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第21話 セルシリオ

 アーシャと旅をすることになった翌日、北へ向かって車を走らせていた。

 時刻は朝方。

 まだ太陽が昇ったばかりで天気も良い。

 のんびりめの音楽を聴きながら走るのは、ドライブ感覚で楽しかった。


「はははは! いい運動になるね、キャンピングカーと競争するのは」


「アーシャ……朝から特訓はいいんだけど、わざわざ車と競争なんてしなくてもいいんじゃない?」


 驚くことにアーシャがキャンピングカーと並走し、外を走っている。

 その速さもあるのだが、彼女の元気に唖然とするばかり。

 どこからそんな元気が湧き上がるのだろうか、不思議で仕方ないよ。


「このまま進めば、セルシリオの町に着きますわね。そこへ行きますか?」


「セルシリオの町……どんなところなんだろう」


「セルシリオは海に面した町なの。魚が美味しいなの」


「美味しい魚か! いいね、食べたいね」


「おお、食事をするのか? じゃあ今のうちにお腹を減らしておかないとな。ほっ、ほっ、ほっ!」


 食事の話を聞いて、アーシャは左右に飛び跳ねながら走り出す。

 まさかそんなことができるほどの体力があるとは……驚きを通り越して呆れかえってしまう。

 私だったら間違いなく筋肉痛になるだけの運動量。

 というか、絶対に無理。


 それからキャンピングカーで走ること1時間、私たちはセルシリオの町に到着した。


「なんだあれは……?」


「馬車? いや、違うよな」


「何が来たのよ、化け物かしら?」


 町の外にキャンピングカーを停めたのだが、それを見ていた町の住人たちが恐怖の声を上げる。

 まぁこんな大きな車が来たら驚くよね。

 この世界には存在しない乗り物だし、気持ちは良く分かります。


「わたくしたち、化け物と思われているのでしょうか?」


「私たちというか車だよね。リリル、どうにかできないかな。毎度こんなことになると、問題になっちゃうよ」


「チドリ様の意志で収納することができるなの」


「え、そうなの?」


「そうなの。使い方を伝えるなの」


「ふむふむ、なるほど」


「思考を共有するだけで理解できる。なんというか、羨ましい能力ですわ」


 リリルが念じるだけで、私は能力を理解する。

 それをシャルは羨ましいと思うらしいが……確かに便利だよね。


 リリルが教えてくれたのは、【収納魔術】というものだ。

 異空間に物を収納できる魔術で、キャンピングカーの中か、あるいはリリルがいたら使えるみたい。


「じゃあ早速使ってみますか。シャル、悪いんだけどルキアを起こして来てくれない?」


「分かりました。お任せくださいませ」


 笑顔で地下へと向かうシャル。

 シャルは人を叱ることができる女性なので、こういう時は大助かり。

 ルキアも普通に起こすは苦労するが、シャルに任せておけば問題無し。


 キャンピングカーの外でリリルとアーシャと待っていると、すぐにシャルとルキアがやって来る。

 ルキアは寝起きだが青い顔をしており、シャルに怖がっている様子。

 どんな起こし方をされたらあんな顔になるのだろう……怖いもの見たさに、起こすところを見てみたいな。


「ではキャンピングカーを収納します」


 リリルが私の肩に乗る。

 彼女と意志をリンクさせ、収納魔術を発動させた。


「おお! 車が黒い渦に飲み込まれていく……これもチドリの能力なんだね」


「はー、なんでもできるんだね、チドリさんって」


 アーシャが表現するように、宇宙のような黒い渦が生じ、キャンピングカーを飲み込む。

 こんな大きな物を収納できるなんて……これから荷物を持つ必要も無いと考えると、また旅が楽になるな。

 ともかく、これでキャンピングカー関係でトラブルは少なくなるはず。

 ただこの町ではすでに見られたので、私たちに白い目を向けてくる人が多数いた。


「うん。もっと早くにするべきだった」


「あはは。次回からは気を付けましょう」


 セルシリオは、まさに海の町といった場所であった。

 いくつもテントがあり、その下では商売をしているみたい。

 町の奥には海が見え、多くの船が停泊している。

 

