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九話 清濁病呑

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 来栖の事務所を出ると、空はすっかり夕刻を超え、夜の帳が降りていた。杭田と出くわした時点で夕方だったので、大分時間が経っている。辺りは帰宅を急ぐ人々が多く見受けられた。もうそんな時刻なのだ。私は先ほどまで居た事務所を見上げる。窓は閉まって、カーテンも閉じられているが、仄かに明かりが点いているのが解る。見送ってくれないのかなと、まるで乙女のような思考をしてしまった私だが、それは恋慕というより犬が飼い主に懐く感情に近いものだった。好いているというより、懐いている。

 通りの方からは様々な靴音が響いていた。リズムを刻むように奏でる足音が、私の世界を色なき色で彩っていく。

 夜は深くなろうとその身を落とし、世界は輝こうとその姿を着飾る。

 誰もが暗い夜道を見通す為に、己の為に、世界に変革をもたらそうとしていた。

 なんて、少し洒落っ気のある表現をしたら、来栖なんかはしかめっ面を浮かべそうだなと思いながら、明日は学校があるので、寄り道せずに帰るか、それとも何処か夕飯を買って帰ろうかと考えながら事務所から視線を映したところに――いた。

 人影が、人の姿が、あった。通りであり道であり、世界であり外であるこの場所に人が存在するのはまったく問題がないのだけれど。だけれど、も。

 問題なのは、それが問題と思える、想ってしまう人物だということ。

 いるはずのない人影。

 見知った人影が、そこにはいた。

「あれ、岬?」

「こんばんー」

 声をかけると、不思議な挨拶を返してきた岬。何故こんなところにいるのか。来栖の事務所は袋小路だ。通り道としては使えず、それに商店街とは違って薄暗く、女の子が入り込むには勇気がいる場所だ。そもそも私と別れて帰宅したはずの岬がここにいるのが何より謎だった。

「どうしたのこんなところで? 帰ったんじゃなかったの?」

「んー、みゃーちゃん、元気になったー?」

 質問を無視し、岬はとことこと私の顔を伺うように首を下げながら、傾げながら近づいてくる。腰に両手を回し、腰を曲げながら近づく様は、お年寄りのようにも見えた。

 それはともかく、やはり昼間は気を使わせてしまっていたようだ。空元気で誤魔化せたと思っていたが、私の人差し指に集う唯一の友人を誤魔化すには至らなかったか。でも、そんな私の機微に気づいてくれたことが嬉しくもあり、私は質問を無視されたことなど忘れて、岬に謝罪をする。

「ごめんね、岬。気を使わせちゃったみたい。もう大丈夫だから、安心して」

 両手を合わせてごめんと言ってみたが、岬はいつものニコニコとした表情を浮かべず、ただ、伺うように、探るように、私を下から見上げていた。

 不審というより、真意を確かめる岬の行動に違和感を覚えながらも、夕飯は岬と一緒にどこかお店に入るのもいいかもしれないと考えてみる。それはとても、わりかしかなり、良い案だと思った。今は誰かと一緒に居たい気分なのだ。それが心許す岬となれば、これ以上に適任はいない。さっそく尋ねようとするのだが、私の言葉は、声は、岬によって遮られる。

「……なんだか、みゃーちゃんらしくないね」

「えっ?」

「すっごく明るくて、とっても親しみやすいね」

 明るくて、親しみやすい。私とは無縁だったモノ。

 逆に岬は、いつもより元気がない口調だったが、私はそんなことを言われた事実に舞い上がり、嬉しくなっていた。

 もし私が変わったというのなら、それは来栖のお陰だろう。船波さんのことも、今後についても考えてくれると来栖が言ってくれたので、私は気に病む事柄がなくなり、幾分か気が楽になっていた。

 悩むモノがなくなり、背負うモノがなくなった。

 曲がりなりにも仕事として、人の悩みを解決するという来栖は、やはりプロと言えばいいのか、ちゃんと仕事をこなしてくれていたのだ。……っと待て。綺麗に片付けようと思ったが、そもそもの目的のお金をまだ返してもらっていない事を思い出す。危ない、忘れるところだった。今から徴収しに行くのもいいが、つい数分前に別れたのに今更戻るのはきまりが悪いので、また後日、今後のことを相談する時にでも催促しよう。

