第20話 部屋作り
お風呂を上がり、廊下に出て奥の方を皆で眺める。
もう慣れた光景ではあるが、どこまで伸びているのだろう。
それだけは今でも気になるな。
「ちょっと見て来る!」
するとアーシャが突き当りを目指して走り出す。
「ここって、どこまでの続いてると思うだよね。飛んで行ってみたけど、突き当りまで辿り着けなかったし」
「私もそう思う。たぶんだけど、無限に広がってるんだと思うよ」
ルキアは好奇心からこの廊下を飛んでみたらしいが、向こう側に到達することは無かったようだ。
私とシャルも以前挑戦してみたけど、無限に伸びているであろうと結論を出し、途中で諦めたからな。
それから十五分ほど経っただろうか、ようやくアーシャが私たちの元へ戻ってきた。
「うん、どこまでも伸びるね! 先がまったく見えないや」
「やっぱりそうだよねぇ。ま、部屋の数は無限だから、好きなだけ好きな部屋を作れるからいいんだけど」
「へー、それはとんでもないね! あのさ、良かったらボクも旅について行ってもいいかな? ボクも強くなる旅の最中で、君たちといると楽しそうだし」
「いいですわね。仲間は多い方が楽しいですもの」
「私は別にいいよ。寝るところは部屋を作ればいいんだし」
「私もいいかなぁ。強い人が多い方が、危険は少ないだろうしね」
最後にリリルの方を見ると、彼女も大きく頷く。
これで満場一致。
新しい旅仲間が出来た。
「じゃあこれからよろしくね、アーシャ」
「うん、よろしく頼むよ、チドリ」
「ってことでそろそろ個人個人の部屋を作ろうか。あのベッドで4人で寝てたけど、限界だって思ってたんだ」
「そうですわね。5人にもなると狭すぎて寝れませんものね。それにアーシャ様、綺麗にしてくれているといいのですが……」
私とリリル、それにシャルとルキアで寝てたけど、アーシャが混ざるとなるとこれ以上一緒に寝るのは不可能だろう。
それにアーシャが汚くすることを想定してか、シャルは青い顔で乾いた笑い声を出している。
「皆の部屋を作るなの?」
「うん。5人それぞれの個室を作ろう」
「じゃあ私、大きなベッドがある部屋がいい!」
「分かった。ならすぐに作ろうか」
早速ルキアの部屋を作ることにした。
彼女の部屋は風呂場の隣。
ルキアの部屋にする予定の扉の前に立ち、眼前に現れた半透明のタブレットを操作する。
部屋の作り方は至って簡単。
どんな部屋にするか、部屋の広さはどれぐらいにするか、どんな物があればいいのか。
それらを文字で入力するだけ。
最後に決定ボタンを押すと――
ピカッと部屋の中に光が生じる。
「え、これで完成なのかい?」
「そうなんだよ。チドリさん魔法使いみたいに、簡単に何でも作っちゃうんだから」
私の能力を自分の手柄のような言葉使いで話すルキア。
そして彼女が部屋の扉を開けると、大きなベッドがある部屋が完成していた。
「これがルキア様の部屋ですか……ちょっと個性的ですわね」
ベッドは部屋の端にあり、中央に大きな木が生えている。
後はタンスなどがいくつかあり、天井は空が見えるような仕組みだ。
「おお……部屋にいながら外を眺めることができる。面白いじゃないか」
「木の上でお昼寝もできるし、最高でしょ?」
「ルキア、寝るのが大好きなの」
ルキアはゆっくりと空を飛び、木の上に腰を下ろす。
そしてあっという間に眠ってしまったのか、寝息を立て始める。
「もう寝ちゃった?」
「あの寝つきの良さ、羨ましいですわね」
皆で笑いながら部屋を出て、ルキアの部屋の逆側の前に立つ。
次はアーシャの部屋だ。
彼女の要望はベッド一つ。
後は訓練ができればいいとのことなので、トレーニング機器をいくつか導入してあげた。
「これがボクの部屋か……素敵だね」
「素敵どころか、無機質すぎませんか?」
「いい。ボクはこれがいいんだよ」
コンクリートのような造りの部屋にベッドが一つ。
