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赤い服を着た悪魔の贈り物  作者: さめもらきん


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サンタクロースの住む街

ある程度の片付けを済ませて、寮の入り口に向かう。

イシリアルから入ってきた時とは異なる、街に出る為の出入り口が反対側にある。

他の天使たちも楽しそうな様子で、街へと向かうようだ。


「ニコ、お待たせ。みんなも街に行くみたいだから、お店空いているといいね。」

「そうだね。何があるのかもまだ分からないから、とりあえず探してみよう!楽しみだね!」


2人は街へ出ると、改めてこの街の壮大さに圧倒された。

相変わらずキラキラとしている街並みと、軽快な音楽。

街にある天使たちは皆、笑顔が絶えない。


「入ってきたときも驚いたけど、本当にすごい街だね。細かいところまでクリスマス感があってワクワクする!」

「本当だね。僕も久しぶりにワクワクしてるよ。絵本で憧れてたあの頃の自分たちに教えてあげたいね。」


2人で懐かしみながら、街をしばらく歩いていると様々なお店がある事が分かった。

「カフェもベーカリーも、ドーナツ屋さんもあるね!ワールドレストランもあるし、食べるところはルクスとあんまり変わらないかも。」

「ノクスも大体一緒かな。こんなにキラキラしていないけれど食べるものは一緒だもんね。ご飯はワールドレストランにする?」

「そうだね。食べてから別の場所も見てみよう!」


他のお店よりも大きいワールドレストランは、人間界の世界中の料理を一度に楽しむことができる。

天使も悪魔も、迷ったときにはここに来れば食べたい物が見つかる、みんなにとって定番のレストランだ。

囁きの仕事で世界各地に行く天使と悪魔は、長年の経験で美味しい料理を学んできた。

今では当たり前のようにあるコーヒーやパンも全て、時間をかけて取り入れてきた大切な文化の一つである。


ワールドレストランに入るとお昼時から少し時間がずれているにもかかわらず、満席で入る事ができなかった。


「さっき見た子たちがいる。説明会終わりの子たちでいっぱいなんだね。しばらく空かないと思うからどこか他のお店に行こう。」

「そうだね。タイ料理を食べたい気分になっていたんだけれど、仕方ないか。」

ノエルは、ガパオにしようかなと決めかけていたところなのに、と肩を落とした。


外に出ると1本道を外れたところにお店を見つけた。

こじんまりとしたカフェのようなところで、窓から見る限りでは席が空いているようだ。


「なんだかいい雰囲気のお店だね。ランチもあるみたいだから、ここにしようよ。たっぷりソースのふわふわハンバーグだって。美味しそう!」

お腹が空いているノエルは、ニコの提案にすぐ賛同した。


カランカラン


中に入るとテーブルが5席ほどしかない、外観通りの小さなお店だった。

2人組の天使と、1人の年配の天使がゆったりと過ごしている。


「いらっしゃいませ!こちらにどうぞ。初めて見る顔だね。新人さん?僕はタイラだよ。」


「こんにちは。今日ソリに乗って、ここに来ました!ニコです。とっても良い雰囲気のお店ですね。もうお腹ペコペコです。何がお勧めですか?」


「あはは、元気だね。ご飯ならハンバーグかな。オリジナルのソースをたっぷりかけて、ふわふわで美味しいよ。それから食後には紅茶とデザートかな。ここは紅茶にこだわっているカフェだからね。」


「そうしたら、ハンバーグください!デザートと紅茶はまた後にしますね。楽しみ!」


「了解。君はどうする?」


「僕もハンバーグください。ノエルって言います。ニコと一緒に今日来ました。」


ノエルは2人の会話に入っていく事ができず、変なタイミングで挨拶してしまった事を1人気にしていた。

まだ少ししかニコと一緒にいないけれど、すぐに人と打ち解けられてすごいなと、感心もしている。

ニコだけじゃなく、どの天使たちも常に明るくて、自分だけ浮いているのではないかと、笑顔だけは忘れないようにした。


「2人ともハンバーグだね。嫌いな物が無ければ、紅茶とデザートは僕のお勧めを用意しておくね。ちょっと待っててね。」

タイラはそう言うと、キッチンに入っていった。


「天使ってさ、みんなこんな感じ?会話がどんどん進んでいくというか。みんな本当に明るいね。」

ノエルはなるべく小声で、ニコに聞いてみた。


「そうだね。みんな話すとフレンドリーだよ。ノエルはちょっと陰気な感じだよね。悪魔ってみんなそうなの?」

「陰気…。悪魔もみんなとは話すけれど、相手に特段興味が無いんだと思う。クールって言うのがぴったりかな。初対面で今みたいに会話が弾むような感じじゃないよ。僕は特段暗いのかもしれない。」


遠慮のないニコの言葉に少し傷つきながら、ノエルは一緒に過ごした悪魔たちを思い出していた。

思い入れはないし、特別仲が良い悪魔もいなかったけれど、考えてみれば暗く馴染もうともしない自分にも、みんな気にせず話しかけてくれた。

人間界では良いイメージの無い悪魔だが、サバサバしていて差別もしない良いやつらだった、というのがノエルの中でのイメージだ。

もう戻る事は無いけれど、あの街での生活も悪くなかった、と今なら思える。


「どうぞ。」と言って出てきたハンバーグのお皿を見て、2人は小さく歓声をあげた。


濃く艶のあるオリジナルソースは、大きなハンバーグにこれでもかという程にたっぷりとかかっている。

付け合わせのマッシュポテトとサラダも彩りが完璧だ。


「いただきます!…美味しい!本当にふわふわしてる!」

「本当だね。こんなにふわふわしているハンバーグ、食べた事ないよ。」

2人は感想を言いながら、ペロリと平らげてしまった。


タイラはそれを見計らったように、紅茶とデザートを運んできた。


「はい。これはオリジナルのフルーツティーだよ。サッパリしていて飲みやすいから食後にぴったりだよ。それからこっちは、特製のスノウケーキ。」


目の前に差し出された香りの良い紅茶と、白くモコモコとしたデザートに2人は目を奪われた。


「このデザート初めて見ます!ハンバーグもだけど、タイラさんが考えて作ってるんですか?とても美味しかった!」


「ありがとう。良かったよ。でも考えてるのは僕じゃない。レシピはあるから作れるけどね。考えたのはじいさんだよ。ほら、そこに座ってる。」


2人同時に、タイラが指すほうを見た。

1人で座っている年配の天使だ。

彼はタイラの声を聞いて、ゆっくりと振り返る。


「そんなに褒めてもらえて嬉しいね。」


さっきイシリアルで見た、この街の長、ブランだった。

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