 とりあえず私は、岬が明るいと言ってくれたことにお礼を言った。

「そう? ありが」

「なんで?」

 ぐいっと、顔を近づける。私の言葉を遮る。

 ここに来て、少しばかり、不審の感情が心に広がり始める。

 不審、不審に、疑問。疑惑に、わずかな猜疑心。

 岬はいったい、何の話をしているのか。何の話をしたいのか。

 何の感情も読み取れない岬の瞳。無色に近い色を浮かべながら、まるで爬虫類や昆虫のような、無機質に近い不気味な瞳を向けながら、彼女は続ける。

「どうして、そうなっちゃったの?」

「そうなっちゃったって……」

「みゃーちゃんは、そんなんじゃダメだよ」

「み、岬?」

 様子がおかしい。先ほどの明るいと褒めてくれたと思ったのだが、違うのか。

 岬は腰を曲げ、直角と言ってもいいくらいの角度まで腰を曲げ、私の顔を下から見上げる、覗き込む姿勢のまま、口を開く。

 否定を、肯定を。

 現在と過去の、二つを。

「みゃーちゃんは違うでしょ? そんな、他のみんなみたいに慣れ慣れしい、あたしみたいに余所余所しい人間じゃ、ないでしょ?」

「な、何を言ってるの? 岬は余所余所しくなんか」

「どうして?」

 一歩、岬が進む。

 一歩、私が下がる。

 無意識に、私は岬から遠ざかる選択をしてしまう。友人であり、友達であり、私の生涯で唯一と言ってもいいほど、心を許せる存在に対し、私は何故か、距離を取る選択を選んでいた。

 恐怖を、感じた。

 岬の言葉に、岬の態度に、岬の存在に。

 言いようのない、不気味さを感じて。

 そんな私の狼狽を無視して、岬は問い質す。

 その姿は、まるで――

「みゃーちゃんをダメにしたのは、来栖さん?」

「……ダメって、どういうことよ」

 いくら岬でも、そんなことを言われる筋合いはなかった。昔の私を言い表すならば、それは甘受しなければならない幼い自分として享受できたが、今の私は、来栖のお陰で人間らしく成れたのだ。否定される謂れはない。

 若干、声に怒気を含ませながら、厳しいで眼差しを岬に向ける。

「いくら岬でも、怒るよ」

「怒っているのはあたしだよ、みゃーちゃん」

 私の眼光を、岬はまったく意に介さない。その様子に、態度に、怯んでしまう。怒っているのは私なのに、岬も怒っていると言われ、どうしてと、怒りよりも疑問の方が浮かんでくる。

 感情を表に出さず、淡々と言葉を続ける岬。

 その様子は怒っていると言われても、いや、確かに無表情で問い詰めるように言葉を重ねる岬は、怒っていると言われれば怒っているのかもしれない。だが、怒っている理由が解らない。否定される理由が解らない。どうして岬は、私が求めた姿を、焦がれた姿を、拒絶するんだろう。

 たまらず、私は尋ねる。このままだと、決定的に何かを間違えそうになると感じたのだ。

「怒っているって、どうしてよ」

「どうしてもこうしてもないんだよ、みゃーちゃん。あたしは、嘘もなくて、誰も知らない、独りでいるみゃーちゃんが好き」

 岬が私の頬に手を添える。鳥肌が立つ接触。頬の毛が逆立ち、腕に寒気が奔る。

 気が付けば、背中は壁。路地の一番奥まで後退していた。

 追い詰められている私は、岬の手を払うわけにもいかず、わずかに感じる恐怖を誤魔化して、なるべく明るく、いつも通りに接する。

「な、なに、どうしたの本当に。いつもの岬らしくないよ」

「いつものあたしってなぁに?」

 ぎょるんっ、と、岬の眼球が回る。声にならない悲鳴が、喉から漏れる。何故か、幾何学的みたいだと、そんな感想が浮かんだ。

 岬は人間的とは言い辛い、奇妙を超えた、奇異よりも異様が似合う動作を、言動を繰り返す。

「みゃーちゃんはあたしの何を知っているの? 明るくておバカで我がままで人当たりが良くて誰とでも接して――独り寂しいみゃーちゃんを、温かく迎える、そんな薄っぺらいあたしのこと?」

「あ、あんた……っ」

 カッとなる。独り寂しいなんて、そんな風に私を見ていたのか。惨めな奴と、そんな風に私を見ていたのか。一瞬で血が沸騰し、頭に登る。けれど、岬は一切私を気にせず、気にすることなく、ぎこちない生き物のような動きで、近づいてきた。

「ダメだよ、みゃーちゃん」

 岬の顔が、一気に近づく。あと数センチでも近づけば、唇が接触してしまう距離まで詰められ、恥ずかしい話だが、私は抵抗も拒絶することもできずに、膝が笑ってしまうのを何とか抑えるので精一杯だった。怒鳴ることも、背けることも、引き剥がすこともできずに。私はただ、叱られた子供のように、怯えることしかできない。

 ゆっくりと、顔に遅れて身体も近づき始める岬。まるで抱擁でもする体勢に移行しながらも、岬の眼球は私の瞳を見据え、金縛りでもあったかのように、私の存在を拘束し束縛した。

