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第22話 モンスターの大群

 町の近くには森が広がっており、そこから多くのモンスターが噴出するようにして出て来ているようだ。


 大きなモンスターこそいないが、その圧倒的な数に硬直する町の戦士たち。

 まるでモンスターの波が襲って来ているかのようだ。


「凄い数ですわね。アーシャ様、まずは私たちで数を減らしましょうか」


「うん、そうしたいのは山々なんだけどね……」


「え、どうかしたの、アーシャ?」


 モンスターを前に怯むことなく、町の人々を守るためにシャルは戦おうとしていた。

 だがアーシャの様子が少しおかしく、私たちは彼女の方を見る。


「お腹が減って力が出ないんだ。あはは……ごめん」


「お腹が減ってって……お腹減らすために運動してたもんね」


「仕方ありません。私たちだけでやりましょう」


「だね」


 アーシャの頬がひもじそうにこけている。

 まさか空腹でまともに動けなくなっているとは……すぐに食事をする予定だったし、しょうがないか。


 私とリリル、そしてシャルは前に出る。

 それに続いて戦士たちも動き始めた。


「君たちのことは良く知らんが……どうにかなるんだよな?」


「問題ありませんわ。わたくしとチドリ様がいれば、あれぐらいはどうとでもなります」


「すまない。協力してもらう形になって。君らのことは信用する」


「ありがとう。疑いが晴れたみたいで良かったよ」


 町の人たちに信用されたようで、ひとまずは安心だ。

 後はモンスターを倒して終わりだけど……腰にある刀に触れて私は苦い表情を浮かべた。


「どうかしたの、チドリさん?」


「あー……実は自分の力をコントロールできる自信が無いんだよね」


「ああ、山を燃やしちゃったもんね!」


「うん。ルキアのおかげで証拠隠滅できたけど!」


 自分の高すぎる魔力。

 それを私は上手く操作できない。

 全力で放つことができるが、手加減することが苦手なのだ。


 魔力を解放すれば、これだけの数がいても問題無いんだけど、どんな被害が出るか想像もつかない。

 下手したら町ごと燃やし尽くすことになったりして……そんなことを考えると、力を振るうのを躊躇してしまう。


「今回はリリルの力で戦おう」


「分かったなの。数は多いけど、チドリ様とリリルの力だけで十分なの」


 私の頭の上にリリルが乗り、能力を共有する。

 リリルとの協力技は力の加減ができるから安心だ。

 おそらく、リリルが調整してくれてるんだろうなと思うけど。


「リリル、敵の種類は分かりますか?」


「うんなの。全員ゴブリンみたいなの。でも持っている武器が皆違うから、気を付けてなの」


 ゴブリン――普通の人よりも濃い肌色をしている化け物。

 小さな子供の体に老人のようなクシャクシャの顔。

 そのアンバランスさを感じるモンスターは、ゲーム内では最弱のモンスターだが……現実ではどうなんだろう。


「強くないモンスターって認識で良いんだよね?」


「はい。ゴブリンは一番弱いモンスターですわ」


「オッケー。想定通りで良かった」


 最弱で間違いないらしく、心に余裕が生まれる。

 キラービーより弱いみたいだし、苦戦することは無いだろう。


 問題は町の戦士たちだ。

 数の多さに気圧されているらしく、顔面蒼白になっている人が多数いる。

 まぁたとえ相手がゴブリンだとしても、数に囲まれると危険だもんね。


 だからと言って怖がってばかりいたら、足元をすくわれてしまうだろう。

 ここは勇気を出して前に出て、町のために奮闘しなければ。


「さぁ、行きますわよ!」


 シャルが先陣を切って走り出す。

 彼女は怯えることなく、モンスターの集団へと突撃する。

 ゴブリンと交差する瞬間、凄まじい威力の拳を叩きつけた。


「グヒィイイイイイイ!!」


 四回転ほどするゴブリンの体。

 そのまま地面に落ち、光となって消えていく。


「おお、やっぱりシャルは強いんだね。ボクも負けてられない――って、お腹が空いてるんだった」


