番外編「勝負下着」
「セイラ、明日の夜時間はあるか?」
「明日の夜? 大丈夫だぞ。そちらに泊まるつもりだ」
「ならよかった。大事な話があるから」
「大事な話?」
「明日になったら話すよ、じゃあな」
そう言ってユイトが領主の仕事場から去って行く。
明日になったら話す大事な話。
これは…… これはもしや……!
「メアリ! 今から勝負下着を買いに行くぞ!」
「お嬢様!? そのような事を大声で言ってはなりません!」
私はメイドのメアリと共に勝負下着を買いに向かった。
****************************
「どうだろう?」
「どうだろうと聞かれましても……。すごいとしか……」
メイドのメアリが、試着室から出た私から気まずそうに目を逸らす。
子供の頃から知っている仲だから、下着姿など見慣れているだろうに……
「すごいかどうかではない! 可愛いかどうかを聞いている! どうだ!」
「どうだと聞かれましても……!? お嬢様、何をそんなに必死になっておられるのですか?」
「……なあメアリ、私が街の者達からなんと呼ばれているか知ってるか?」
「さ、さあ……?」
「『行き遅れ女騎士』だ! 誰が行き遅れだ! 私はまだ25だ! それに貴族や商人の子弟からの見合い話だって殺到しているというのに!」
「お、お嬢様!? 下着姿で荒ぶらないでください!」
メアリに諫められ、私はフーフー言いながら気を鎮める。
「それもこれも『行き遅れ女騎士』などという名を広めた者のせいだ……! カイルやマシューを絞めて問い質したのだが違ったようだ……! どうやら誰かが広めた者ではなく自然発生したようだ……!」
「そ、そのようですね……」
「だがそんな日々も明日で終わる! 明日あの男は私に告白するに違いない!」
「そ、それはどうでしょうか……。あの人、ちょっとズレてますし……」
メアリが何かつぶやいたが、よく聞こえなかったので無視する。
こうして私は勝負下着を新調した。
見てろよ! 明日は大勝負だ!
****************************
「裏庭に生け垣を作っていいか? 夏に向けてグリーンカーテンを作りたいんだ」
「……」
「瓜系の野菜を植えて、グリーンカーテンを作りたいんだ。家の壁に陽が当たると暑いし壁も劣化するからな。陽も避けられるし、野菜も取れる。一石二鳥だ」
「……別に、構わんが」
「ならよかった。明日には作り始めたかったからな。じゃ、お休み」
そう言って男はさっさと2階へと眠りに行った。
私はその首根っこを掴み「するぞ」と寝室に引きずり込みたいのを必死で我慢した。
もう! いつになったら私に春は訪れるのだ!