 岬は見上げていた。そして、見定めていた。そして、見下げていた。

 私を見上げながら見定めて、見下げてしまったのだ。今の私に、落胆しながら。岬は失望を隠すことなく、異様さを押しだし、接してきた。

「みゃーちゃんみゃーちゃんみゃーちゃん」

「ひっ……!」

 名前を連呼する様が狂人に見え、狂気にしか感じられず、思わず悲鳴が漏れる。しかし、岬はそんな私に構わず、どんな私にも、どんな状況にも構わずに、思いのたけをぶつけてきた。

「ダメなんだよ、みゃーちゃん。そんなのはみゃーちゃんじゃないんだよ、みゃーちゃん。嘘ばっかりで、愛想笑いばっかりで、影で悪口を言うみんなみたいな、どこにでも居ていつでも居る、そんな人間になっちゃダメなんだよ? みゃーちゃんはダメなの」

 ぎょろり、と、見開かれる眼球が私を捕える。白と黒の境が曖昧な、大きな黒い瞳が、私を射抜いている。それは、今まで見たこともないモノ。初めて見る、異質さな感情。

 来栖の薄気味悪さとも違い、杭田の不躾さとも違う、異色の不気味さ。

 粘りつくタールのような、ドロドロした、粘着質を兼ね備えた感情を岬は発していた。

 これが赤の他人ならば、一発殴ってそのまま逃走でもするのだけれど、相手が唯一の友人とも言える岬では、そんなこともできない。顔見知りだからこそ、出来ない。傷つけるなんて真似は、絶対にしたくないと思った。

 ……いや、違う。そんなんじゃ、そんなに勇敢で前向きな言い訳なんかじゃ、ない。私は、例え岬じゃなかったとしても、そんな大それた、勇気ある行動はとれない。誰かを傷つける、なんてことじゃなくて、何かを実行する、なんて行動が、まず出来ない。

本当の私は、みんなと同じ。臆病で、内気で人見知りな女の子。ただの人間だ。

 こんな風に言い寄られたら、オオカミに怯える子羊のように、震えることしかできない。

「わ、私、は……」

 それでも、まだ心のどこかで岬が悪ふざけをしているんだと思い込もうとしていた。現実を受け入れず、目を背け、逃げ出すことを選択する。こんな岬を見るのは初めてで、今まで優しく、ずっと傍にいてくれた岬が、幽霊のように恐怖を内包しているなんて信じられなかったのだ。

 だから、否定する。

私は岬が今言ったような、他とは違う人間じゃなく、みんなと同じ、ただの子供だと。

「私、は……そんな、こと」

「来栖さんに何を言われたの?」

 相変わらず岬は私の話を聞かず、自らの言葉だけをぶつけてくる。

 私の脚は、膝はもう誤魔化しようがないほど、震えていた。笑っていた。

「杭田さんにはなんて言われたの?」

「そ、それは」

「みゃーちゃんが犯人だって、言われたんでしょ?」

 何故、知っている。それは、岬と別れた後に、たまたま偶然出会っただけなのに。

 岬まで私が犯人だと疑っているのか。焦り、乱れる。

 私は慌てて、否定した。

「そう、だけど……! でも、私は殺してなんかっ!」

「来栖さんに、犯人は違う人だって言われたんでしょ?」

 流れを語るように、見てきたかのように、岬は起こった事を話す。

 まとわりつく寒気。

 漂い出す冷気。

 背筋に冷たい汗を感じながら、岬に呑まれていく。

「だから、安心しちゃったの? みゃーちゃんが犯人じゃないって言ってくれて、船波さんが犯人だって言われて、安心しちゃったの? 昼間のみゃーちゃんは、あんなに綺麗だったのに」

 綺麗、と言った。それまでの私を、これまでの私を、岬はただ純粋に、綺麗、と。

 でもそんなことを気に掛ける余裕もなく、私は岬が何故、そんなことを知っているか疑問が浮かぶだけだった。

「ど、どうして知って……」

「船波さんは犯人じゃないよ」

 衝撃。息を飲み、心臓が止まるほどの衝撃を受ける。

 岬が来栖と杭田の話を知っていることもそうだが、それ以上に、船波さんが犯人じゃないと告げた事実が、岬の発言が、驚愕だった。

「ど、どういうことよ。どうして、そんなことが解るの!」

「不思議に思わなかったの?」

 頭をがっしりと鷲掴みにされ、無理矢理固定される。頭の動きを固定され、身動きできないが、視線を逸らそうと思えばできるが、岬の迫力に私は眼球一つ、指先一つ動かすこともできない。

 拘束であり、束縛。

 私は何もかも、存在を、封じられたのだ。

「ふし……ぎ……?」

 岬の言葉をおうむ返しに繰り返すことしか出来ない。もはや自分で何かを考えるという発想が、私には消え始めていた。理解する、段階を超えてしまい、受け入れる、段階を忘れてしまう。頭が働かない。思考が始まらない。私はゆったりと、岬の言葉を繰り返す。

