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赤い服を着た悪魔の贈り物  作者: さめもらきん


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6/12

約束の日

8か月は、驚くほどあっという間に過ぎた。


ノエルは仕事をこなしながら、約束の日を待ち続けた。

今までと違い希望ができた事で、毎日胸が高鳴っていた。今までにない感覚だった。

惰性で生きていた日々に色が着いたように、新鮮な毎日を過ごすことができた。


ニコからの連絡はほとんど無かったが、それで良かった。

天使はともかくとしても、悪魔は詮索好きだし何か勘付かれたら面倒な事が起きる。

余計な痕跡は残さない方が良いと考えていた。


必要な白い染料の調達は、思ったより簡単だった。

人間界のドラッグストアや、ペイント売り場の棚に並んだ染料をいくつか拝借する。

悪魔にとってこの程度の盗みは何でもないが、ノエルには少し罪悪感があった。

だけど店員も客も、人間には天使や悪魔の姿が見えないから、ノエルの姿には気付かない事が救いだった。


仕事のある日に毎回少しずつバッグに詰め込んできたから、既に数えきれないほど大量に入手していた。

天使も悪魔も日常的に使っているバッグは、入れた物が小さくなってくれるから、いくらでも荷物を持ち運ぶことができる。

一部の天使と悪魔が持っている特殊能力一つで、サンタクロースの袋にたくさんプレゼントを入れられるのも、実はこの能力のおかげである。


明日の約束の日を前に、染料がたくさん入ったバッグを見つめて本当にサンタクロースになる事が可能なのかという不安と、この計画を真面目に実行している自分に不思議な気持ちになった。

もしかしたら、明日、ニコと会えないなんてことは?というネガティブな気持ちにもなっていた。


お店を出てふと周りを見ると、公園があった。

子どもたちが走り回って遊んでいる。

転んで泥だらけになりながら笑っている子、ブランコを漕ぎながら空を見上げている子、友達と何かを言い合いながら楽しそうにしている子。

みんな無邪気な顔をして、純粋な気持ちでその瞬間を楽しんでいるように見えた。


人間界で仕事を始め、何人もの人間の大人たちを見てきたけれど、こんな風に純粋に素直な気持ちで笑っている人間をノエルは見たことが無かった。

みんな常に何かに迷い、誘惑に負け、そして後悔している。

だから人間を見ても何の感情も起きなかった。


でもこの子たちは今この瞬間だけを全力で生きているみたいに、ただ笑っていた。

サンタクロースになってこの子たちに、プレゼントを届けたい。

胸の奥で何かが動き、ずっと諦めていたはずの夢が、急に輪郭を持ち始めたような感覚だった。

絵本のサンタクロースが、子どもたちに笑顔でプレゼントを配っている場面が、突然頭に浮かんだ。

やっぱりサンタクロースってかっこいい。僕もあれになるんだ。


ノエルはバッグを持ち直して、一人、強い覚悟を決めた。もう迷いはない。



約束の日、ノエルとニコは、事前に決めていた場所で再会した。

再び会えた事に喜びを伝えながら、ノエルがバッグから大量の染料を取り出すと、ニコは目を丸くした。

「思ったより簡単だったよ。」とノエルは得意げに笑った。


誰もいないビルの屋上で、2人は作業を始めた。

人間からは見えないけれど、何となく人のいないところを選んだ。


ニコが、ノエルの黒い羽に染料を丁寧に塗り込んでいく。

「痛くない?」

「痛くはないけど、くすぐったい。」

「我慢して。」

2人は笑いあった。


「ねえ、ノエル。いつかここにプレゼントを配りに来るんだね。」

夢を語るというより、もう決まった事を確認するような口調でニコは言った。

ノエルは黙って、空を見ていた。

昨日公園で見た子どもたちの顔が、頭をよぎった。

あの笑顔にプレゼントを届ける。それがサンタクロースの仕事で自分のやる事だと、

昨日決意を固めた。


お互い、話す事はたくさんあるはずなのに、この時は無言で作業に専念していた。


しばらくしてからニコが手を止め、「できた!見て。」と言った。

ノエルはゆっくりと自分の羽を見た。

さっきまで真っ黒だった羽が、白く染まっていた。

ビルの屋上のドアガラスに映る自分の羽を見て、天使の羽に見える事に感動した。


「すごい、本当に白くなった。天使みたいに見える!」

「そうでしょ。これでノエルも天使の仲間入りよ!」

ニコは満足そうに笑った。


「あとはルクスの門を通れるかが心配だね。サンタクロースの街に入ってからもバレないかが心配だ…。」

「大丈夫よ、きっと。」

「きっと、って。」

「信じるしかないでしょ。」


2人は顔を見合わせて、大きな声で笑った。


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