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第23話 ゴブリンエース

「リリル、やろう」


「うんなの」


 リリルを頭に乗せ、走りながら魔術を展開する。


「【リリル・ロック】!」


 小さな粒が眼前に生まれ、それは一気に巨石へと変化する。

 私の意志に従い、それは森の近くにいるゴブリンエースへと飛翔して行った。


「ギギッ!?」


「あ、避けた……他のゴブリンと違って動きが速いんだ」


 ゴブリンエースは私たちの魔術を何とか回避する。

 その反応速度に危惧を覚えつつ、しかし距離があるからだと私は断定した。


「もっと近づけば当たるはずだよ」


「そうなの。近くからなら外さないなの」


 私が相手しようとしているのは左手にいるゴブリンエース。

 シャルは真ん中にいるゴブリンエースへと近づいていた。


「このっ――迷惑をかけるんじゃありません!」


「グギィイイイ!!」


 ボゴォオオンン! とゴブリンエースが弾け飛ぶ。

 その一撃で始末できたと思っていたが――相手はヨロヨロと起き上がる。


「今ので倒せないなんて……予想以上に強いね、あのモンスター」


「でもチドリ様の敵じゃないなの!」


「ならいいけど。リリルの言葉を信じて戦うよ」


 森の中へと吹き飛んだゴブリンエースは、両手に剣を握りシャルと激突する。

 私は自分の目標であるモンスターに接近しながら、密かに魔力を高めていた。


 しかし相手が動き出し、こちらを警戒するように私の側面へ移動する。


「一筋縄じゃいかないってことかな……どうしようか、リリル」


「チドリ様は魔力を使うことに集中するなの。コントロールはリリルがするなの」


「了解。ならコントロールは頼んだね、リリル」


 魔術のコントロール――それは命中させるという意味でのコントロールだ。

 戦艦なんかで言えば私が命令し、リリルが大砲を撃つようなものだろう。

 なら私はリリルを信じて魔術を発動するのみ。

 リリルはこんなに可愛いのに、ビックリするぐらい有能なんだから!


「【リリル・ロック】!」


 再び生まれ出る岩石。

 敵は魔術を警戒し、近づこうとしない。


「距離はさっきより近いなの。コントロールをもっと精密にするなの」


「リリル、お願い。いけー!」


「絶対に当てるなの!」

 

