表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/16

ようこそ。異世界へ! 異世界紹介会議と世話係アンナ

「異世界って、どういうこと?」

裕也は大仰な言葉遣いからいつもの言葉を出してしまった。確かに非現実的な情景を見てきたが、俄かには信じがたい。

「はい、裕也殿にそのこと説明するための場がこれでございます。色々とあるでしょうが暫らく時間を下さいませんでしょうか」

クリスティアーネにとっては想定外の発言連続だったが冷静に対応できたことに小さなため息をついた。当然ながら裕也は不満があるが、この流れに従うことにした。敵では無いが味方とは限らないから。


 簡単に円卓を囲む女性たちを紹介するが、裕也の耳には入らなかった。むしろ必要に応じて覚えていけば良い。続いてクリス――本人はクリスティアーネが長いのでクリスで良い。と言ったため――が異世界の代表として説明を始める。

 彼女の説明によると、異世界の存在理由は分からない。理論的にも哲学的にも。世界人口は五千万程度で二十四人の有力貴族が、それぞれの固有能力を背景に為政者として君臨している。そして一部の能力者のみいわゆる人類世界と行き来できる。能力者は人類世界に影響を与えてはならないし当然ながら存在を知られてはならない。地球の技術は原則だが持たないし作らない。

 途中、「固有能力とは何か」と聞いたが貴族間でも秘匿事項と言うことで答えはなかった。

 人類世界との行き来については任意に転移できず固定されている。異世界も地上もだそうだ。地上の世界と異世界と唯一繋がりがあった家系は今回の出来事に巻き込まれている。その出来事についての情報はなかった。転移場所はすべて破壊され、地上の様子はわからない。想像だが地上の大部分の人々にとっては一瞬の出来事らしい。

 異世界の能力者は、その固有の能力を維持し高めるために地上に行くことがある。今回のクリスがそうだ。異世界からの転移者は”存在を知られてはならない”為に生命の安全が脅かされた時、強制的に異世界に戻ることになる。その際に転移者の着衣などを含めた持ち物も同時に転移できる。存在した証拠を残さないためだ。偶然のタイミングでクリスと手を繋いでいたので、地上から転移が行われたらしい。他に同様の出来事が一件発生したが既に死亡していた。とにかく、ただ一人の人類ゆえに厚遇で歓迎される。

 そして、異世界の中でも地上の影響が生じクリスティアーネ・ロイス直轄領以外の異世界の情報は手に入らない。

「詳細は調査中で分かり次第、裕也様を含めた皆様にご連絡いたします。ここで休憩を取ることいたしましょう」

その言葉で一斉に動きだす。化粧室に行く者、隣と会話する者等々だ。その顔には笑顔がない。

 彼女達は定例の親睦会に来ていて、この災いに巻き込まれた。自分に領地戻ることができずに困惑するもの。父母の安否を気遣うもの。当然、イチカワ・ユウヤを憎むものもいた。


 裕也は、クリスに断りを入れ化粧室に向かう。適当なメイドに化粧室の場所を尋ねようとするとアンナがメイド姿で現れた。

「以後は私アンナが裕也様のお世話をいたします。アンナと呼び捨てでお願い致します。さっそくですが、私が化粧室にご案内いたします。」

 案内されたトイレを見て驚愕する。現在の感覚で化粧室とはトイレを意味するが、ここは控え室だ。入ると右手に大理石の手洗いと大きな鏡。左手にはソファとテーブルがありテーブルには軽い食事が準備されていた。タバコとライターがある。簡単な飲み物を供するためのポットなども。その奥が目的のトイレだ。当初の館もそうだが水洗洋式でシャワー洗浄式になっている。

 アンナの説明によると、以前は、メイドもトイレに主人と一緒に入りスカートの裾を汚れないようにしていた。しかも、お尻を拭くのもメイドの仕事であったそうだ。トイレのとなりには横には衣装替えの更衣室まである。裕也がトイレに入ると一緒に入ってきたのには至極当然のことであった。もちろん、裕也が追い出したのは当然至極。