「不思議に……思う……?」

「解らないの?」

 解らない。

解らないから、聞いている。

「はっきり……言ってよ。どういう意味なの、それは……」

「あたしは言ったよ?」

 岬は、告げる。

 何も終わってないのだと、何も解決していないのだと。

 私に思い知らせるために。

「彼は、死んだ彼は、教室で彼女が欲しいって言ってるって」

「それがどうしたって言うのよ。そんなの、別に何でも」

「なんで?」

 ぐるん、と、岬の首が私の目の前で折れる。

 奇怪な動作。

 怪奇な挙動。

 不気味で怖気の走る、生理的に拒絶してしまう言動を、岬は繰り返す。

 そして、そして。

 決定的な事実を、現実を、突き付けてきた。

「どうして、彼女が欲しい彼が、船波さんの告白を断るの?」

「……!」

 それは僅かな不具合。ほんの些細な差異。

 実像と虚像に生まれた、言われなければ目も向けない、小さな傷。

 岬はそれを、抉ってきた。掘り出し、曝け出し、白日の下に叩きつける。

「おかしいよ、おかしいよね? 船波さんは可愛くないの? 彼女が欲しいって言う男子が、拒むほど可愛くない子なの?」

「そ、そんなの!」

 必死に否定する。

 岬の言葉を否定する。

 何故否定しなければならないのか、どうして拒絶しなければならないのか、理由は何もないけれど、私はこの時、岬の言葉を否定することしか頭になかった。

 そうしなければならないと、脅迫的な観念に捕らわれていた。

「好みの問題かもしれないじゃない!」

「本当に? 恋愛って、好きだから始まるわけじゃないよ? 好きじゃない子から告白されたら、嫌いとも思っていない子から告白されたなら、彼女が欲しいって思う人なら、付き合ってもいいって思うんじゃない?」

「そんなこと……」

 そんなこと、解らない。好きでもない子から告白されて、付き合おうとする人はいる。けれど、私なんかはやっぱりお互いに好きじゃないと恋愛とは呼べないと思うし。

 でも、これはその恋愛以前の問題なのだ。

 好きになるために、好きになるかもしれないなら、お友達から初めてもいい。

 船波さんに対し、私は何も思わなかった。可愛いとか可愛くないとか、そんなことを考える描写はなく、ないということはつまり、それだけ普通の子だったということだ。

 可愛いわけじゃないかもしれない。

 でも、それは可愛くないわけじゃない。

 そして、もし、好みとかそういう問題がなく、単純に彼女が欲しい男子ならば、好みじゃなく知らない子で好きも嫌いも存在しないのならば。

「告白されたら、付き合わなくとも、お友達から始めるにしても、船波さんの告白を拒む理由はないよね?」

 そう、岬が言った。

 その通りで、その通りだ。

 そしてそれがその通りならば、全てが崩れる。

 来栖が言った、船波さんが犯人という根拠が、覆る。

「だったら、来栖さんが考える、告白してふられたから、みんなに認めてもらうために殺したなんて推理、間違ってるよね?」

「な、なんでよ……」

 そう、なんで。

 どうして、だ。

 それは船波さん犯人説が覆るにはまだ推測の段階で、まだまだ言い返せることがあるということ――――ではない。

 そうじゃない。

 それどころではない。

 そんな些細なことではなくて、それ以上に、異常の話。

 私は震える身体を、唇を噛みしめ、問う。

「どうして……」

 怖かった。恐ろしかった。

 岬が、私の知らない人間に見えて、もっと違う、人間に見えなくて。

 怖くて恐ろしくて、胸が痛くて、切なくて。

 悲しくて、悔しくて。

 日常と呼ばれていた現実が、崩れ去っていく音を聞きながら、私は聞いた。

「どうして、岬が来栖の推理を、知ってるのよ……」

 それはたった今話した内容。

 来栖が語って聞かせてくれた、ほんの数分前の会話。

 まるで見て聞いてきたかのように言う岬が、知っているにはおかしい話。

 私の問いに、疑問に、岬はそこでも返す言葉は私が望むものではなかった。

「終わってないんだよ」

 そっと、耳に息を吹きかけられる近さで、岬が囁く。

 悪魔の如き絶望を。

 死者に比類する絶望を。

「まだみゃーちゃんが犯人じゃないっていう、証拠はないんだよ」

 何処からか悲鳴が聞こえた気がする。

 私かもしれないし、震える喉と身体を考えるなら、私かもしれない。

 けれど、私には解らなかった。

 目の前が真っ暗になっていく。

 視界から世界が消えていく。

 目の前には、岬の顔があった。

「ほら、みゃーちゃんは何も変わってない、みゃーちゃんのままだよ?」

 

      φ      φ


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