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ようこそ。異世界へ! 会議は続く

「さあ、行きましょう。アンナ先生!」

「ええええぇ、私は裕也様の世話係りでございます。」

場違いな声をあげたが内心では裕也との距離が縮まったと思うと嬉しいような恥ずかしいような複雑な気持ちになっていた。そのアンナの声を無視し勝手に進む。

「裕也様。方向が逆でございます。ご案内します。こちらです」

「さすがアンナ先生」

少しゴマをすった感があるが、中年の上司が若い女性社員に意に反する発言など普通だ。ただ、この手の発言は『オッサン、キモい』と言われるは覚悟している。


「ご主人様、お許しを。本来なら事前に教えていなければならなかったのですが迂闊でございました。喋らないでください。私にも聞こえない程度で私を意識して名前を呼んでください。呟く感じで。」

『アンナ』

一瞬、不思議なことを言い出すのか。訝ったがそれに従う。

『はい。ご主人様、これが念話です』

お互い声は出していない。モノラル放送をステレオヘッドファンで聞いているようだ。

『念話ってテレパシーのことなのか』

『“テレパシー”はわかりかねますが、念話は近い距離で大きな声を出さないで主従間の意思疎通ができます。また、お互いの目を認識できる距離でも。』

『質問はあるけど終わりだな』


 裕也がアンナを連れて会議室に入ると既に集まっている人たちが一斉に礼をする。そして会場に少し緊張が走る。

『裕也さま。左手首をお臍あたりに当てて、右手を少し後ろに振りながら頭を軽く下げてください』

アンナの指示が念話で飛ぶ。もう一度、同じ指示が繰り返されるゆっくりとその通りに行う。

『それから、今からは私から念話するまで”念話”はしないで下さい』

「お席でございます」

 アンナが椅子を引き着席する。円卓には裕也の左右を除いた全員が席に付く。少し遅れてクリスとジョン・コリアー作『リリス 』を彷彿させる一七歳くらいの少女が席に着くとメイドたちがお茶の準備をしはじめた。改めて周りを見ると美人、美少女ばかしだ。若干の執事服の男性もいるが。

「ご主人様。会議は、このお茶の時間を終えたら始まります。お茶を入れ替えるまで後ろに控えておりますので。その前にお嬢様とのお話の許可を」

「わかった」

アンナは裕也の返事を聞きクリスの横に進む。それに応じてクリスのお世話係りのベアータが後ろに下がる。ゆっくりと両膝をついてお話の許可を得る。

「お嬢様。ご報告がございます。私アンナは裕也様に罰せられ許されました。」

「それは事実でしょうか。裕也さま。」

不安な顔で問いかけるクリス。

「事実です。」

裕也も若干不安があったものの冷静を装い答える。するとクリスは笑顔で言う。

「良かった。アンナ、おめでとう。さあ、会議を始めましょうか。」

”リリス ”似の女性が立ち上がる。アンナを含めたメイドたちが下がるのを確認すると

「ヴィクトリーヌ・ロレーヌです。これから会議再開いたします。」

会議が始まった。

「人類世界は、核戦争で滅亡に瀕し、その影響が生じています。皆さんが領地に戻れない。連絡が取れないのもこの影響です。この状況を早急に打破しなければならないのは皆さん一致のことです。そして人類として存在している大人は、イチカワ・ユウヤ殿ただ一人だけです。」

 ヴィクトリーヌは、さらにジャネットジャクソン似の女性を紹介する。名前はレイラ・ジェームズ。その彼女が話しを進めている。

 異世界の貴族階級おいて公爵、侯爵、伯爵が上級貴族であり、その上に大公が最上位となる。それに対して下級貴族は、子爵、男爵となる。普通は子爵クラスが研究者とか役人とかの多い身分だ。レイラ・ジェームズは、それらより上の侯爵家で地上の様々な技術を研究している。それなりの事情があるみたいで、それゆえに地上の技術シャワートイレが存在するのだろう。と裕也は推測した。


やがて会議は核心に。

「さて、忌まわしき出来事に如何に対応するかが問題です。現在、移動手段の復旧の目処は全くありません。皆さんの諸領地の情報も同様です。しかし、この館が無事なようにご実家とその直轄地は無事でしょう。」

円卓を囲む人たちは当然のように聞いている。

「対応として陸路を歩いて進むには最短の都市まで二千キロあります。その間は未開拓地で辺境地都市に辿りついても治安が悪いでしょう。」

「私たちの能力をしてでもですか」

初めにソフィアと紹介された女性が質問した。既に根回しが済んで了解が得ている。これは明らかに会議に水をさすことが目的だ。

「大量の水や食料も維持は当然。蛮族の襲撃に幾度も耐えられないでしょう。一軍規模でもどうか。このことは事前に説明したはずです」

ヴィクトリーヌがほかの参加者の同意を得るために悲しい顔で答えた。その後をレイラが続ける。

「歩いての移動は無理です。こちらが対応しているように皆さんのご実家も何かしらの手段を考えているでしょう。ともかく、ここクリス様の館から出ないのが最も安全なのです。次に連絡手段の修復ですが、移動手段に依存していますので難しいのが現状です。これは私が対応しています。そこで、忌まわしき出来事を未然に防ぐことが出来なかったのか。を考えたのです。」

先ほどの女性が「いまさら」と口を挟む。

「過去を悔やんでも仕方がないでしょう。これからのことが重要ではないでしょうか」

と参加者に向かって発言するが反応はない。

「そうです。でも、これは視点を変えてみた。発想の転換みたいなものです。それについて説明します。知っての通り、この世界は地上社会に影響を与えてはならない。そして、この世界の存在を地上社会に知られてはならないことは大きな原則です。ただし、例外もあります。この世界の幸福の向上に関することです。この世界の幸福の向上という理由でしたら共存している協力者に助けてもらうこともできます。今回の“忌まわしき出来事”も過去に遡ってご神託することでこれを防ぐ可能性があります」

「仮に今の時空が書き換えられていたなら、ご神託の方法が行われていたなら…。どうなるのでしょう…。無限の繰り返しになっているということでしょうか。過去に神託をする。その結果、忌まわしき出来事が起きてしまったかも。あるいは回避できなかった。その結果を知らない私達が、再び過去に神託をする」

「可能性はあります。今は議論をするのは賢明でないでしょう。また、それゆえに神託は禁忌なのです。この過去に神託を発し忌まわしき出来事を未然に防ぐことには、大きなリスクがあります。ソフィアさんの指摘のように過去の影響で全世界が改変される可能性が高いのですから。もっと酷いことなる可能性もあります」

ソフィアとレイラの会話が進む。円卓を囲む女性達の大部分は理解できていないようだ。だがソフィアが会議の進行を妨げていることに非難する空気が満ちてきた。それを察して、彼女は発言をひかえた。

 レイラは、過去の神託の例やこのことでの協力者の行動の結果などを述べる。タイムパラドックス関係についてレイラが説明しようとしているは理解できたが、タイムパラドックスを議論することは無駄だと感じ聞き流していた。そうしているとレイラ・ジェームの声に熱がこもる。

「でも、神託以外の方法が無いのも事実。最小の改変は生じても、これしか方法はないのです。しかし、机上ですが、忌まわしき出来事を未然に防ぐことが可能であるのです、神託を持って過去に行くのです。」


読んでくださってありがとうございます。

感想は当然ですが、誤字などの指摘、ご意見があればお願いします。

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