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【完結】強固な国にしたいと国王に頼まれた元・大賢者、最強の女王を育ててしまう  作者: 月城 蓮桜音


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第40話 表彰式、婚約者発表

 表彰式が始まる時間となり、僕とアリーは再び闘技場へと向かった。


 そして、会場へ一歩足を踏み入れた瞬間だった。


「キャ——ッ! ギルバート様——!」


「アリア王女殿下——!」


「殿下、こちらを向いてくださ——い!」


「お二人とも素敵ですわ——!」


「……え?」


 先ほどまでとは比べものにならないほどの歓声が、僕たちを迎えた。


 驚いて隣を見ると、アリーも目を丸くしている。


「お兄様……何ですか、これ」


「僕に聞かれても分からないよ」


 思わず顔を見合わせる。


 次の瞬間、二人同時に笑ってしまった。


「キャ——ッ!」


「笑った!」


「ギルバート様の笑顔——!」


「アリア殿下、可愛いですわ——!」


 なぜか歓声がさらに大きくなった。


「……余計に騒がれてしまいました」


「どうやら、そのようだね」


 少し照れながらも観客席へ手を振ると、アリーも僕の真似をして両手を振る。


 すると今度は、闘技場全体が揺れたのではないかと思うほどの歓声が上がった。


「すごい人気だな」


 先に壇上へ上がっていたアルベルト殿下が、面白そうに笑っている。


「殿下も人のことを言えないでしょう」


「私は慣れている。お前たちは今日一日で随分と人気者になったらしいぞ」


「……困りましたね」


「なぜだ。喜んでおけ」


 僕たちが所定の位置へ並ぶと、拡声器を通した声が会場へ響いた。


『それでは、第一回剣術大会の表彰式を執り行います!』


 会場が静まり返る。


『優勝者は——第一王女、アリア殿下!』


「「「わああああ——っ!」」」


 凄まじい拍手が巻き起こった。


 アリーは一瞬驚いたあと、嬉しそうに笑って観客席へ頭を下げる。


『第二位、ギルバート・フォン・ベルンシュタイン卿!』


「ギルバート様——!」


「素敵でしたわ——!」


 ……僕まで、こんなに声援を受けるとは思わなかった。


『第三位、第一王子アルベルト殿下!』


「アルベルト殿下——!」


「殿下も素晴らしかったです——!」


「おお、私にもちゃんと声援があるな」


 小声でそんなことを言いながら、アルベルト殿下は完璧な笑顔で手を振っていた。


 さすが、慣れている。


 騎士団長であるアーバン殿から、賞金の入った袋と記念の盾を受け取った僕たちは、それぞれ元の位置へ戻った。


 これで終わりかと思ったのだが、司会者は壇上を離れなかった。


『以上をもちまして表彰式を終了——と言いたいところですが』


 わざとらしく言葉が止まる。


 観客席がざわめいた。


『最後に、国王陛下より皆様へ大切なお知らせがございます!』


「来たな」


 アルベルト殿下が小さく呟く。


 僕は思わず姿勢を正した。

 分かっていたことなのに、妙に緊張する。


 陛下が拡声器を受け取り、壇上の中央へ進み出た。


『皆の者、本日の剣術大会は楽しんでもらえただろうか』


「「「は——い!」」」


 元気の良い返事に、陛下が満足そうに頷く。


『王族主催として初めて行った大会だが、予想以上の盛り上がりとなった。来年以降も開催を検討するとしよう』


 再び歓声が上がった。


 陛下はそれが収まるのを待ってから、ゆっくりと続ける。


『そして今日は、この場を借りて、皆にもう一つ報告したいことがある』


 会場の空気が変わった。


 あれほど騒がしかった観客席が、次第に静かになっていく。


『第一王女アリア。ギルバート・フォン・ベルンシュタイン。前へ』


「はい」


「はい!」


 僕とアリーは視線を交わし、一歩前へ出た。


 途端に、観客席のあちらこちらから囁き声が聞こえてくる。


「まさか……」


「例の噂は本当だったのか?」


「剣術大会で優秀な者が婚約者候補になるという話は……」


「でも、ギルバート卿は第二位よ?」


「いや、あのお二人は昔から一緒に修行していたと……」


 陛下が片手を上げる。


 一瞬で静かになった。


『第一王女アリアと、幼い頃より共に大賢者アレンの元で修行を続けてきたギルバート・フォン・ベルンシュタインは——』


 ほんのわずかに、間を置く。


『本日をもって正式に婚約したことを、ここに発表する』


 一瞬。


 本当に一瞬だけ、会場が静まり返った。


「「「いやああああ——っ!」」」


「「「ぎゃああああ——っ!」」」


「ギルバート様が——!」


「アリア殿下が——!」


「やっぱり噂は本当だったのか——!」


 祝福なのか悲鳴なのか分からない声が、闘技場中に響き渡った。


「す、すごいですね……」


 アリーが若干引いている。


「うん、僕も驚いているよ」


 横を見ると、アルベルト殿下は腹を抱えて笑うのを堪えていた。


 陛下まで口元がわずかに緩んでいる。


 ……楽しんでいるな、この人たち。


『静まれ!』


 陛下が一喝すると、ようやく声が小さくなっていった。


『なお、この婚約は大会の結果によるものではない。両名の長年にわたる関係と本人たちの意思、両家の了承を得たうえで決定したものである』


「ああ、そういうことか」


「やっぱり以前から決まっていたのね」


「お似合いですもの」


 今度は悲鳴ではなく、納得する声が広がっていく。


 僕は隣に立つアリーを見る。

 頬をほんのり赤くしながら、それでも嬉しそうに笑っていた。


 その顔を見たら、急に緊張が消えた。

 僕はアリーの前へ進み、片膝をつく。


「えっ?」


 アリーが目を丸くした。

 その手を取る。


 この言葉は、陛下に言われたから口にするものではない。

 形式でもない。

 僕自身の意思だ。


「アリー」


「はい」


「僕と一生を共に過ごしてくれないだろうか」


 一瞬、アリーが固まった。


 次の瞬間。


「ギル……喜んで!」


 満面の笑みを浮かべ、勢いよく抱きついてきた。


「うわっ!」


 危うくそのまま倒れそうになったが、慌ててアリーの腰を支える。

 勢いを殺しきれず、そのまま二人でくるりと一回転した。


「きゃっ!」


 アリーが楽しそうに笑う。


「危ないよ、アリー」


「だって、嬉しかったんです!」


 ……そんな顔で言われたら、怒れるはずもない。


「おめでとう——!」


「お幸せに——!」


「アリア殿下、可愛い——!」


「ギルバート様——! 幸せにしてあげてくださいませ——!」


「もちろん!」


 思わずそう返すと、一際大きな歓声が上がった。


 僕の腕の中で、アリーがまた嬉しそうに笑っている。


 きっと、この先も色々なことがあるのだろう。


 それでも、この笑顔だけはずっと守っていきたい。


 割れんばかりの拍手と祝福に包まれながら、僕たちの婚約は国中へ正式に知らされることとなった。

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