1話 異世界?転生
強烈な光が、眼球を貫く。
思わず瞼を閉じるが、まだ眩しい。
全身を包んでいた温い水が消える。
冷たい空気が肌を刺す。
苦しい。
反射的に口を開く。
「おぎゃあああっ!」
甲高い声が、鼓膜を破りそうなに程に響く。
うるさい。
けど、この産声は俺の喉から出ている気がする。
吐いて、大きく吸う。
ただひたすらに空気を肺に取り込む。
久々の空気はあまりにも美味しい。
すこしずつ息が落ち着いてくる。
視界はまだ落ち着かない。白飛びし過ぎて何も見えない。
とりあえず、無事に生まれる事が出来たみたいだ。
あぁ。安心したら、急に眠気が、、
俺は、終ぞ新世界の色を一度も拝めずに、眠りに落ちた。
***
「~~~~。」
話し声が聞こえる。
「~~~。~~~~~。」
なんて言ってるんだ?
「~~~~~~。」
聞こえないって!
「あー!!」
思わず口から声が飛び出た。
ふむ。声が出せるなら言葉だって発音できるはずだ。
「あーあうあー。」
ど、どうだ。こんにちは。って言ったつもりなんだけど。
「~~!~~、~~~~~。」
何やら反応はしてくれているみたいだが、まともに聞こえない。
「チル。チルチル。」
おお。今のはスズメの鳴き声かな。
スズメがいる、、ということはここは異世界ではないのか?
しかし、これだけは確実だ。
転生。
俺の好きな漫画やアニメで、散々見てきた現象。
今俺は、赤子の体に宿っている。つまり転移では無く転生だ。
転生なら異世界に飛ばされるパターンが多いが、同じ世界での転生だって十分にあり得る。
そもそも、スズメが異世界には存在しないものとして考えているけど実際どうなんだ?
でも、スズメが異世界ファンタジーに出てくるイメージは無い。
うん。だから、きっとここは日本のどこかの病院だな。
脳にこれ以上負荷を与えないために、いったん納得させる。
気づけば眩しさに慣れてきた目で、周りを見渡す。
どうも人に囲まれているようだ。
「~~~。~~~、~~~~。」
さっきからなんて言っているのか分かんないんだよ。
まだ耳は本調子じゃないのだろう。
「チル。チル。」
スズメの声しか聞こえない。
いや待てよ。スズメの声はこんなに鮮明に聞こえるのに、なんで人の声は聞き取れないんだ?
目を閉じて、耳に神経を集中させる。
「Həz əwdekənd~~yə Msjəst。」
違う。これ、英語だ。
じゃあなんだ。ここは海外なのか?
「De dfəe~~~~。」
駄目だ。気を抜くとすぐに、意味を感じられない音の連なりにしか聞こえない。
しかし、聞いて感じた。今聞こえた言語は英語とは何か違う気がする。
なんやかんや言って俺も高2だ。英語なら最低限は分かるはずだ。
何語なんだろう。フランス語やドイツ語とかなら聞いたことはあるが、そのどれとも違うように感じる。
「~~~~。~~~~!」
完全に気の抜けてしまった俺の耳には、周りの人の声はもう意味のある言葉には聞こえない。
参ったなぁ、、、日本語通じないとなるとかなり困るぞ、、、
耳が使い物にならないなら、目だ。視界から情報を得よう。
耳に向けていた意識を、目へと集中させる。
やはり、周りには人がいる。
ぼやけた人影は、三人ほどだろうか。
目を凝らし、滲む視界をどうにか焦点へ導こうとする。
人の輪郭がはっきりしてきて服装が分かる。
質素な格好だ。
全員、クリーム色のポンチョのような上着をまとい、髪をすっぽり覆う布の帽子をかぶっている。
、、、あれだ。給食のおばちゃんを、もう少し古風にしたような格好だ。
病院じゃないのか?少なくともナース服には見えない。
「~~~。」
頭上から声が聞こえていることに気づいた。
首を上方に傾けようとする。
首が座っていないのか、首を傾ける動作さえままならない。
そこには、暖かな陽光を思わせる金髪の美女がいた。顔はぼやけてはっきりとは見えていないが、何故か美女だと確信を持てる。
髪は片側でゆるくまとめられている。ルーズサイドテールというやつだろうか。
彼女は、こちらを優しく見つめていた。
女神だな。
今の混沌とした境遇がどうでもよくなるほどの美貌。
見惚れている俺に、女神が話しかけてくる。
「~~~。~~~。」
クッソ。何も聞き取れない。せっかくのコミュニケーションチャンスなのに。
とりあえず無言は良くない。何か返さなければ。
「あーあーあー。」
そうだったそうだった。今ろくに発音できないんだった。
ん?待てよ?これ位置関係的にこの女神が俺の母親だったりするのか?
ひとまず親ガチャは当たりだな。
感じたことない多幸感に包まれていると、
「~~~。~~~~~?~~~~~~~。」
給食のおばちゃんズのうちの一人が口を開く。
いやよく見れば三人とも若いな。おばちゃんは失礼だった。
給食お姉さんズに改名だな。
「~~~。」
おばちゃんズ改め、お姉さんズの問いかけに我が女神が応じたようだ。
すると、女神が胸元に手をかけ乳房を、、、
まずい、これは、、、、
そこで俺は気を失った。
その先は、童貞高2には刺激の強すぎる気配がした。
「チヨチヨチヨ」
薄れていく意識の中、やはりスズメの声だけは鮮明に聞こえていた。




