第39話 急な展開に喜ぶ彼女と慌てる男
国王陛下に呼ばれた僕たちは、国王夫妻の控室に通された。
そこには、第一王子とその側近たち、そして宰相閣下も控えていた。当然、護衛としてアーバンたちも陛下の後ろに控えている。
「おお、休憩中に呼び出して悪かったな。二人とも、素晴らしい戦いだった。そこに座りなさい」
第一王子とその側近たちは立っているのに、ただの侯爵令息である僕が座れるはずもなく、アリーの後ろに立とうと移動した。
「ギルバート、アリアの隣に座ってやってくれ。我が妹は、きっと緊張してしまうだろうからな」
「……はい、かしこまりました」
いつもより声や仕草の優しい第一王子に、僕は少し警戒しながらも頷き、アリーの隣に腰掛けた。
「二人とも緊張しないで大丈夫よ。呼んだのは、悪いことを伝えるためじゃないわ」
「そうだぞ。あまり緊張させるのも悪いから、本題に入るとしよう。まずは……そうだな、アリアの婚約者を決めようと思っているんだが——」
「ギルバートが良いです」
迷いのない即答だった。
せめて少しは考える素振りを見せてほしい。
「あ、アリー!?」
「おお、そうか! ギルバートもそれで良いか?」
「え……、あ、はい……」
「決まりだな」
いや、待ってほしい。
何がどうして、そんな簡単に決まるんだ。
「……ええ——!?」
慌てる僕の肩に第一王子が手を置き、嬉しそうに声をかけてきた。
「ギルバート、安心するがいい。可愛い妹と義弟は、私が裏からサポートすることが決まっている。ギルバートは大変だろうけれど、アリアの王配として——」
「は、え? アリーの王配、ですか?」
「そうだ。アリアは次期女王となることが決まったのだ。その夫となるギルバートは王配となる」
頭の中で、婚約、女王、王配という言葉が順番に並ぶ。
どれも意味は分かる。
だが、それらが自分に関係する言葉として並ぶと、途端に現実味がなくなる。
婚約。それは当然、嬉しい。
だが、王配となると話は別だ。
……いや、意味は知っている。知っているからこそ困惑しているのだ。
「あの、僕で良いのでしょうか」
「女王となるアリアが決めた相手だ。それに、そなた以上にアリアの隣に置いて安心できる男もおらぬ」
呆然としている僕を置いて、話は進んでいく。
「この後の表彰式で、二人の婚約を発表することとなる。王位継承者としては、命を狙われる可能性も鑑みて、発表の時期はずらそうと思っているが、構わぬだろうか」
「構いません」
アリーが堂々と答え、嬉しそうに僕に微笑む。
確かにその可能性はあると思っていたが、まさか本当にアリーが女王になるとは思っていなかったため、僕は混乱していた。
「ギルは嬉しくないの?」
悲しそうに上目遣いで声をかけられ、僕は慌てて弁明する。
「う、嬉しいよ、アリー! ただ、王配……アリーが女王になる可能性は理解していたんだけど、ちょっと頭の処理が追いついていないだけなんだ。僕はアリーの恋人になれただけで、とっても嬉しいんだよ!」
「こ、恋人……」
今度はアリーが真っ赤になり、俯く。その可愛らしい仕草に、国王夫妻と第一王子は温かい目で二人を見つめてくれていたのだが……。
その場にいた側近の一人が、この後の表彰式に出席していなかったことに、僕たちは気づいていなかった。
その時は、それが何を意味するのか、考えもしなかった。




