4-8.解き明かされる過去
クーデンの話に耳を傾けていた全員が本当にディカエが現れていたのだと恐怖を感じ、女性に至っては震え出す者までいた。
話を聞いていた騎士団長が、国王の許可をとりクーデンに質問を投げかける。
「その防がれた、というのは? どうしてわかった?」
クーデンは答えていいものかとシリウスを横目で見るが、自分にまで怖い顔を向けて静かに頷いてくる。「いや本当にいいのか…?」と思いながらも、彼は騎士団長の問いに答える。
「……対ディカエ専用の防御魔法だそうです。ゴルドー伯爵令嬢から確認しました。」
「……何?」
「彼女が競技場内で気を失う前、話をすることができました。師匠から、何が何でも、咄嗟にでも完璧にできるようにしろと教わった魔法だと。それを使ったと言っていました。」
「……だが、ディカエの攻撃を防ぐだけなのだろう? 結果してどうしてディカエは……」
「彼女の守護精霊が対処したといっていました。精霊自身からも確認をとっているので事実かと。」
「いや、でもな……彼女が本当にその魔法を使用したかなど……」
「事実です。」
クーデンが答えるよりも早く、ルークが前方に進み出る。眉を上げながら騎士団長がルークに話しかける。
「なぜ、お前がわかる?」
「あの時、自分たちの防御魔法は彼女が展開していました。そして、ディカエが視認できた途端にその防御魔法がなくなったんです。後から聞いた話で、対ディカエの防御魔法は扱うのが難しく、魔法の消費も激しいため、あの時展開していた防御魔法を使いながらでは難しかった、と。そのせいで……そのせいで、怪我をさせてしまって申し訳ないと謝られたので。」
「……。」
言葉をつまらせながら当時の事を話すルークが嘘をついているようには誰も見えなかった。それでも、騎士団長はどうしてもこれらの話が腑に落ちなかった。
「……君たちの話はわかったが、それでも理解できん。まだ学院の二年生だろう? そんな令嬢が……」
「私の弟子ですよ。」
「……何?」
「騎士団長。ゴルドー伯爵令嬢は、あのシャロン・ユグネルの娘で、私の愛弟子です。その防御魔法を教えたのも、私です。」
シリウスが真剣な目で騎士団長を見つめる。騎士団長自身も勿論わかってはいた事だが、その事実をシリウス本人から言われると信じるしかない。
シリウスは勿論だが、シャロンも一部ではかなり有名だったからだ。
ガルクス公爵の守護精霊が口を挟まないところを見ても、彼らが言っていることが全て事実だと言うことは明白だった。
「……つまり、競技場に現れたディカエを対処したのは全てゴルドー伯爵令嬢ということだな?」
「そうです。」
「そして、それをわかっていながら今まで黙っていたということか?」
「……申し訳ありません。」
「クーデンは悪くありませんよ。元々、彼女がここまで必死に隠し通していたのには訳があるので。クーデンたちは彼女のたった一つの意思を汲んであげたに過ぎません。」
「しかし調査をしていた我々にとっては許し難いことだ。今日のことだって……」
「そう、今日のこと! 私は早くその話をしたかったんです!」
シリウスが待ってましたとばかりに手を叩く。騎士団長も「はあ?」とでも言いたげにシリウスを怪訝そうに見つめている。
「まあ、詰まるところ競技大会の時の襲撃はそういうことです!
そして今日、また新たな被害者が出てしまいました。まずは、ここにいる、そう、ロベルト・クーデンです!」
「……お前、急にテンションがおかしいだろ……」
「はい、その話もどうぞ!」
「……はあ。本日学院から馬車で帰宅中、突然襲われました。ディカエに。」
まだクーデンの消息を掴めていなかった国王たちも含めて全員が驚いている。そんな様子を見てもシリウスはケロッとして、早く早くと言いたげにクーデンに続きを促している。
「ディカエだけでなく、黒ずくめの刺客まで現れました。私も一応ディカエ用の防御魔法は使えますが、長く使うもんでもないので……御者たちも含めて中範囲に防御魔法を展開して、かつ他人を守りながら刺客の相手をするのは無理がありまして。危ないところで、シリウスが現れて救出されました。」
「その襲ってきた者たちは?」
「クーデン侯爵家にて生け捕りにしております。」
「……そうか。シリウス、なぜクーデンのことがわかった?」
「……私は、愛弟子を本当に大事に思っていまして。愛弟子だということもありますが、大事な幼馴染の忘れ形見ですしね。彼女が死ぬ時にも、どうか娘を頼むと言われていました。その言葉を、私は忠実に守り続けているんです。そんな愛弟子に、本当に彼女が危なくなった時には私にわかるように装飾具を渡していました。肌身離さず持っているように、と。」
「……。」
「それが反応するのは、残りの魔力量が著しく減った時。そして彼女自身が、身の危険を感じたり死を覚悟した時。……そして今日、それが反応しました。私が身につけている対の装身具にね。」
そう言って右手の中指につけている指輪を見せる。
「同じ装身具を、ある女性とロベルトもつけていて、こちらに向かってる途中にその反応があったのでかけつけられました。」
そして、シリウスはナイクル侯爵に向き直った。
声が出せずとも、常に何かを叫び訴えていたナイクル侯爵だったが、自分の方を向いたシリウスの顔を見て動けなくなった。そこには、殺意を隠そうともしない憎悪のこもった視線でこちらを見てくる狂気じみた男がいた。
「……さあ、ナイクル侯爵。話を聞かせてもらいましょう。なぜ、セリーナを狙ったのかをね。」
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