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魯坊丸日記 ~魯坊人外伝 第三章「魯坊丸の日記は母上の楽しみ」~  作者: 牛一・冬星明


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52.興行の失敗

 天文二十一年十月十六日

 夕餉を家族と家臣らと一緒に食べながら報告を聞く。

 一家団らんとは違うが、養父中根(なかね)-忠良(ただよし)と義兄忠貞(たださだ)と話す貴重な時間だ。忠貞義兄上(あにうえ)を那古野の常備兵訓練に貸し出し中であり、久々に中根南城に戻ってきた。


「義兄上、指導の目処は付きましたか」

「少なくともあと三月は掛かるな。俺や慣れた者が指導すれば、一月でそれなりに鍛えることはできる。しかし、それでは指導者を育てることにならん。言葉で伝えられないことが多すぎる」

「言葉で伝えられないのですか」

「そうだ。兵は一人一人の育つ時間が違う。得意と不得意も違う。同じ指導で同じように伸びない。一人一人にあった鍛え方をせねばならん。全体の動きを見ながら、一人一人の違いを見つける目を養わなければならん。これは一朝一夕で教えられん」

「俺もできそうにありません」

「あははは、そんなことはない。全部、魯坊丸から教わったことだ」

「残りの半月で常備兵を使えるようにできますか」

「すでに基礎は叩き込んだ。半月で使えるようにできるが、それでは指導者が育たん」

「構いません。指導者の育成は来月から中根の学校に引き取って、半年ほど掛けて育てたいと信長兄いと交渉しておきます」

「それは助かる」


 こちらの会話が終わると、中断していた報告が再開された。

 報告は多岐に渡るので食事も終わり、お茶を飲みながらゆったり聞いていた。

 最後に“投石”の初日売上の速報が出された。

 想像と違って悪かった。


「梅、予選の盛り上がりはよかったのだな」

「はい、応援にきた村人が広場を埋め尽くしました。盛り上がりも他と比べモノにならないくらいに熱狂しておりました」

「梅、原因は何だと思う」

「村人が賭事を理解できていないからだと思います。また、村人が多すぎて一般客の観戦がしづらいようでした」

「観戦しづらいか」

「それと囲碁や将棋と違って棋譜のようなものが存在しません。実際に観戦しないと購入する気にならなかったと思われます」

「よくわかった」


 村人を楽しませる催しとして成功した。だが、投石は弓に比べると華がない。

 俺は村人の購入力を見誤っていたようだ。

 村人の娯楽として投石の大会を残し、奉納試合を弓に変えるか。

 弓か、どんな競技があったのだろうか。

 わからないことは師匠の岡本(おかもと)-定季(さだすえ)に聞くのが一番だ。


「師匠、流鏑馬の他に弓の行事はありませんか」

「ありますぞ。流鏑馬と同じく、下鴨神社で『歩射神事(ぶしゃしんじ)』がございます。詳しい内容は存じませんが、安全祈願の『射礼(じゃらい)の儀』と聞いております」

「千代、千秋-季忠様に詳しく調べてもらうように頼んでくれ」

「畏まりました。来年は投石と置き換えるという意味で宜しいでしょうか」

「うむ、基本はそうだ。だが、投石の大会が盛り上がったので大会そのものは残す。奉納試合の予選と本戦を繋ぐ見世物として開催するのはどうだ」

「なるほど、賭け札を買いにくる客を呼ぶのによい案だと思われます。明日からでも相撲大会を開くのはどうでしょうか」

「相撲?」

「別に尾張中に声を掛ける必要はございません。明日は中村と八事の力自慢に声を掛けて三人抜きの予選を行い。明日以降も投石の販売終了日まで予選を続けるのです」

「決勝はどうする」

「二十日の最終日に三人抜きした勝者で勝ち上がり戦をして決勝の二人を決めます。投石の奉納試合の翌日に実施いたします。相撲の奉納試合を開催してはどうでしょうか」

「間に合うのか」

「賭け札を売るわけではございません。観戦者も千秋様と若様だけでも問題ございません。あとは御二人が会われた方を招待するので宜しいと思います。信長様は相撲好きと聞いております。観戦されるどころか、聞きつけて参加されるかも知れません」

