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赤い服を着た悪魔の贈り物  作者: さめもらきん


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3/12

天使と悪魔の再会

ノエルは沈んだ気持ちのまま人間界に降りた。

はじまりの木でニコに会えるのではないかという期待を少しでもした自分に対してと、これから人間を騙すだけの仕事をしなくてはいけない事に対しての嫌悪感だ。

ただ、ノクスから初めて抜け出せた事で、少しだけ自由になれた気がして気持ちが軽くなっていた。


人間界に降りると、そのままターゲットの人間の元に向かった。

それぞれ担当するターゲットの人間は、オペレーターから指示を出されて決まる。

指示をされたら世界各国どこにでも行くのだ。


この日は日本の学生がターゲットだ。

学生の部屋に着くと、参考書を開いたまま飽きたような顔をしている。

勉強中なのにスマートフォンに手を伸ばそうか悩んでいるようだ。

ノエルはすかさず耳元に立った。初めての仕事だ。


「5分くらい大丈夫。スマホの通知、気になるよな?大事な知らせかもしれない。」

人間は少し悩む素振りを見せた後、勢いよくスマホを手に取った。

人間には天使も悪魔も見えないが、囁きだけは聞こえているようだ。


反対側では少し遅れてやってきたペアの天使が、勉強を続けさせるように何か囁いていたが、結果は明らかだった。

ペアの天使がニコなんじゃないかと、一瞬淡い期待もしていたが、シンディと名乗られたことで、ノエルの期待は打ち砕かれた。

そして、こんなくだらない事が俺たちの仕事か、と、ため息をついた。


もう、期待するのはやめる事にした。


ノエルは毎日惰性で仕事を続け、人間界へ行く事も、人間への対応にも慣れてきていたが、とにかく毎日退屈だった。

ペアの天使、シンディは、隣で毎日バタバタと忙しなく動いていた。

さらに独り言も多かった。


「そんな事しちゃダメ!あなたにはこっちの行動の方が素敵よ!」

「ああ、とっても良い選択ね!素晴らしい!」

「きゃっ!痛い、急いでいてぶつかっちゃった。ちゃんと周りを見ないとだめね。」

「ほら、ノエル、一緒に仕事頑張りましょう!」


悪魔にも物怖じしない、天使って全員こんな感じなのか、ニコもこんな風になっているのか、ノエルはそんな想像をして心の中で少し笑い、すぐに落ち込んだ。

期待するのをやめた時に、ニコの事も極力考えないようにと決めたのにも関わらず、ふとした瞬間に自然と思い浮かんでしまうのだ。



ピーピーピー

配られていた端末から、普段は定時以外ほとんど鳴らない通知音が鳴った。


『至急、はじまりの木まで戻る事。』

それは、オペレーターと呼ばれるルクスナッジ、ノクスナッジを管理している部署からの呼び出しだ。


何かやらかした?一応ノルマは達成しているし、ルール違反もしていないはず。

考えを巡らせても思い当たる事は一切なく、焦りだけが募り冷や汗が出てきた。

不安な気持ちを抱えたまま、はじまりの木まで急いで向かう。


モヤモヤとした感情と、実はそこまで大事ではないのかも?という期待の気持ちがぐるぐると交差する中、はじまりの木が見えてきた。

そして、遠目からでも白い羽を持った天使が一人いる事が分かった。


天使からの呼び出し?悪魔のオペレーターじゃないのか。どうして?


近づくにつれ、天使がこちらに満面の笑みを向けていることに気づいた。

大きく羽ばたいていた黒い羽が、止まった。

心臓が痛いくらいに鳴っている。

呼吸の仕方を忘れたみたいに、息が上手く吸えない。


少し大人びたけれど、人懐こさは変わらないその笑顔を、ノエルは知っていた。

10年間、毎日思い出して、ずっと待ち焦がれていた相手だ。


「ノエル、やっと会えたね。待たせてごめんね。」


その声を聞いた瞬間、視界が滲んだ。

言葉を出そうとしたけれど、唇が震えるだけで何も出てこなかった。

ニコは涙を流すノエルを見て、少しだけ目を細めた。


「ノエル、サンタクロースになろう。私たちの夢だよ。」

「どういう事?僕は悪魔だから、サンタクロースにはなれないよ。それよりもニコ、本当にニコなの?まだ信じられない。」

突然の言葉に、ノエルはやっとの思いで答える事が出来た。


「突然だもん、びっくりするよね。もう少しちゃんと再会を喜びたいんだけれど、あまり時間が無くて。話を聞いてくれる?私、覚悟を決めたの。」


混乱するノエルに向かってニコは静かに、でも迷いなく言った。


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