 シャルの高威力の一撃を目の当たりにし、アーシャはワクワクしているようだった。

 気持ちが高ぶり、彼女も前に出ようとするが、空腹からヘナヘナと倒れてしまう。


「アーシャはルキアと後ろに下がって。ここは私たちに任せてくれたらいいから」


「ごめん。本当に申し訳ない」


 今にも泣きそうな表情のアーシャ。

 申し訳ない気持ちからか、あるいは戦えない悲しみからきているのか。

 前者であると信じたいが……実際のところはどうなんだろう。


「よし、私たちも攻撃をしよう」


「うんなの」


「【リリル・ウインド】!!」


 直結された私たちの思考と能力。

 突き出した手から、大いなる風が生まれる。

 この間、ワイバーンと衝突した風だ。


 風は一直線にモンスターの大群へと迫り、敵を飲み込み、遠くへと吹き飛ばしていく。


「おおお……とんでもない魔術だ!」


「一気にモンスターの数が減ったぞ」


「あの二人がいるなら勝てる……俺たちも続くぞ!」


 私たちの行動を見て、恐怖を払拭できたようだ。

 戦士たちが一斉に走り出す。


「うん。この調子なら勝てるはず。ゴブリンなんて怖くないよ!」


「わたくしに続いてくださいませ! チドリ様がいて負けるはずありませんわ!」


「おおおおおおおおお!!」


 シャルの言葉に、戦士たちの心に火が点く。

 私の名前なんて出す必要無いけど、でも勢い付いたのはいいことだ。


「町を守るんだ!」


「女の子二人に任せるなんて情けないよな」


「でも背中を押されたのは間違いない。二人に負けないぐらい、大暴れしようぜ!」


 ゴブリンたちと乱戦になる。

 シャルは前線でモンスターを蹴散らしていき、私とリリルは危なそうな人を助けるため、走り回りながら魔術でモンスターを倒していく。


「危ない、【リリル・ウインド】」


「助かる!」


 私が助けた人たちは、危険な仲間がいないか探すように周囲を見渡す。


「無茶はしないようにね。危なくなったら引こう」


「ああ。ピンチの仲間を助けながら戦うぞ!」


 一人の男性の声に、皆が呼応する。

 モンスターの数は随分と減った。

 後はこのまま押し切ればいけるはず!

 

 そう思っていた私だが――リリルが何かを発見し、私に報告をする。


「チドリ様、強いモンスターが出てきたなの!」


「強いモンスター?」


「ゴブリンエースなの。ゴブリンの中では強いモンスターなの」


 私の目では見えないが……リンクしたリリルの意識が、それを認識させてくれる。

 森から出てきた青い肌のゴブリン。

 背中には二本の剣を持ち、体は周りのゴブリンよりも一回り大きい。

 一般男性とそう変わらない体躯。

 あれがゴブリンエースか。


「数は三匹……並みの戦士じゃ太刀打ちできないぐらいの強さなの!」


「そんなモンスターが三匹も……どうなってるのよ」


 ここに来るまでに強いモンスターと遭遇することはなかった。

 リリルの話によると、危険なモンスターも少ない地域だったはずだ。 

 何かイレギュラーなことが起きている……?


 原因は分からないが、とにかく今はゴブリンエースの討伐が優先だ。


「シャル、強いモンスターが出てきてるの。私たちで相手にしよう」


「分かりました。そのモンスターはどこにいますの?」


「森から顔を出してきた、あの三匹だよ!」


 目をこらすシャル。

 しかしモンスターの姿は認識できないようだ。

 私もリリルが見せてくれていなかったら見えていないし、人の目で視認できる距離じゃないよね。


「普通のゴブリンは皆さんにお任せします!」


「私たちは強力なモンスターを相手にしに行くから、頑張ってね」


「ああ。自分たちの町のことだ。全力で頑張るよ!」


 戦士たちに頷く私とシャル。

 そのまま森の方へと走って行く。

 強敵との戦いになるが……なんとかなるはず。

 そう信じて私たちは、全力で駆けるのであった。

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