表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
赤い服を着た悪魔の贈り物  作者: さめもらきん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

2/12

なりきれない悪魔

あれから10年が経った。

もうすぐで16歳を迎えるノエルは、悪魔の街ノクスでつまらない日々を過ごしていた。

”ノクターンホール”で他の悪魔たちと生活を共にしているが、10年経っても馴染めずにいる。


ノクターンホールは、人間界の学校や児童施設を参考にして作られた”悪魔の家”と呼べるような場所だ。

天使の街ルクスも、同じような施設がある。

天使も悪魔も、進化を続ける人間界の文化が大好きで、素直に尊敬をしている。

勉強や仕事、ファッション等の様々な概念を、長い年月をかけて人間界から取り入れてきた。

今ではほとんど、人間と変わらない生活をしている。

大きく違うのは、彼らには羽があって、少しだけ特殊な能力が使えて、雲の上で暮らしているという事。


はじまりの木から移ってきた後、16歳になるまでノクターンホールで過ごし、悪魔としての役割や生活を叩き込まれる。

ノエルはこの生活に嫌気が差していた。


「最初は小さな囁きでいい。このくらいならいいか、と思わせて隙をついていくんだ。それを繰り返して人間を悪に引きずり込む。それが悪魔の囁き、悪魔としての最初の仕事だ。これは天使とペアでやるからな。」


先生の授業に、周りの悪魔たちは目を輝かせて聞いていた。

人間が誘惑に駆られるとき、天使と悪魔が目の前に現れて”天使の囁き”と”悪魔の囁き”をするのだ。

これがノクターンホールを卒業したら、全員がやる最初の仕事である事を先生は説明していた。


悪魔の彼らには、悪い事への嫌悪感や躊躇いは一切無い。

人間を騙して悪い事を吹き込んで、悪の道に引きずり込もうとする事を喜び、誇りをもっている。

はじまりの木の前で、心がそう決まったのだから当然の事だった。

だけど、ノエルにはその感覚が分からなかった。最初は抵抗もした。

でもすぐに揉め事は面倒な事だと気付き、結局いつも流れに身を任せるだけだった。

この授業を聞いていても、何も楽しそうだとは思えなかった。



”サンタクロースになる条件は、天使である事”


絵本のサンタクロースに憧れた時から、ニコと一緒にサンタクロースになる事を夢に見ていた。

しかし、黒い羽が生えてきたあの日に、ノエルの夢は終わってしまった。

天使になれなかっただけでなく、ニコとも離れたことで希望も無く、全てを諦めていた。


「ノエル、お前ももうすぐ卒業だろ?人間界、楽しみだよな!」

悪魔の仲間、トーチが隣から声を掛けてきた。

「そうだな。」

気の抜けた返事をした。実際、楽しみでも何でもなかった。

ただ、16歳になればノクターンホールを出て自由になれる事は、唯一の希望だった。



そしてついに16歳になり、ノクターンホールを卒業したノエルは、人間界に降りて悪魔の囁きの仕事をする事となった。

仕事に向かう前に、囁きの仕事を管理しているというオペレーターの担当者から、管理用の専用端末を渡され、はじまりの木の広場から人間界へ向かうように指示されていた。

人間界への行き方は授業でも習うが、ノエルの耳には入っていなかった為ここで初めて、あそこを通るのか、と懐かしい気持ちになっていた。


必要な準備をして、はじまりの木に向かった。

目の前まで来ると、ノエルは思わず足を止めた。

ここで、ニコと一緒に過ごし、絶対にサンタクロースになるんだと、2人で語り合っていた。

あの時の純粋な気持ちや、希望に満ちた心はもう無い。

だけど、ノエルには他の悪魔のような黒い気持ちも無く、ただただ、苛立ちだけが募っている。


「今、ここにニコがいてくれたらな。」

声は誰にも届かず、広場に消えた。

ノエルは少しの期待を胸に、歩みを遅くしてみたけれど、そこにニコが現れることはなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