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【完結】強固な国にしたいと国王に頼まれた元・大賢者、最強の女王を育ててしまう  作者: 月城 蓮桜音


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第11話 本当の強さ

 アーバンとの特訓は、驚くほど分かりやすかった。

 構えの癖を直すだけでなく、体格に合わせた鍛錬方法まで理由を添えて教えてくれる。師匠とは違う視点から学ぶことも多く、短いながら有意義な時間だった。

 

 まだ幼いアリーには少し難しい動きもあったが、楽しそうに真似をしていた。

 

 その間、師匠は口を挟まなかった。剣は専門外だからと、基本的にはアーバンに任せていた。師匠は彼のことを信頼しているのだろう。

 

「訓練のやり方は教えた通りだ。次にここを訪れる時には、もう一段上の訓練を教えるからな。精進しろよ」


「はい、アーバン殿」


「だから、『お兄様』と呼んでくれと言っているだろう?」


 剣術以外は変な人、という印象は変わらなかった。だが、感謝はしているので、訓練前とは違い、無視せず最低限は答えるようになった。


「……嫌です」


「姫様は言ってくれたぞ?」


 素直なアリーに変なことを言わせないでほしい。


「……変態」


「うがっ! そ、そんなことはないぞ!」


 もう、面倒になってきた。


「『団長』で良いでしょう」


「辞めたらどうするんだ」


「他人に戻るだけです」


「捨てないでくれー!」


 何なんだ、この人……。


「……」


「……お前たち、何を言っているんだ?」


 見かねた師匠が、声をかけてくれた。


「ギルバートが俺のことを師匠とすら呼んでくれないんだ」


「僕の師匠はアレン叔母様だけです」


「残念だったな、アーバン。師匠の座はあたしのものさ」


「くっ、悔しいー!」


 アーバンは師匠にも弱いのか。まあ、師匠はからかっているだけだが。騎士団長としてやっていけるのか心配になる。


「……お兄さま、よく分かりません」


 そりゃそうだろう。僕でもイマイチ分からない人だ。このタイプの人とは、関わる必要がなければ一生関わりたくない。少なくとも、自分はこうならないようにしよう。


「アリーは分からなくても良いんだよ。剣術の稽古は、明日から兄さまが教えてあげるからね」


「やったー! 楽しみにしていますね!」


「おい、待て待て。姫様にまで剣術を教える気か? ギルバートはまだ見込みがあるが……」


「アーバン、お前はまだそんなことを言っているのか。他人に対して勝手に期待するなと言っただろう」


「き、期待なんかしていないさ。ギルバートは筋が良いってだけで、強くなるとは言っていないだろう?」


「ギルバートに期待していると言わなかったとしても、姫さんの剣術を『否定』しただろう。同じことさ」


「あ……」


 ああ、いつもの師匠の考え方……根本的な教育方針だ。僕は幼少期から言われ続けてきたから、それが基準になっている。

 アーバンがそれを理解していないのであれば、世間一般では普通ではないのかもしれない。


「ギルバート」


「はい、師匠。己の力量は、他人と比べるものではない。昨日の自分より今日の自分、そして明日の自分が今より上であれば、成長しているということ。そして、誰かが何かをしてくれるかもしれない、こうなってほしいなどという希望を持つな。他人を動かすことができるのは、力で押さえつけるか、家族を盾に脅した時ぐらいだ」


「その通り。教育は大事だが、人の根本にある大事なもの、必要なことを教えておけば、子供は考えて動くようになる。二人には、幼い頃から言い聞かせてきたから、よく理解しているのさ」


 本当は理解するまでに、少し時間がかかったんだ。寝る前に、師匠に言われたことを反芻するのが日課だったから、今では身についているけれど。


「……剣術と何が関係あるんだ?」


「はあ……。アーバン、話を聞いていたのか?」


「聞いていたが! フィア様の教えだろう? あの人の教えは元々難しいんだ!」


「……ギルバート、噛み砕いて説明を」


「はい、師匠。やる前から決めつけるのではなく、興味を持ったことはすべて一通りやる。やってみたものの中からしか、楽しいこと、興味のあること、続けられるものは分からない。僕やアリーがやってみて、伸ばしたいと希望すれば教え、嫌がることは非効率ゆえに、『知識』として教えるに留める」


「ギルバートは賢いね。とても分かりやすかった。これでアーバンが理解できなかったなら、あいつの地頭の不具合だろう」


「し、失礼な! さすがに分かった。ちゃんと理解できたぞ。なるほどな。確かに、『これをやれ!』と言われても、できないことというか、不向きなことはあるからな」


「そういうこと。あたしはお前のせいで必要に駆られて剣術もやる羽目になったけれど、本来なら要らなかった。今では、ギルバートのやりたいことを少しだが手伝えて良かったと思っているさ」


「……ああ、そうだったな。あれがあったから、俺は必死に剣を振るってきたんだ。おかげで団長にまでのし上がったのだから、良かった……のか?」


 首を傾げているアリーの頭を撫でながら、僕は師匠の言葉をもう一度胸の中で反芻した。

 

 僕が教わってきたことを、今度はアリーにも伝えていけばいい。

 

 剣術だけではなく、そのもっと根本にあるものを。

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