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赤い服を着た悪魔の贈り物  作者: さめもらきん


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8/12

夢へと向かう特別なソリ

翌朝、ノエルは自然と早くに目が覚めた。

慣れない環境と、これから起こる事に対しての緊張のせいだろうか。

カーテンを開けて、外の景色を眺めた。

昨日と変わらず、白い街並みがキラキラとしている。


「おはよう。眠れた?」

「おはよう。うん、よく眠れたよ。ありがとう。」

「よかった。昨日はたくさんノエルと話ができて嬉しかったな!悪魔だしすっかり別人になっていてもおかしくなかったのに、そのまんまで安心した!」

ニコの素直なその言葉に、悪魔として馴染むことができなかったノエルは苦笑いをした。


昨日ニコから聞いた天使のイメージは、積極的だったり大人しかったりといった個人差はあれど全員が明るく優しい、疑う事を知らない純粋な気持ちを持っているという事だった。

ニコも明るくて優しいけれど、疑問に思う事は多いようで、ノエルの話を聞いている時も、なんで?どうして?と色々と知りたがった。

自分と同じで、ニコも周りに馴染めずに苦労してきたんだろうなと感じていた。


「まだ時間があるし、昨日のパンも残ってるから食べていこうか。これ、セボリーさんオススメのバタースコッチだよ。」


昨夜の続きを楽しむかのように2人は話し続けながら、ご馳走してもらった残りのパンを食べた。

オススメと言って出されたバタースコッチは、長方形の食パンにバターとシュガーをたっぷり塗って焼いた、シンプルだけれど濃厚な味わいで、ノエルはすぐにこれを気に入った。


ニコは元々少ない部屋の荷物をバッグに詰め込んで、部屋を空っぽにした。

これでサンタクロースの街に行く準備はできた。

後は、無事にソリに乗って向かうだけ。

「それじゃあ、行こう。」と、ノエルの口から自然と言葉が出ていた。



噴水は街の中心に、シンボルとして堂々と存在している。

大きな噴水から透き通った水が高く舞い上がり、光を受けてキラキラと輝きを放つ。

街中に流れているハープの音色と相まって、ノエルには、より一層ここが神秘的な場所に見えていた。


噴水の周りには既に何人かの天使が集まっていた。

天使たちは皆、白い羽を風に揺らしながら期待に目を輝かせている。

ニコも何人か知っている天使がいたようで、簡単な挨拶をしている。

中には、見送りに来ているだけの天使もいるようだ。

ノエルは自分の背中になるべく自然に目を向け、周りと同じ白い羽であることを確認した。


しばらく待っていると、遠くから微かに鈴の音が聞こえてきた。

音の鳴る方へ意識を向けていると、その音の主が現れた。


「わあ、本物だ!」

「すごい大きいね。」

周りにいる天使たちは口々に感想を述べた。


鈴の音を響かせながら、何匹ものトナカイたちが、大きく真っ赤なソリを引いてこちらに向かって空中を走っている。

ノエルとニコが幼い頃、何度も何度も絵本で見た光景が、今、2人の目の前にある。


「すごい、本物…」


ニコは小さく呟いたが、ノエルはただ見つめる事しかできない。

悪魔としての運命が決まった時から、こんな光景を目にする事は諦めていたどころか、想像もしていなかった。

それが今、天使の中に紛れ込んで、目の前にトナカイと自分たちを乗せる赤いソリがある。

ニコと再会したその日から覚悟を決めていたはずだったが、思わず足がすくんだ。


トナカイが噴水前に降り立ち、天使たちを何人でも乗せられるほどの大きなソリが止まった。

真っ赤な屋根付きのソリには、モミの木やオーナメントで飾られていて、絵本で見たクリスマスのイメージそのものだった。


中からジョーイという天使が、挨拶をしながら降りてきた。

「サンタクロース志望のみなさん、これから街に行くので志望者の方はソリに乗り込んでください。ここに戻ってくるには、この専用ソリしか使えないので忘れ物が無いように十分気を付けてくださいね。20分後には出発しますよ。」


見送りがある天使たちはギリギリまで仲間との会話を楽しみながら別れを告げ、次々とソリに乗り込んでいった。


「ノエル、私たちも行こう。」

ニコの声で、ノエルは我に返った。


「ありがとう、ニコ。こんな事になるなんて想像もしていなかったよ。サンタクロースになれるなんて、本当に不思議な気持ちだよ。」

「私も絵本で見ていたトナカイが目の前にいるなんて信じられない!ノエルのおかげだよ!」

そう言って2人はソリに乗り込み、シートに座った。


「それじゃあ、出発するよ!」

と、ジョーイが声をかけ、サンタクロース志望の天使と悪魔を乗せたソリは、再び鈴の音を鳴らしながらサンタクロースたちが住む街へと向かう。

出発までは気が気では無かったが、特に確認も無くソリは無事に出発した。

あっという間に空中に浮かび、街に残った天使たちの姿は見えなくなった。


ソリの中では、天使たちが隣同士で自己紹介をしたり、これからの事を語り合ったりと期待に熱がこもっていた。

ノエルはそれを見て、天使たちの仕草や言動の癖などを注意深く観察した。

これからほとんど接点の無かった天使たちの中で生活をする。

いくら天使が疑わない性格だとは言え、何がきっかけで悪魔とバレるか分からないし、少しでも馴染めるようにしておいた方が良いと考えたのだ。


「ノエル!顔が険しいよ。これから新しい生活がスタートするんだからもっと楽しまないと。」

そう言われて、天使たちはみんな笑顔で期待に満ちた顔をしていることにノエルは気付いた。

あんなにじっと観察をしていたのに一番大事なことを見落としていたのかと、急に肩の力が抜け、ふかふかのシートに深くもたれかかった。


天使と悪魔の様々な期待を乗せて、ソリはサンタクロースの街へ近づいていた。


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