第27話 遺跡
「お二人さん、これからどこかに行くのかい?」
空は赤く染まり、夜がそこまで近づいている。
こんな時間から森に行くのはどうかと思っていたが、アーシャとルキアが行っているので、二人に危険が及ぶ前に連れ戻さなければ。
ついでに問題を解決できればいいのだが……果たしてどうなることやら。
「今から森に行くの。友達が先に行ってるんだ」
「ゴブリンの件、もしかしたら森の遺跡が関係しているのかも知れません。原因を探るために、少し探索してまいります」
「遺跡って……どうせカトルに聞いた話だろ? あいつはホラ吹きで有名だから、止めておいた方が良いと思うけどな」
「それを確かめるために行って来るの。ホラだったらそれでいいんだ」
町の人達に信用されていないカトルさん。
どうしてここまで彼は嘘つき呼ばわりされるのだろう、それが不可解で仕方ない。
「とにかく行ってきます」
「ああ、気を付けてな……本当に気を付けてくれ。あの森で人が行方不明になったって話は、幾度も聞いてるからな」
「そうなの?」
「そうなのよ。この人が言ってるように、行方不明になった人は沢山いるの。でも噂の域は出ないのよ」
夫婦がそんな話を聞かせてくれるが、本当の話かどうかは定かではないと。
何でそれが真実かどうか分からないんだろう。
私がそう考えていると、同じことを思ったのかシャルが代わりに口を開く。
「何故、嘘か本当か分からないのですか?」
「いなくなった人、全員が身寄りの無い人ばかりでね。捜索願いが出てるとか、家族が探しているとかそういうのが無いのよ。ある日忽然と人がいなくなる。それが森でいなくなったって誰かが言い出して……それで森で行方不明者が出てるって話になってるの」
「なるほど、そういうことか」
行方不明者は実際に出ているが、それが森と関係しているかどうかまでは分からない。
もしかすると単純に町から出て行っただけかも知れないってわけだ。
でも身寄りの無い人ばかりというのが、何だか引っ掛かるな。
「とりあえず、気を付けて行って来るよ。行方不明者のことも分かるかも知れないしね」
「ああ。しかし町の者たちで森を詮索してみたが何も見つからなかったから、君たちが行っても同じだと思うけどね」
私たちは頭を下げ、森へと向かうことに。
町を出たところでキャンピングカーを呼び出す。
リリルの力で異次元から姿を現せる車。
私たちは車に乗り込み、ペダルを全力で踏む。
「このまま森の中に入って行けるかな?」
「問題無いなの。道らしい道は無いけど、車が通るスペースはあるなの」
「ここから見えるのですね……リリルの目はどうなっているのですか?」
「リリルの目は人より優れた目なの。チドリ様の役に立つための、特別な目なの」
「チドリ様のお役に立てて偉いですわね」
運転席と助手席の間に座るリリル。
シャルはそんなリリルの頭を撫でる。
「遺跡……すぐに見つかるかな」
「どうなのでしょう。奥の方にあるとは、カトル様が仰っていましたが」
「アーシャたちも見つけないといけないなの」
「だね。危ないモンスターが遺跡にいる。アーシャとルキアはそのことを知らないから、見つけて伝えないとだね。ちなみにリリル、どうやって相手にバレないように遺跡に入るの?」
「それは簡単なことなの」
「え――そういうことか」
リリルの能力の情報が、頭の中で直接流れてくる。
彼女の作戦を理解し、私は笑みを浮かべて頷いてみせた。
「どういうことですの?」
「リリルの能力に、気配を遮断する力があるんだって。それを使えば、周囲に悟られないように近づけるって」
「それはまた便利な。リリルってとっても役立つのですね」
「そう言ってくれると嬉しいなの」
「よし。ってことで早速能力発動!」
リリルと私の力をリンクし、気配を遮断する能力を発動。
この能力は、私が国王に炎を放ち、人知れず脱出した時に使ってくれた力のようだ。
それに私と協力して使えば、キャンピングカーの気配まで遮断できるみたい。
能力を理解して安心し、森の中を車で突っ切る。
車の走る音などは、車内に聞こえてくるが……外から見たらどうなってるのかな?
そんなことを疑問に思いながら、車を走らせて行く。
すると眼前にゴブリンが現れ、私は勢いそのままで走ってしまう。
「あ、ゴブリン轢いちゃった!」
「あー……気配が分からないから、相手も訳も分からず轢かれるのでしょうね」
「そういうことか……能力は問題無く発動してるみたいだね」
ゴブリンを轢いたことにより、能力が発動していることを知る。
君の犠牲は無駄じゃなかった……お金にもなるし、ありがとうね。
「どっちの方角に行けばいいんだろう」
「ナビで調べられませんか?」
「リリル、遺跡がある場所分かる?」
「調べてみるなの」
リリルはナビを操作し、遺跡の場所が分かるか確認してくれる。
「バッチリなの。このまま真っ直ぐ行けば到着するなの」
「遺跡の場所まで分かるなんて、便利だねぇ」
キャンピングカーの性能には舌を巻くばかり。
ありがたい限りだけど、どうなってるんだろうか。
森に入ってから10分ほど経過すると、遺跡に到着する。
キャンピングカーを下り、リリルの能力で気配を消しながら中へと入った。
「アーシャとルキアはいない……まだ森の中にいるのかな」
「どうなのでしょうか」
「……森を見て回ってみようか。遺跡を調べるのは二人を見つけてからでいいと思うんだ」
「それはそうですわね――って、ここから下に下りれるみたいですわ」
遺跡の中には天使像があり、シャルがその後ろ側に地下への入り口を見つける。
そしてクンクンと鼻を鳴らし、ハッとした表情を浮かべた。
「アーシャ様とルキア様の匂いですわ」
「え、そんなこと分かるの?」
「はい。わたくし、匂いに敏感なのです」
「敏感って……残り香が分かるなんて、よっぽどだよ」
シャルの特殊能力が一つ判明する。
まさかの人間離れした嗅覚の持ち主だったとは。
私には匂いなんて全く分からないんだけどな。
「匂いに敏感みたいだけど、アーシャのお風呂に入っていない匂いはすぐに気づかなかったね」
「少し気を使っていました。女性に匂いの話をするのは……ね」
「あはは。それはそう」
シャルの能力は置いておいて……アーシャたちは遺跡の中にいることが判明した。
ルキアはともかく、アーシャは喜んで中に入りそうだもんな。
中で強敵が待っている。そんなことを考えているのではないだろうか。
「よし、急ごうか。もし私たちの手に負えないようなモンスターだったら……」
「二人が危ないなの」
「そうなる前に助けに行かなければ。でも、アーシャ様が倒せるぐらいの相手なら、良いですわね」
「取り越し苦労ならそれで良し。そうじゃなかった場合を想定して行動しよう」
私たちは頷き合い、地下への階段を下りて行く。
階段は螺旋階段となっており、その大きさと広さに驚いてしまう。
人工物には見えるが、しかし人間が作った物なのだろうか。
遺跡というぐらいだから、もしかしたら神様が作った物なのかも。
そんな予感を感じさせる場所であった。
階段を下ると、薄緑色に光る場所に到着する。
色の正体は光る壁。
明かりを必要としないのはありがたいが……どういう原理で輝きを放っているのだろう。
「明かりが必要無い……これなら少しばかり安心して先に進めますわね」
「うん。リリルの能力があるから安全だし。後は二人を見つけるだけだ」
「では気を付けて参りましょう」
「うんなの!」




