32
いつもは派手の母の影になりがちだけど、やっぱりウチの大黒柱は父だ。
父の仕事部屋の前に来て、深呼吸を一つ。
そして扉をノックする。
「父さん、入っても良い?」
「花菜か。大丈夫だよ」
わたしが部屋に入ると、父はメガネをかけ、資料を見ながらパソコンの前にいた。
「今、何の作業してたの?」
「母さんの料理の新作レシピの紹介だよ。秋だからね。いろいろ新作を思い付いて、楽しいらしい」
そう語る父の顔は、嬉しそうだ。
「何だか父さんの方が楽しいみたい」
「ん? まあ母さんが好きなことをやって、楽しんでいるのなら、私は嬉しいからな。それよりどうした?」
「うん…。わたしのホームページのアドレス、教えてほしくて」
実は今まで、わたしは自分の作品が掲載されているホームページを、真剣に見たことがなかった。
作品作りに没頭していたこともあり、時々こうして父の部屋に来ては、見に来るぐらいだった。
「良いけど、新作の掲載だったら私がするよ?」
「うっううん、そうじゃなくて…。わたしの作品を買った人の感想とか、改めて読んで見たくてさ」
「そうか。ちょっと待ってなさい」
父はパソコンに向かい、キーボードを打った。
間も無く振り向き、わたしを見た。
「お前のパソコンのメールに、アドレスを転送しといたから」
「ありがと、父さん」
「ああ。…ところで花菜」
「うん?」
「進路、もしかして悩んでいるのか?」
「えっ…? あっ、おねぇから聞いた?」




