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バインドスキルで生き抜くファンタジー世界生活  作者: アブラゼミ
番外編

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203/210

番外編「ギルドの受付嬢ですが残業はないので鈍感男にアタックしようと思います②」

「ねえユイトさん、王都にはいつ行くの?」

「王都? クリス、何の話だ?」

「魔王退治に行く前にボクと約束したでしょ! いつか2人で王都に行くって!」

「ああ、そういえば……」

「行ーこーうーよ-。行ーきーたーい。ユイトさんの奢りで王都ー」

「俺の奢りかよ。……まあ別に、構わねえけどよ」


 そんなこんなで、ボクとユイトさんで王都に行く事になった。

前回の反省からちゃんとセイラさん達には話を通している。

ついて来ようとするレベッカさんを「今回はボクの番だから!」と説得するのは、骨が折れたけど……




****************************




「わー! これが王都かー! レイフォード領とは大違いだねー!」

「オイはしゃぐなクリス。田舎者だってバレるぞ」


 たくさんの人と店で賑わう王都で、ボクはユイトさんに注意され口を押さえる。

でも誰も気にしてないようだ。周りが騒がしいからだろうか。

どういう訳だか検問所を顔パスでスルーし、馬車で送られるというVIP待遇を受けたのもあって、ボクは興奮を抑えられないでいた。


「見てユイトさん! 屋台がたくさんあるよ! 今日お祭りなのかな?」

「王都はいつ来てもこんな感じだよ」

「見てユイトさん! ポンポンナッツ売ってるよ! こっちでもポンポンナッツって採れるのかな?」

「採れるんじゃないか?」

「見てユイトさん! 『ぬるぬる天国』だってさ! どんな天国なんだろうね!」

「……どんな天国なんだろうな。ホラホラ、あっち行くぞ」


 ユイトさんに手を引かれ、近くのお店に入る。

おしゃれな服のお店だ。お店の人はユイトさんの事を覚えていたらしく愛想よく挨拶してきた。


「ユイトさん? ここ来た事あるの?」

「ああ、前にセイラの誕生日プレゼントを買わされた時にな」

「ふーん……」


 そういえば4月はセイラさんのお誕生日だった。

セイラさんは何やらソワソワしてたけど、肩透かしに終わったらしい。

きっと告白されるのを待ってたんだろうなあ……

そんな行き遅れ女騎士さんの話は置いといて、今はボクの話だ。

ユイトさんは、ボクに似合いそうな服を店員さんに選んでもらう気らしい。


「お客様はスタイルがよろしいですし……こちらなどいかがでしょうか?」


 店員さんは黄色いミニスカートのワンピースを持って着た。

大きめのボタンとリボンのすごくカワイイ奴だ。すごくカワイイ奴なんだけど……


「あの、できれば足があまり出ない服の方が……」


 ボクの足には、まだアスミ様に治してもらってないから傷痕があるのであまり足は露出したくない。

ボクの様子を見て何かを察したらしい店員さんが思案気な表情になる。

そして店の奥から何かを、いやベージュのストッキングを取ってきた。


「お客様。こちらのストッキングと合わせられてみてはいかがでしょうか?」

「え?」

「ストッキングを履いた上に、こちらの服を着るのです。いかがでしょう?」

「いいんじゃないか? クリス、試着してみろよ」

「う、うん」


 ユイトさんに勧められボクはストッキングとワンピースを手に試着室に入る。

服を脱ぐと下着姿の自分が鏡に映る。カワイイの着てきたけど、出番ないだろうなあ……

ストッキングを履き、ワンピースを着る。うう、ミニスカートなんて久しぶりに着るから緊張するよ……


「ど、どうかな……?」


 期待3割、不安7割くらいで試着室から出る。

すると店員さんとユイトさんが目を見開いた。


「お客様! お似合いでございます!」

「ああ、よく似合ってるな」

「そ、そう?」


 店員さんはお世辞だと思うけど、ユイトさんは本当に褒めているのだろう。

ボクのワンピース姿をウンウン頷きながら見ている。

……ただこれ、異性としてっていうよりまるで親戚の子を見てる感じなんだよなあ。

しかし自分で言うのもなんだけど、可愛いしよく似合ってると思う。

ボクは、足がきれいらしいからね。

ただお値段がすごいんだけど……


「これを買おう。クリス、いいな」

「え? いいの? すごいお値段だけど……」

「問題ない。一括で」

「かしこまりました」


 十万マニー近くするワンピースを、事もなくブラックカードでお買い上げするユイトさん。

この人、金銭感覚バグってない?

