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赤い服を着た悪魔の贈り物  作者: さめもらきん


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4/12

天使の覚悟

話を始める前にニコは一言「あの日は私のせいで本当にごめんね。」と言った。


そもそも、どうしてノエルだけ悪魔になってしまったのか、当時、確証は無かったが、授業で聞いた ”はじまりの木は絶対に傷つけてはいけない” という言葉で2人とも確信していた。


2人でおもちゃの武器を使って遊んでいた時に、ニコが木にぶつかりそうになった。

それを庇おうと、ノエルが木にぶつかってしまい持っていたおもちゃの武器で、はじまりの木を、ほんの少しだけ傷付けてしまったのだ。

”たったそれだけ”の事だった。



そしてニコは、あの日から三日三晩泣き続けた。

ノエルと離れてしまった事も辛かったが、自分の事を庇ったせいでノエルに黒い羽が生えてしまったであろう現実が、どうしても受け入れられなかった。


「大丈夫よ、その子は悪魔の素質があったというだけなんだから。」

「私たちと一緒に遊んで、たくさん勉強しよう!」

天使たちが生活するルミナホールで、先生たちや周りの子たちに優しい声を掛けてもらっても、ニコの心には一切響かなかった。


ノエルはあの時、ニコを助けようとしただけだった。

そんな心の持ち主なら絶対に天使になるはずだったのに、悪魔になるべきだったのは自分の方だったんじゃないか。

どうしてあれだけの事で、ノエルが悪魔にならないといけなかったのか。

そう考えると、どんなに日が経っても後悔と自責の念が襲ってきた。


天使は本来、ネガティブな感情を持たない。

誰かを悪く思う事はしないから怒らないし、何より、誰かを疑うという事を知らない。

常にポジティブで優しく、相手を思いやる気持ちを持っているのが天使だ。

それなのにニコの中には、怒りに似た感情があった。

悲しみとも違う、じりじりとした、行き場のない気持ち。

それが何なのか分からないまま、ルミナホールでの日々をただ惰性で過ごした。


ルミナホールでの授業はほとんど聞き流した。

周りの天使たちがキラキラと眩しくて、自分だけが違う場所にいるような気がしていた。

そんなニコが初めて授業に興味を示したのは、数年経ったある日の授業だった。


「将来的には、天使の囁きを経験した後に他の仕事もありますよ。一番有名なのはサンタクロースですね。」


”サンタクロース”


先生が発したその言葉が、止まっていた何かを動かした。

その先の言葉を聞くために、初めて顔を上げた。


「サンタクロースの街にある会社、イシリアル。ここに入るとサンタクロースとしての仕事ができます。条件は、天使である事だけ。採用試験は無いので毎年決まった日時にルクスの噴水の前でソリを待っていれば、イシリアルに入社することができるそうです。」


「採用試験が無い?」思わず声に出ていた。


先生が驚いたようにニコの方に顔を向けた。

今まで一度も勉強に向き合わず落ち込んでばかりのニコが、目を輝かせてこちらを見ていたからだ。


その日から、ニコは変わった。

ノエルと約束した、2人でサンタクロースになろうという夢。

悪魔のノエルをサンタクロースにする、その為に、なんでもする覚悟を決めた。

今まで聞き流していた授業を一から勉強し直して、利用できるものは利用しようと考えた。

その合間にサンタクロースについての情報も集めたが、不思議な事に授業で先生が話していた内容以外の情報は、一切分からなかった。

誰もサンタクロースの街やイシリアルでの仕事内容を知らないのだ。


一番の問題は、どうすれば悪魔のノエルと連絡が取れるのか、だったが、勉強中に天使の職業一覧を見つけ、オペレーターという仕事がある事を知り、その悩みはすぐに解決した。


天使と悪魔が同じ施設で働く共同業務で、天使の囁き、悪魔の囁きをしている悪魔と天使を管理する業務だ。

天使と悪魔を割り当てる人間を探したり、その人間に付くように指示したり、ノルマの管理と幅広い業務が任されていた。

オペレーターになれば、天使も悪魔も関係なく、管理係として指示が必要な個人に連絡を取る事ができる事が分かった。

「だから今、こうして会う事ができたの」とニコは笑って話した。


オペレーターになるには試験や天使の囁きの実務経験の条件があったが、ニコは先生に必死に頼み込んで協力してもらい、異例の速さで異動させてもらう事ができた。

本当の事は話せないのでオペレーターになりたい理由はもちろん、でたらめだった。


「天使って、本当に疑わないのよ。熱意を見せたら全部信じてくれた。応援までしてくれたよ。」と、ニコは苦笑いをした。


オペレーターになってからは仕事をまじめにこなして、今後ある程度自由が利くように周りの信頼を積み上げながら、ノエルの手がかりを探し続けた。

天使とは思えない悪知恵を使った策略と持ち前の明るさで、目的の為に一人、走り続けてきた。


そして、今、ノエルをようやく見つける事ができた。


「悪魔を天使が呼び出すなんて、普段はあまりない事だけど、なんとか理由を付けて呼び出しに成功したわ。私が積み上げてきた信頼のおかげね。」

「会えて嬉しいよ。本当に、ありがとう。」

話を聞き終わって、ノエルはやっと、それだけ言えた。

ノエルはニコの話を聞いて、自分がノクスで惰性で過ごし続けてきた事が恥ずかしくなり、心から申し訳ないとも思った。

簡単に話してくれたニコだけれど、きっと想像もつかない程大変な事もあったはずだと考えたが、それは口には出さなかった。


少しだけ2人の間に沈黙が流れた。


「それで、サンタクロースになる作戦は?」

先に口を開いたのは、ノエルだった。


「良かった!悪魔になりきっていたらどうしようかと内心ドキドキだったの。作戦、ちゃんと考えてきたよ。」

ニコのその言葉を聞いて、ノエルは笑った。

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