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バインドスキルで生き抜くファンタジー世界生活  作者: アブラゼミ
番外編

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207/210

番外編「裸の付き合い②」

「フーッ……おっきいお風呂は、やはりよいものですね」


 大きなお風呂で手足を伸ばしながら、わたしは息を吐きます。

今日はお葬式や病院での活動などがあって、忙しい日でした。

神官の仕事は暇な時は暇ですが、忙しい時は忙しいです。

サレン様の信者はいい人が多いですが、たまに面倒な人もいますし……

まあ、サレン様の僕としてそういう相手にも変わらず毅然と接するだけですが。


「♪フン フン フーン」


 気持ちいいお湯に、鼻歌が出てしまいます。

レイフォード領の公営浴場は、誰でも入れるお風呂です。

古い建物ですが掃除がちゃんとされていて中はキレイです。

お湯の温度は熱めですが、蛇口から離れればちょうどいい温度のお湯も味わえます。

後は、身体が成長する成分が入っていたら100点満点なのですが……


「……アスミ様?」

「リリーさん?」


 と、珍しい人がこちらに来ました。

ユイトさんのお友達という事になっているけれど、最近はユイトさんにグイグイ来ているリリーさんです。わたしの中では一番の恋敵と目している相手です。

しかしこの浴場で会うのは初めてです。


「珍しいですね。リリーさんがこちらに来られるとは」

「……別に、たまに入りに来る。今日は仕事が早く終わったから」


 かけ湯をして、リリーさんがお湯に入りわたしから遠くに行こうとして……戻ってきました。どうやら熱いお湯が苦手なようです。

仕方ないという感じで、リリーさんがわたしの近くで浸かります。

そのお身体はとてもキレイです。大きくはありませんがよい形をしています。ユイトさんがどうかは知りませんが、この位が好きという人がいそうです。そして脱ぐと意外な色気があります。クリスさんやレベッカさんのような健康的な色気とは違う、大人の色気です。普段は地味なのに……


「……何?」


 じっと見ていたからでしょうか、リリーさんが無表情でこちらに問いかけてきます。


「い、いえ。リリーさんはどれくらいの頻度でこちらのお風呂に入られに来られているのかと思いまして」

「……週3」

「け、結構来られてるんですね」

「……ん、広いお風呂は好きだから」


 意外と来ていたリリーさんに驚きます。その割にこれまでお会いしてませんでしたが、時間が合わなかったのでしょうか。あるいは地味すぎて気づかなかったのでしょうか。


「リリーさん、お肌キレイですね。何かされてるんですか?」

「……別に」

「か、髪もキレイですね。何かされてるんですか?」

「……別に」

「さ、最近お化粧を頑張られているようですが、何かきっかけがおありなんでしょうか」

「……特に、ない」

「……」


この人、人と話す気なさすぎじゃないでしょうか。

セイラさんと違い、わたしの事はそれほど悪く思われてはいないようですが……ちょっと距離を感じます。人見知りという事ですし、そのせいと思う事にしましょう。


「……あの」

「は、はい。なんでしょう」


 お湯を顔を洗ったリリーさんが、わたしに話しかけてきます。


「アスミ様は、どうして神官になったの」


 無表情で無感情な目が、わたしをまっすぐ見つめてきます。

相変わらず読めない人です。ユイトさんなら分かるのでしょうですが……


「わたしが神官になったきっかけは、わたしがいた孤児院のお姉ちゃんを神官の方が救って下さったのがきっかけです」

「お姉ちゃん?」

「はい。わたしが孤児院にいた頃、人攫いに遭いまして……」


 そこから先はユイトさんにもした話を簡潔にする。


「……と、言うわけでわたしは神官を志した訳です」

「……大変じゃない?」

「それはまあ修行は大変でした。魔法学校の神学科でみっちり鍛えられましたからね」

「……ん、それもそうだったろうけど、今の話。神官の仕事は、大変そう。人の死と向き合う仕事だし、休みも不定休みたいだし」

「うーん……まあ大変は大変ですが、大変なのはどんなお仕事でもそうでしょうから」


 わたしの言葉に、リリーさんが目を瞬かせる。


「辞めたいと、思った事はないの?」

「ありません。この仕事がわたしの仕事です」

「……一生続くの、イヤにならない?」

「なる時もあるかもしれませんが、続けます。わたしは神官の仕事に一生を捧げるつもりです」

「……」


 リリーさんが、夜空を煮詰めたような真っ黒い目でわたしを見つめてきます。


「……あなたは、大人なんだね」

「そうでしょうか?」

「……ん。ウチの新人達よりずっと大人。入ってまだ1ヶ月ちょっとなのに、手を抜いたり気を抜いたりしてるから」

「……」


 どうやらお仕事の事で何か、いえ新しく入った人達と何かあったようです。

人見知りな人ですが、お父様の会社でちゃんと働いておられるようですし、新人の教育などもしているのでしょう。想像できませんが……


「あなたの爪の垢を、新人達に煎じて飲ませたい」

「……お、おやめになられた方がよろしいかと。効果はないでしょうし」

「……ん、冗談。冗談と書いて本気」

「冗談にしておいてください」


 この人の場合本当にやりそうなので困ります。意外と冗談やイタズラが好きな人みたいですし。その相手はもっぱらユイトさんですが……

こうしてわたしはリリーさんと裸の付き合いをした。

それから時々公営浴場でいっしょになる事があり、少しだけ会話をする関係になりました。

裸の付き合いは、人の心を開くようです。

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