 トイレから出るとアンナが暖かいタオルを手渡す。そしてソファに腰を下ろし食事をする。その間もアンナが控えて何かと世話を続ける。タバコを咥えるとアンナが火を…。

「アンナさん。いい加減にしてくれないか。俺はひとりで考えことをしたいんだ」

裕也は、苛立った口調で言うと、「はい…。」と返事があってすすり泣きをはじめた。

こんな少女を泣かすとは、それより泣くことなのか。焦る裕也。

「まて、まって!泣くことでは……。女の子を苛めたみたい……」

「私は女の子ではありません…です。」

搾り出すような一言をきっかけに号泣する。裕也はアンナの両手を肩に置き、優しく胸に引き寄せ抱きしめる。

以前に父親の依頼で娘の写真を撮ったことがあった。セミヌードだ。目的は知らないし知る必要もない。今では目的によっては非合法だろう。衣服を脱ぐ直前に泣き出した時の応用だ。ただし西洋絵画の裸婦について持論を述べた後だったが。

 アンナにした行動は、プライドを傷つけたことを反省からだが弱みに付け込んだ行動と思われるリスクが高い。だが、それは懸念にすぎなかった。アンナは自分からも裕也に腕を絡ませ額を押し付けていた。

「失礼いたしました。今回の不始末については如何様な処分を受けますので……」


「まて。待ちなさい。処分とは大げさな。今回は、俺…、私にも非がある。気にすること無い。」

実際、裕也の社会では些細な失敗で処罰することは、言うなれば、逆に”セクハラ””パワハラ”と騒がれることもあり得る。アンナの行動は、貴族封建社会のヒエラルヒーにおいては当然のことだろう。

アンナはクリスから可能な限りの接待を命じられていた。また、主人であるクリスと同じ黒髪と黒い目を有するイチカワ・ユウヤに対して接待を命じられたことを誇りに思っていた。

 裕也は、彼女をソファに座らせ自ら紅茶を入れジャムを添える。アンナは「わたくしが。」と言ったが無理を通した。

「お茶でも飲んで落ち着きなさい。」

お茶を差し出しながら言葉を続ける。

「こちらに来て一日目で社会規範…そうルールが理解できていない。ルールに反したなら教えてくれ、これはお願いだ。この世界ではアンナは先輩なのだから。勿論、俺じゃなかった…私も言うことは言うよ。良いね、アンナ先輩。」

先輩という一言でアンナの顔色がよくなる。単純だ。いや、真面目すぎるのだろう。

「で、会議は、まだなの」

「はい。会議開始の十五分前に知らせがありますのでご心配は不要でございます。では、早速ですが、よろしいでしょうか。」

何が”よろしい”のか分からないが頷く。

「まず、先ほどの涙を流したことは罰の対象になります。主人の目の前で涙を見せることはでございます。また裕也様のご機嫌を損ないました。罰をくださいませ。」

ここで沈黙するアンナ。何かしらの罰を待つ空気を読んでデコピンを行う。

「痛いです。鞭打ちじゃないのでしゅか…ですか。」

「私の国では罰するやり方が違う。鞭打ちの刑など無い。今のがデコピンという罰だ。これでアンナの罰は終了。ちなみに本当はどのような罰なのか教えてくれ。」

「はい、お許しありがとうございます。お答えですが主人が奴婢に対して行われるのは鞭打ちだけでございます。回数は九回まで。十回以上は公のご沙汰により公開の場となります。鞭打ちの場所は」

と良いながら背中を向けスカートを捲くると白い下着に包まれたお尻とオーバーニーソックスが露になる。

「でございます。」

裕也は、色々と言いたかったが、言うと失礼にあたると思い「あい、分かった。」とのみ重々しく答えた。

 背後でウェストミンスター寺院の鐘の音が聞こえる。シャワートイレ、学校のチャイムとは……。異世界に興味を持つ裕也だった。

「会議開始の十五分前に知らせでございます。」

 裕也は、身なりを整えアンナに言う。

「さあ、行きましょう。アンナ先生!


読んでくださってありがとうございます。

感想は当然ですが、誤字などの指摘、ご意見があればお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