 ゴブリンエースが全力で動き回る。

 そんな相手目がけ、岩石を放つ。


 飛んで行く岩。

 だが相手はそれを見切っていたのか、急転換して回避行動に移った。


「‼」


 私は一瞬だけ驚愕するが――でもリリルを信じるんだ。

 リリルが当てると言ったら当てる。

 リリルは間違ったことなんて言わないんだから。


 すると岩は急に軌道を変化し――相手側に吸い込まれるようにして命中する。


「ギャウウウウウウウウウン!」


「やった! 流石はリリル」


「えっへんなの」


「偉い偉い」


 敵は一撃で仕留めることができ、光る粒と化して消えていく。

 少し手間取ったけど、予想ほど強いモンスターじゃなかったな。


「これで、おしまいですわ!」


「ギョァアアアアアアア!!」


 森の中からゴブリンエースが吹っ飛んで来る。

 ゴロゴロ地面を転がりながら、輝き四散した。


「ふーっ、問題無く倒せましたわ」


「シャル、お疲れ様!」


「チドリ様もお疲れ様です!」


 遠くにいるシャルにねぎらいの言葉を投げかけると、彼女も返事をしてくれた。

 よし、後は一匹。 

 残りのゴブリンエースを倒そうと相手がいた方向を見るが――そこにモンスターの姿は無い。


「え、どこに――」


「うわああああ、なんだこいつは!」


「あの子たちが戦ってた残りか!」


 もう一匹のゴブリンエース、どうやらゴブリンの群れの方へ移動したようだ。

 しまった……自分が対応してたモンスターに集中しすぎてたな。


 冷や汗をかきながら、皆の元へと走る私。

 シャルも気づいたようで、全速力で走り出す。


「急げ……急げ!」


「チドリ様、わたくしが行きます!」


「シャル、お願い!」


 シャルは私が走るより速く、敵へと接近して行く。

 だが距離が遠い。

 ゴブリンエースは近くにいる戦士に切りかかり、その強さを遺憾なく発揮していた。


「こいつ、強いぞ!」


「ゴブリンと比較にならないぐらい強い!」


「皆で一斉にかかるんだ!」


 戸惑う戦士たちであったが、ゴブリンエースを囲み、同時に攻撃を仕掛ける。


「ギギギッ!」


 だがゴブリンエースの実力は高く、両手の剣で攻撃を防ぎ、すれ違いざまに腹部などを切りつける。


「うううっ……」


「強い……俺たちにどうにかできるような相手じゃない!」


「あの子たちはあっさり倒してたのに、どうなってるんだ!?」


 私たちがゴブリンエースを倒したことに、自分たちでも勝てると思っていたようだが、予想以上の実力にパニックとなる戦士たち。

 逃げ出す者、混乱する者、武器を手放し腰を抜かしてしまう者。

 

 それぞれ違う反応をするものの、絶対に勝てないと判断したようだ。


「キキキ」


 ゴブリンエース、そしてその周囲にいるゴブリンたちは、勝機に嫌らしい笑みを浮かべる。

 今なら殺すことは容易い。

 そんな表情だ。


「間に合って……いいえ、間に合わせてみせます!」


 走るシャル。

 だが彼女が到着するより、惨劇の方が早い。

 同じように走りながら、私は目を伏せた。


 知らない人たちだが、殺されてしまう。

 そう思案すると、見ていることができない。


「ああ!!」


「!?」


 シャルの驚きの声。

 人が殺されてしまったのだろうか。

 私は覚悟し、ゴブリンエースたちの方を見た。


「お腹は減ったし、力は出ないけどボクは役に立ってみせる。ちょっとだけどね!」


「ひええええええ! 今すぐ逃げたいのに!」


「ああ、アーシャ、ルキア!」


 皆が殺されてしまう、そう覚悟した私であったが、ルキアがアーシャを抱えて相手の頭上に移動していた。


 そして手を放し、アーシャはゴブリンエースの前に立つ。


「ボクが来たからにはもう安心だ。後は任せてもらおうか」


 格好をつけるアーシャ。

 だが情けなく、彼女のお腹が大きく鳴る。


「はっはっは! でも戦うほどの力は残っていない。シャル、後は頼んだよ!」


 ガシッとゴブリンエースにしがみ付くアーシャ。

 力は出ないようだが、ゴブリンエースの力では彼女の腕を外せないようだ。


「アーシャ様……ナイスですわ!」


「できるなら君と戦ってみたかったものだよ。まぁ、大した訓練にもならないだろうけどね」


「はっ!」


 ジタバタもがくゴブリンエースの顔面を殴りつけるシャル。

 相手の首の骨が折れ、そのまま絶命する。


「ギュァアアアアアアアアアアアアアアアア!!」


 ゴブリンエースが倒れたことに、ゴブリンたちが一目散に逃げて行く。

 戦いに勝利したことに、私は大きく安堵する。


「やったー! 俺たちの勝ちだ!」


「俺たちというか、彼女たちの力だな!」


「ああ、最初は彼女たちを疑ってしまったが、我らの料理の女神だったではないか!」


 歓喜を爆発させる戦士たち。

 勝利の雄たけびを上げ、天に向かって拳を突き上げる。


「良かった。死んだ人はいなかったみたいだね」


「ルキア、怪我人を治療してあげて」


「うん。でも上手くいくかなぁ……」


 勇気が湧いている時でないと力が出ないルキア。

 周囲にいる人たちの叫び声にビクビクしているので、魔力はそう高められない様子。


「ありがとう、君たち!」


「え?」


「君たちのおかげで死なずに済んだ!」


「君たちは俺たちの英雄! どうかお礼をさせてくれ!」


「良かったら俺と結婚してくれ!」


「バカ言うな、こんな美女たちがお前の相手なんてするかよ!」


 町の人たちに囲まれる私たち。 

 こんな状況初めてだから、戸惑うばかり。

 シャルたちもどうしていいか分からず、苦笑いを浮かべるばかり。

  

 とにかく、皆が無事で何よりだ。

 私たちが勝てる程度のモンスターで良かったな。

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