「あれ、全部で魚を獲りに行くのかな?」


「そうじゃないかな。とにかくお腹が空いたよ。まずは食事を探しに行こうじゃないか!」


「アーシャ様って、食事が好きなのですのね」


「ああ、大好きだよ。強くなるためにも多く食べないといけないからね!」


 食事のことを考えてか、目を輝かせているアーシャ。

 私たちはそんな彼女を見て笑い、町の中へと歩き出す。


「安いよ安いよ、買って行ってね」


「そこの可愛いいお嬢さん方! いい魚が入ってるよ」


「ここの魚はどこよりも安い。買うなら今しかないからね!」


 商店の前を通ると、店の人たちが声をかけてくる。

 こんな経験が無いから、少々戸惑ってしまう。

 元の世界でも、活気のある商店街なんてこんな風だったのかな?


「どれもこれも美味しそうだね……チドリさんはどれを食べるの?」


「んん~、まだ何にも決めてないんだよね。とりあえず美味しそうな魚を買おうよ」


「お、あそこにある鳥も美味しそうじゃないか!」


「鶏肉……共食いは勘弁してください」


 アーシャが鶏肉を売っている店を見つけるが、ルキアが顔面蒼白となっている。

 鳥族だから、共食いになるのか……そうならないように、買い物を気を付けよう。

 ささみなんかは低カロリー高タンパク質だから好きだったけどなぁ。


「おい君たち。少しいいだろうか」


「えっと、何でしょうか」


 商品を見て回る私たちであったが、突然戦士らしき人物たちに声をかけられる。

 まるで犯罪者を見るような目だ。

 私たちは何もしてないはずだけど……してないよね?


「君たちが化け物を飼っているという噂を耳にした。それが事実なのか確かめたい」


「化け物って、そんなの買っていませんわ。ビルライラ家の名において、それは否定します」


「ビルライラ……確か王都の貴族だったか」


 私たちの前に立つシャル。

 彼女は貴族としてそんなことはしないと彼らに話す。

 だが話の流れから察するに、キャンピングカーのことだよな、と私は感づく。


「化け物なんて飼ってないけど、変わった乗り物には乗っています」


「乗り物……? そんな風には聞いていないが」


「でも乗り物なんだよね。ねえ、シャル」


「はい。確かに乗り物には乗って来ましたわ」


「乗り物って――ん?」


 怪訝そうな表情をする男たちであったが、突如聞こえてくる爆発音に彼らは振り返る。


「た、助けてくれ! 化け物が現れた!」


「化け物だと……まさか君たちが!?」


「違う違う! 私たちは何もしてないよぉおおおおおおおおおおおおおお!!」


 疑いをかけられた私たち。

 ルキアが泣き叫び、否定する。


「クソッ……確認する時間もないな。どうする」


「なら、ボクたちが無実だと証明しよう。その化け物退治、ボクたちに任せてくれないか? こう見えて、腕が立つんだよ」


「腕が立つぅ?」


「あ、私を抜いて全員です。はい」


 再び怪訝な顔を向けてくる戦士たち。

 ルキアは戦うのが苦手なので、実力を否定しているが……まぁシャルにしてもアーシャにしても強いもんな。

 並みの戦士と比べると圧倒的に強いと思う。


「……分かった。とりあえず我々と来てくれ。君たちが化け物とつるんでいないかどうかの判断は、後からさせてもらう」


「了解。行きましょうか」


「うんなの」


 こうして私たちは化け物とやらと戦うこととなった。

 どんな化け物が現れたのだろう……少し不安になりながらも、私たちは町の外へと向かって走り出す。

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