くに、彼女がいてくれてよかった…… "


夫人の温かさにセリーナがどれだけ救われたかを考えると、そう思わずにはいられなかった。



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