「千代、乗馬の盛り上がりを再現するつもりだな」

「それは信長様次第です・・・で、ここから本題です。投石の賭け札売りの最終日まで四日あります。本戦に進む者に四日間の練習を義務付けましょう」

「今からか」

「相手は村人です。熱田の宿に泊め、鋭気を養ってもらうと言えばよろしい。村長に銭を掴ませ、留守のことを頼めば問題ありません。今からでも人を送れます」

「相撲を観戦した客が投石の練習を見せて、賭け札を買わせる算段だな」

「その通りです。若様が行ったことが失敗に終わったなどとあってはなりません」

「わかった。千代に任せる」

「承知しました」

「それならば、次の武闘大会の札売りを考えねばならんな」


 俺はぐるりと皆の顔を見回すと、目が合った里がやる気な顔を見て手を上げた。


「何かあるか」

「百人一首がいいと思います」

「悪くないが、準備の時間がない」

「そうですか」


 やる気を出した里に悪いが百人一首の大会を開く場所も百人一首の札の数も足りない。

 だが、せっかく里が言ったので叶えてやりたい。

 悩んでいると師匠が妥協案を提示してくれた。


「そうですね。正門を入ったところに将棋の会場が残っております。来年は百人一首の奉納試合をすると告知して、お市様、お栄様、里様に見本を披露するのはどうでしょうか」

「やります。兄上のお役に立ちたいです」

「いい子ですな。では、お市様とお栄様が賛同して頂ければ開催するのはどうでしょうか」


 師匠が優しい声で俺に提案してくれた。

 俺に否はないが、千代女の方をちらしと見た。

 千代女も小さく頷いてくれた。


「では、里に頼もう。百人一首を皆に広めてくれるか」

「お任せ下さい」

「師匠、乗馬の会場ならば、百間の的当てが開催できると思います。その前に『歩射神事』の作法を調べてからの方がよいと思われますか」

「その必要はないでしょう。ただの客寄せに過ぎません」

「千代、できるか」


 俺は千代女に振った。

 千代女が楓、茜、百合、菖蒲、松、梅の六名の名前を上げると全員が頷いた。

 但し、楓が百間(181m)の弓比べは無理だと言った。

 弓の名人ならば、百間を百発百中で当ててくるが、一般の武士でその距離を当てる者は少ない。

 鉄砲で嗅ぎつけた滝川(たきがわ)-一益(かずまさ)が、橋本(はしもと)-一巴(いっぱ)市川(いちかわ)-大介(だいすけ)を連れてくる。

 この市川-大介は信長兄ぃの弓の師であり、弓の名手だった。

 百間の的を当ててくる。

 鉄砲の一益と一巴と一緒に百間の的当て比べをしているらしい。

 百間が的当ての普通と思っていたが違うらしい。


「熊野の蕪坂(かぶらさか)-源太(げんた)なる者が三十三間堂〔蓮華(れんげ)王院(おういん)本堂(ほんどう)〕で射たという逸話が残っております。できぬ事はありませんが、無理でございます」

「師匠、三十三間(60m)でどうだ」

「それならば大丈夫でしょう」

「では、三十三間で的当てとし、奉納の関係なく、百間の的に当てた者に褒美を与える」

「弓の名手を集めるおつもりですな」

「誰にも召し抱えられておらぬならば、その者を市川-大介に師事させてみたい」


 来年は水練、凧揚げなど競技を増やして盛り上げよう。

他にもB級グルメを披露する大会もいいな。


「兄上、ビィきゅうぐるめとは何でしょうか」

「屋台の料理大会のことだ。料理は料理でも屋台で食べられる料理の売上を比べる大会だ」

「それは楽しいそうです」

「皆は何が食べたい」


 俺がそう問うと、唐揚げやお好み焼きのような料理を屋台で提供してはどうかと言い出した。

 次々と提案があがった。

 里の提案は“あいすくり~む”だった。

 唐揚げは大量の油が必要なので単価的に難しく、お好みは肉の調達が問題であり、アイスクリームは大量の氷が調達できない。

 否定はしなかったが“無理だな~”と思いながら、イカ焼きやたこ焼きはできそうだ。

鉄板が無理ならば肉なしお好み風たこ焼きもありだ。

 皆が美味しそうに食べる姿はいいものだ。

 神嘗祭(かんなめさい)から新嘗祭(にいなめさい)まで。


 ◇◇◇


九月十七日 神嘗祭(かんなめさい)

十八日 “囲碁・将棋”の予備予選:三勝で勝ち上がり、三敗で失格

十九日 “囲碁・将棋”の一次予選:勝ち上がった一般者と招待選手を含む全員で百二十八席を取り合う。五勝勝ち抜き戦。一勝した者は一勝した者としか対戦できず、四勝者は四勝者と対戦する。一日十試合。(一試合一時間の計算)

二十日 “囲碁・将棋”の一次予選予備日、札売り開始。

二十一日午前 “囲碁・将棋”の二次予選一回戦 64戦128名 16台を四回、長考禁止

二十一日午後 “囲碁・将棋”の二次予選二回戦 32戦 64名 16台を二回、長考禁止

二十一日午後 札売り開始

二十三日 札売り最終日

二十四日午前 “囲碁・将棋”の本戦一回戦 16戦 32名 16台で午前、基本は長考禁止

二十四日午後 “囲碁・将棋”の本戦二回戦  8戦 16名 8台で午後、基本は長考禁止

二十五日 “囲碁・将棋”の本戦三回戦  4戦 8名 2台で午前午後二回、基本は長考禁止

二十六日 “囲碁・将棋”の本戦準決勝  2戦 4名 1台で午前午後二回、基本は長考禁止

二十七日 “囲碁・将棋”奉納試合 決勝 申刻(午後三時)から長考禁止

※)予選では、三回戦以降、対戦相手が戦うのが見られるように午前午後に振り分けてある。


九月二十八日 抜穂祭 氷上姉子神社の稲穂が運ばれてくる。


十月一日 月行事(朔日)

二~四日 乗馬の予備予選

五日 乗馬一次予選

六日 乗馬二次予選

七日  乗馬の札売り開始

十一日 乗馬の札売り最終日

十二日~十三日 乗馬本戦

十四日 乗馬奉納試合 午後から二頭で争う。

十月十五日 月行事

十六日 投石の予選で三十二村が決まる。

十六日 投石の札売り開始

二十日 投石の札売り最終日

二十一日 投石の本戦

二十二日 投石の奉納試合


二十四日 武闘の予備予選、三勝勝ち抜け。竹刀と防具を貸し出する。

二十五日~二十七日 武闘の予選、勝ち抜け百二十八人を選抜。竹刀と防具を貸し出する


十月二十八日 月行事

十一月一日 月行事(朔日)

二日~五日 武闘一次予選 128人を32人に選抜する。

五日 武闘大会の札売りを開始。


九日 武闘の札売り最終日

十日  武闘の本戦一回戦 16戦 32名

十一日 武闘の本戦二回戦  8戦 16名

十二日 武闘の本戦三回戦  4戦 8名

十四日 武闘の本戦準決勝  2戦 4名 午前午後に一戦ずつ


十一月十五日 月行事(十五日)


十七日 武闘大会の奉納試合


十一月十九日卯の日 新嘗祭

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