トラック11
トラック11
私は溺れていた。
美咲と過ごす日々に、美咲がくれる幸福に、溺れていた。
おはようを見つめ合いながら言って、
並んで歯を磨いて、
大学やバイトを偶にサボタージュしたりして、
クソ映画を見て、
二人で街を歩いて疲れたら公園で一息ついて、
ベンチでアイスコーヒーを片手にイヤホンを分け合って音楽を聴いて、
日が暮れたら一緒の家に帰って、
立ち読みついでに寄ったコンビニで晩御飯は今日も弁当だねって言って、
お酒を程よく飲んで換気扇の下で煙草を吸って、
ちゃんと大きいベッドで星を創って、
おやすみを言って夢の中でも美咲と話して。
そんな毎日が幸せだった。
刺激が欲しい時はちょっと危ないセックスや遊びをしたりして、
若気の至りで対になるタトゥーなんかいれちゃったりして、
互いに着せたい服を着せあったりして、
見たい顔を化粧で作りあったりして、
無敵だーって言って土砂降りの街を傘もささずに手を繋いで走ったりして、
そして雨上がりの街でずぶ濡れのまま互いの瞳を見つめ合ってキスをした。
そんな毎日が幸せだった。
私はずっと好きって言えなかった。
言えなかったけど、美咲はずっと一緒にいてくれた。
楽しかった。
嬉しかった。
これ以上の幸せってないって思った。
これがずっと続いて欲しいと、罪を背負った私は思ってしまったんだ。
「ちょっと、コンビニ」
それが最後の言葉。
美咲は消えた。
私は二十歳になろうとしていた。
これが本当の初めての喪失。




