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バインドスキルで生き抜くファンタジー世界生活  作者: アブラゼミ
番外編

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208/210

番外編「拾ってきちゃった」


「ウッヒャー! もう! なんで急に降り出すのよー!!!」


 あたしは文句を言いながら、ローブを被って夕立の中を走る。

こんな事になるなら傘を持ってくればよかったわ!

杖も持ってないのでテレポートも使えない。走って帰るしかない。

またアイツに小言を言われるかもしれない。

出がけに「傘を持っていった方がいいぞ」と言われたのに「ちょっと買い物に行くだけだから大丈夫よ」と断ったのを後悔する。

帰ったら「ホラやっぱり」と言われるだろう。もう! 降らないと思ってたのに!

雨の中ぬかるむ道を走る。靴も靴の中もグチョグチョだ。帰ったらすぐお風呂入ろう! アイツが沸かしてくれてるでしょ!


「……あら?」


 道の端に、何やら段ボールが置かれてる。

潰れて空き店舗になっているお店の前だ。


「こ、これは……!」


 そこであたしは、運命と目が合った。




****************************




「元いた所に返してきなさい」


 仁王立ちするユイトが、あたしと、あたしが拾ってきた子犬に言い放つ。


「お願い! 飼わせてちょうだい! 『拾ってください』って書いてあったのよ! 雨の中震えてたのよ! こんなにカワイイのよ! あたしがちゃんと面倒見るから!」


 あたしが子犬を持ち上げて2人でユイトを見つめる。

茶色い毛並みのカワイイ子犬だ。でも今はずぶ濡れで震えていて可哀想だ。

けれどもユイトが頑なに首を振った。


「それ絶対俺が面倒見る羽目になる奴じゃねえか。ダメったらダメだ。それにここはセイラの家だぞ。セイラの許可がないとダメだ」

「じゃあ明日セイラに聞きましょ! ダメだったら魔法使いの里のあたしの家で飼ってもらうから! 今晩だけでもこの家にいさせてあげて!」

「しかし……」

「この雨の中この子を放り出す気? そんな可哀想な事できないわ! お願い! 今晩だけでいいから!」

「……今晩だけだぞ。早く風呂に入れてこい」


 風呂を沸かしていたらしいユイトが、あたしと子犬に風呂に入るよう勧める。

あたしと子犬が風呂から上がると、温めた牛乳が入ったお皿と、ほぐしたお肉などが入ったお皿が用意されていた。子犬がしっぽを振りながら頭からお皿にがっつき始める。

玄関先には段ボールの箱に古くなった毛布を入れた寝床も用意されていた。

なんだかんだ言って、コイツって結構甘いしやさしいわよね。そういうトコも好き!




………

……




「別によいぞ。この家で飼って」

「ホント!?」

「マジか」


 翌朝、テレポートで連れてきたセイラに聞くと、あっさりOKの返事がきた。

ユイトの作った朝ご飯をあっという間に平らげた後、セイラが子犬の頭を撫でる。


「ひいおじいさまとひいおばあさまも犬を飼われていたからな。裏庭には雨をしのげる縁側もあるし、大きくなったら裏庭で飼って問題ないだろう。ただし、責任を持って飼うならな」

「飼う! 責任持ってあたしが飼うわ! 散歩に連れてくし、ご飯もあげる!」

「動物病院にもちゃんと連れて行くのだぞ。ところでこの子の名前は決めてるのか?」


 子犬の頭を撫でながら、セイラが問う。


「決めてないわ!」

「では私が決めるとしよう。フム……男の子か」


 お股の間についてるカワイイのを確認して、セイラが数秒思案する。


「この犬の名前はゴンだ。よいな、ゴン」

「アン!」


 セイラに向けて、子犬がいい返事をする。

この家で誰が一番偉いか理解しているようだ。あたしやユイトの前より、お行儀よくしてる。

早くも子犬にナメられてしまっているユイトが、何とも言えない表情をしている。


「何でゴンなの?」

「前にこの家で飼っていた犬の名前がゴンタだったからだ」

「安直ね。まあいいけど」

「……なあ、結局俺が面倒を見る羽目になりそうなんだが」

「何だ? 貴様、犬が苦手なのか?」

「犬は別に苦手じゃないけどよ……。田舎でも飼ってたし」

「ならいいじゃない! それに大丈夫よ! あたしが毎朝ちゃんと早起きして散歩に連れてくし、ご飯もあげるわ!」

「予防接種もちゃんと受けさせろよ。では私は仕事に向かう。またな、ゴン」

「アン!」


 去って行くセイラに向けて子犬が、いやゴンがいい返事をする。

誰がこの家で一番偉いか理解しているようだ。

ユイトが、無言で立ち上がり財布を確認する。


「あら? どっか行くの?」

「犬小屋作るための材料買いに行くんだよ。あと犬用のトイレとかもな。言っとくけど面倒は拾ってきたお前がちゃんと見るんだぞ」

「もちろん分かってるわ! あたしにドーンと任せなさい! できなかったらバインドでも何でも罰を受けるわ!」

「……」


 胸を叩くあたしを、ユイトが何とも言えない表情で見る。

どうせすぐ早起きできなくなるとでも思ってるんでしょ! 見てなさい! 毎朝ちゃんと早起きして散歩に連れてってみせるんだから!」




****************************




「俺に何か言う事は?」

「……スミマセンでした」


 ゴンを散歩に連れて行き、ごはんも食べさせたユイトの前で、あたしはお縄をちょうだいするため両手を前に差し出す。

ゴンがこの家に来て1ヶ月。

最初の1週間は早起きしてあたしが散歩に連れて行っていたが、その後は毎朝寝坊してしまいユイトが散歩に連れて行っている。

ごはんの用意もトイレのしつけもブラッシングもユイトがしてくれていた。

ゴンは完全にユイトに懐いており、今もユイトにお腹を見せている。

あたしが来ると「なんだおまえか」みたいな顔しかしなくなった。おやつを持ってる時とたまに散歩に行く時は愛想いいんだけど……


「後ろ手だ、後ろ手」

「……はい」


 怒ってはいないけど、呆れているらしいユイトがゴンのお腹を撫でながらあたしに向けてバインド用の縄を構える。

あたしはユイトに背中を向けて手を後ろに組んだ。

このあとメチャクチャバインドかけられて、小一時間ほど物置で吊された。

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