↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】強固な国にしたいと国王に頼まれた元・大賢者、最強の女王を育ててしまう  作者: 月城 蓮桜音


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/48

第22話 育ての兄と血縁の兄

 陛下がお呼びだと近衛騎士が私の元を訪れたため、私は仕事を切り上げて応接間に向かった。

 中に入ると、小さな少女と大賢者アレン、そして少女の護衛らしき青年が控えていた。

 

 この子が私の妹なのだろう。近々会えると母上が嬉しそうに言っていた。十五歳にしては小柄な第一王女を、私はまじまじと見つめた。


「……何だ。めちゃくちゃ可愛いじゃないか」

 

「兄上!」


 私は第一王子であるアルベルト。私を兄と呼ぶのは第二王子のディートリヒだ。


「……ありがとうございます」


「ふふっ」


 嬉しそうに微笑む母上に笑顔を向けると、ディートリヒが噛み付くように口を挟んだ。


「兄上。王位継承に関わる者を、見た目だけで判断するのはいかがなものかと」

 

「妹を見て可愛いと言って何が悪い」


「くっ……」

 

「何だよ」

 

「『何だよ』ではありません。それより……」

 

 ディートリヒの視線が、護衛の青年に向いた。

 

「こいつ、誰です?」

 

 そう言われて青年を観察する。彼の持つ色は、ベルンシュタイン侯爵家のものだが、あの家にこれくらいの年齢の令息はいなかったはずだ。

 

「ギルバート・フォン・ベルンシュタインと申します。アリア様の兄……いえ、護衛をしております」

 

 兄、と言いかけたか。すると、隣にいた王女が即座に声を上げた。

 

「お兄様です!」

 

 ディートリヒが眉をひそめている。

 

「……は? 兄だと? お前の兄は、俺とアルベルト兄上だろう……王族の色ではないようだが」


「はい。僕は王族ではありませんので」


「ではなぜ兄なんだ?」


 ……なるほど。アレン殿の弟子なら、理由は一つしかないな。これはまた、とんでもないのを連れてきた。

 執務の日々に飽きていた私は、ついニヤリとしてしまった。

 慌てて表情を整え、答えに窮している妹のために助け舟を出した。


「お前は思ったことを全部口に出さないと死ぬのか」


「兄上は何も言わなさすぎなんですよ!」


「考えてから喋っているだけだ」


「それを嫌味と言うんです!」


 陛下も母上も、優しい眼差しで私たちを眺めていらっしゃる。口の悪い弟も、一つの個性だとおっしゃるが、王族としての品位に欠けるだろうに。


 それに対して、妹の振る舞いは素晴らしいの一言だ。十五歳で姿勢も話し方も、王族としての在り方を理解しているからこそだろう。育てたのが大賢者であれば、それもそうかと納得する。


「今日は顔合わせをしておきたくてな。明日には、第一王女であるアリアのデビュタントが行われる。そなたたちも兄として、妹をサポートしてやってくれるか」


「はっ。かしこまりました」


「……かしこまりました」


 あからさまに嫌そうな声で答えるディートリヒの背中を小突きながら応接間から退出した。


「兄上、放っておいてください」


 苛立っているディートリヒには何を言っても響かない。兄として、それを理解している私は、おとなしく部屋に戻ったのだった。


 ★★★


 王子たちが退出すると、国王陛下がアリーとアレンだけ残るように言われた。護衛として紹介された僕は外に出され、扉の前で待つことになった。


 何か大事な話があるのだろう。応接間には結界が張ってあり、中の会話は聞こえない「はず」だった。

 風魔法と闇魔法まで使えるようになっていた僕は、聞こうと思えば聞けるけれど、当然、聞くつもりはなかった。

 ところが「婚約者」という単語を偶然拾ってしまった。

 そして、聞いた後に後悔することになるのだった。


『アリア嬢、そなたは王族として婚約者を至急、選ぶ必要がある。この度のデビュタントでは、護衛であるギルバートが守ってくれるだろうが、本来であれば婚約者が一番近くでそなたを守るべきなのだ』


「……婚約者」

 

 僕はポツリと呟いた。

 アリーは驚いているのだろう、魔力の揺らぎがある。アレンがアリーを憐れんだのか、助け舟を出した。


『姫さんにとっては、初めての社交界なんだ。一度、社交とはどういうものかを理解させてから進めたらどうだい』


『ふむ、アレンの言うことも一理ある。では、この話はデビュタントの後にしよう。アリア嬢、遠いところからご苦労であった。ゆっくり休むが良い』


 ひとまず今すぐ決めなくていいのだと、少し安心したらしいアリーの魔力が落ち着いた。僕も少しホッとして、止めていた息を吐き出した。


『はい、ありがとうございます』

 

 ——ガチャ。


 考え事に気を取られていた僕は、扉が開いたことに驚くも、澄ました顔でアリーをエスコートする。

 アリーの部屋に案内される道のりで、僕は『至急、婚約者を』という言葉が頭にこびりついて離れないのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。