部屋の端にはランニングマシンやサンドバック、ベンチプレスなどができるパワーラックという大型器具が備えられている、アスリートの部屋みたいになった。
サンドバックは特注品となっており、多分だけどアーシャが全力で殴っても壊れないようになっている。
試しにアーシャがサンドバックに爪を立てるが――揺れるだけで割けもしない。
「壊れない……これならいくらでも訓練ができるね!」
「良かったね。では次はシャルの部屋に参りまーす」
「よろしくお願いしますわ」
クスクス笑うシャル。
アーシャの隣にシャルの部屋を作る。
彼女の部屋はまさに令嬢が住むような豪勢な造り。
天蓋付きのベッドに綺麗なソファ。
テーブル席もお嬢様が使うような物で、お茶のセットが備えられている。
「素敵ですわ! 旅をしながらこんなところに住めるなんて……夢のようです」
「喜んでもらえて嬉しい。後はリリルの部屋だけど、どうしようか」
私の肩に乗っているリリル。
どんな部屋に住みたいのか彼女に訊ねてみるが、あまり興味無さそうな表情をしている。
「チドリ様」
「どうしたの?」
「リリル、部屋いらないなの。チドリ様と一緒の部屋がいいなの」
「リリル……じゃあ私と一緒の部屋にしようか!」
「うんなの!」
嬉しそうなリリル。
私と一緒にいることを喜んでくれている。
それが嬉しくて、私はリリルと一緒の部屋で寝泊まりすることをすぐに決めた。
「じゃあ私たちはシャルのお向かいさんだ」
「私たちの部屋は、ルキアの部屋を参考にしようか」
タブレットを操作して自分たちの部屋を作る。
中は元住んでいた部屋のような造りだ。
木造のフローリングに桃色のベッド。
可愛い化粧台に、アロマを乗せた小さな収納箱。
壁は全面白く、清潔感があるように。
そして部屋の端には木が一本。
リリルが喜ぶかどうか分からないけど、おサルさんだから木の上に乗りたい時もあるんじゃないかなーと作ってみたけど、どうだろう。
「リリル、これに登ってもいいなの?」
「もちろん。そのために木を用意したからね」
「ありがとうなの!」
リリルが駆けて木を登っていく。
そして上から嬉しそうに手を振る。
ああ、木を用意して正解だったな。
これだけ喜んでくれるなら、作って良かった。
「こんな簡単に部屋が作れるなんて、夢のようだよ」
ベッドに腰を下ろし、天井を見上げる。
その景色はまるで元の世界そのものであった。
まぁ木は生えていなかったけど……おおむね元通りってところだ。
「チドリ様のお部屋、少し変わっていますわね」
「うん。でもこれが私の世界では普通だったんだ」
「そうなんですね。木があるのもですか?」
「それは普通じゃない! 木以外は普通だね」
部屋に入ってくるシャル。
彼女は私の隣に腰を下ろし、興味深そうに部屋を眺める。
「なるほどなるほど、これが異世界の部屋か……もっと訓練できるものがあった方がいいんじゃないか?」
「アーシャの部屋みたいに用意してる人もいるけど、私はいらないかな。別に鍛える気はないし」
「それは勿体ない。今度ボクと訓練しようじゃないか」
「お断りします。アーシャに付き合ってたら、身が持たないよ」
笑いあう私たち。
何でもないような会話が面白くて、それだけで本当に楽しい。
個室が出来たし、これからはプライベート面も問題無し。
それに部屋は作り放題だから、色んなことを考えているとワクワクしてくる。
まるで家ごと旅しているような気分だ。
考えれば考えるほど、とんでもない能力だよな、キャンピングカーって。
「これからもよろしくね」
「リリルこそよろしくなの」
「よろしくお願いいたします」
「ボクもよろしく頼むよ」
「私も……よろしくぅ」
最後に寝ぼけながら部屋にやって来るルキア。
彼女の姿に笑い、私たちの周りには幸せな空気が流れていた。
ずっと一緒に居たいな。
素敵な仲間に出会えたことに、感謝しかない。