まあ魔王退治の懸賞金で大金持ちになってるからね……。書いてる本も売れてるし……


「せっかくだからそのまま着て行くか?」

「う、ううん。 汚したくないし元の服に着替えてくるよ」

「そうか。じゃあ待ってる」


 ユイトさんが、何故か不自然に目を逸らす。

あれ? なんか意識されてる?

ボクは何だか恥ずかしくなって、試着室に服を着替えに向かった。

ミニスカートも、たまにはいいかもしれない。




****************************




「さて、次はどこに行こうか」

「そろそろお昼時だしご飯にしない? もちろんユイトさんの奢りで!」

「奢りかよ。まあ別にいいけどよ」


 ユイトさんが、どの店に入ろうか辺りを見回し出す。


「オーイ! ユイトさーん!!!」


 と、にぎやかな声が後ろからかけられた。

振り返ると、手を振るフードを被った小柄な美少女と、背が高いイケメンが立っていた。

あれ? この美少女とイケメンどこかで見た事ある気が……


「なんだ、ミソラ様とクロカゲじゃないか」

「えっ!? ミソラ様とクロカゲ様!?」


 この国にいる人間なら誰もが知っている第三王女ミソラ様とその付き人にして婚約者のクロカゲ様のコンビのご登場に、ボクは驚く。

一瞬騒ぎになるんじゃと思ったけど、ミソラ様がお顔を隠してるのと、周りは騒がしいからか誰もミソラ様とクロカゲ様に気づいていない。よく分かんないけど、多分何かのマジックアイテムの効果だろう。


「お久しぶりですね! こんな所でお会いできると思いませんでした!」

「それはこっちのセリフだぜ。まさかまた城を抜け出したのか?」

「そのまさかだ。今夜はお仕置きだぞ、ミソラ様」

「お仕置きは勘弁してくださいクロカゲさん!」


 王族とその付き人相手に普通にしゃべってるユイトさん。

この人、金銭感覚もそうだけど庶民感覚もバグっちゃってるよ……。王族と顔見知りなのは知ってたけど……。

 ミソラ様の、大きくてクリっとした目がボクと合う。


「ユイトさん、こちらの方はどなたですか?」

「レイフォード領の冒険者ギルドで受付嬢をしてるクリスだよ。王都に連れてって欲しいっていうから連れてきたんだ」

「は、初めましてミソラ様! クリス・クリストフです! 冒険者ギルドで受付嬢をしています!」

「こちらこそ初めまして! スタイルがよくて可愛らしい御方ですね! ユイトさんとお似合いです!」

「えっ!?」


 いきなりものすごい事を言われて、ボクは天にも昇る気持ちになる。

王女様にお似合いって言われちゃった! これはもうユイトさんはボクと結婚するしかないよ!

しかしクロカゲ様がミソラ様の頭を押さえた後、ボクとユイトさんに向かってこう言った。


「スマナイ。ミソラ様の目は節穴で有名なんだ。気にしないでくれ」


ちょっ!? 何言ってるのさこの人!

ちょっと背が高くて足が長くてイケメンだからって調子に乗らないでくれないかな!

それにそれを言うならクロカゲ様とミソラ様の方こそ凸凹コンビで……いや、お似合いだこの2人。身長差すごいけど不思議とお似合いに見える。まるで長年連れ添っている夫婦のようなピッタリ感がある。


「ユイトさんとクリスさんは今日はどうされたんですか?」

「デートです!」

「違う。王都に連れて行くって約束したから連れてきただけだ」

「ええと、どっちですか?」


 ミソラ様が混乱したようにムムムっと形のいい眉を寄せる。

そのミソラ様の肩にクロカゲ様が手をポンと置いた。


「どっちでもいいだろう。それよりちょうど昼飯時だし一緒に食事でもどうだ?」

「いいですね! ユイトさん! クリスさん! ご一緒しましょう! 私が奢ります!」

「今日は財布をちゃんと持ってきてるんだな」


 なんだかボク抜きで話を進めちゃうユイトさん達。ていうか王族と自然に会話できてるってすごすぎじゃない? ミソラ様が王族とは思えないくらいフランクな御方とはいえ……


「それでは焼肉に行きましょう! 最近お気に入りのお店を見つけたのです!」

「相変わらず焼肉好きだな。まあ、構わんが」

「クリス、焼肉でいいか?」

「う、うん……」


 こうしてボク達は第三王女様とその付き人のクロカゲ様と焼肉を食べに行った。

2人でおしゃれなデートにするはずだったのに、どうしてこうなるのさ! 楽しかったけど!!!

・『ぬるぬる天国』の感想

 ユイト・カイル・マシュー「ぬるぬる天国だった」

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