第58話 炎火再燃
円形の広場の中心。
2人は目線を合わせる。
――ボォッ
ラウルの右腕から炎が噴き上がる。
荒々しい炎が燃え盛る。
カグラ「……!」
一瞬で、広場の温度が上がった。
炎の熱がカグラまで届く。
ラウル「俺をガッカリさせるなよ!」
地面を強く蹴る。
そして、容赦なく右腕を振り抜いた。
ラウル「爆炎放射!!」
放たれた炎が真っ直ぐカグラへ向かう。
カグラの髪が、爆風に大きく揺れる。
それでも、足取りは乱れない。
カグラ「へぇ、いい炎してんじゃん!」
炎が直撃する寸前、一瞬で横に避ける。
その避ける姿が、妙に美しく感じた。
なめらかで、動きに無駄がなく、舞のようだった。
炎は近くのビルにぶつかる。
その瞬間、ガラスが砕け散り、爆発を起こした。
カグラ「……すっご。当たったらひとたまりもないね」
ラウル「まだまだいくぜぇ!!その目で焼き付けろよ!俺の炎をよぉ!!」
今度は両腕から炎が膨れ上がる。
そして、二つ同時に腕を振るう。
左右から迫り来る炎。
カグラ「随分と乱暴だね。でも、あたいは嫌いじゃないよ」
カグラが走り出す。
目の前の炎を気にせずに。
そして、地面に手をつき身体を低くする。
二つの炎を紙一重で避ける。
その動きも綺麗だった。
ラウル「ほぉ、これも避けるか」
その時、カグラのすぐで二つの炎がぶつかる。
ぶつかった衝撃により爆風が生まれる。
だがカグラは、その風すらも利用する。
勢いよく飛び込み、ラウルのすぐ横にすれ違う。
カグラ「灼火付印!」
ラウルの身体に指先が触れる。
――ボッ
その瞬間、ラウルの服に小さな火が生まれる。
ラウル「……!」
熱は感じるが、この程度ならラウルには全く効かない。
すぐに腕を払う。
火は呆気なく消えた。
ラウル「へっ、こんな火で俺を――」
――ボッ
ラウル「……あ?」
さっきと同じ場所に、再び燃え始める。
ラウル「なんだこれ?」
カグラは、既に数メートル離れた場所にいる。
そこで、楽しそうに笑っている。
カグラ「あたいの火、そんな簡単には消えないよ」
ラウル「……へぇ」
炎を纏わせ、強引に火を吹き飛ばす。
ようやく消えた。
だが、カグラは既に動いていた。
右、左と舞うように動く。
カグラが通った場所へ、次々と火が残っていく。
気づけば広場のあちこちに広がっていた。
ラウル『なるほどな。吹き飛ばす俺の炎とは違って、あいつは燃やし続ける火。俺とは全く違うな』
ラウルの炎は、巨大な火力で叩きつける。
全てを吹き飛ばし、壊し、焼き尽くす。
だが、カグラは違う。
一つ一つは、大した火力ではない。
しかし、継続的に燃やし続ける。
戦えば戦うほど、カグラの火で満たされていく。
カグラ「どう?あたいの火」
広場を舞いながら笑う。
ラウル「地味だな」
カグラ「はぁ!?」
カグラの動きがピタッと止まった。
ラウル「その生ぬるい火力じゃあ俺には届かんぞ。お前の火はその程度か?」
カグラ「……言ったね?じゃあ」
カグラは両腕を広げる。
その瞬間、広場に残した火。
それらが一斉に強く燃え上がった。
カグラ「あたいの火はね、一度燃えたらずっとずっと燃え続けるのよ!」
広場が、大きな火に包まれた。
ラウル「……!」
2人の周囲が、じわじわと燃える。
確実に逃げ場を奪いながら。
ラウル「……ははっ」
それを見て、ラウルは笑った。
右腕に、炎を集める。
――ボォォォッ!
カグラの火を上回るほどの巨大な炎。
ラウル「やっぱ面白ぇな、お前。でもよ」
さらに、炎が膨れ上がる。
ラウル「火力なら俺が上だ!!」
カグラ「だったら!」
カグラも踏み込む。
火がさらに広がる。
カグラ「あたいの火が消えるまで、あんたの炎を全部ぶつけてみなよ!!」
ラウル「上等!!」
カグラはラウルへ近づく。
その軌跡を辿るように、火が燃える。
だが、ラウルは既に構えていた。
ラウル「おらぁ!!」
腕を振り下ろす。
炎を纏った拳が、カグラへ迫る。
カグラ「……っ!」
身体を横に捻る。
そして、ギリギリ避ける。
ラウルの炎が、カグラの髪を掠める。
そのままカグラは止まらない。
避けると同時に、ラウルの横腹に触れる。
――ボォッ!
火が生まれる。
さっきよりも強く燃える。
だが、ラウルも止まらない。
ラウル「その程度か!!」
炎を纏った拳を振り抜く。
狙いはカグラではなく、地面。
叩き込んだ瞬間、その場で大爆発を起こす。
カグラ「うわっ!」
カグラの身体が後ろへ吹き飛ぶ。
空中で回転させ、綺麗に着地。
そのまま舞い続ける。
カグラ「そっちがその気なら、あたいだって!」
地面に手を触れる。
カグラ「火走連華!!」
花が咲くように、地面から火が次々と噴き上がる。
地面を焼きながら、前へ進む。
カグラの掌から始まった火が、地面を伝うように次々と燃え広がる。
火が噴き出す場所そのものが、ラウルへ向かって一直線に迫ってくる。
ラウル「地面から……!」
――ボォン!
ラウルの数歩前。
地面が赤く染まる。
そして、足元から巨大な火が噴き上がった。
カグラ「避けられるかな!」
ラウルの目の前まで火が迫る。
避ける、そんな選択肢は最初から無かった。
右足を一歩前へ。
腰を落とし、右腕を引く。
拳へ、炎が集まっていく。
そして、迫り来る火に向かって拳を振り抜いた。
ラウル「灼炎剛拳」
正面から、拳を叩きつける。
その瞬間、衝撃が弾けた。
地面を這っていた火が真正面から押し潰され、左右へ吹き飛ぶ。
炎が散る。
火の粉が舞う。
ラウルの正面だけ、地面を走っていた火が強引に消し飛ばされていた。
ラウル「避ける必要はねぇ。真正面から吹き飛ばすだけだ!」
その時。
ラウル「ん?」
何か違和感。
カグラの火が肩近くまで広がっていた。
さっきまで横腹だけを燃やし続けていた。
服に付着しても少し熱い程度。
だが、明らかに強くなっている。
ラウル「お前、さっきより火力上がってねぇか?」
カグラは舞いながら笑う。
カグラ「気づいちゃった?あたいの火」
ラウル「やっぱりか」
カグラ「そう。これが――」
カグラが地面に足を着く度、火が強くなる。
カグラ「あたいの戦い方」
その場で回転し、髪が広がる。
その髪の先端で、火が円を描く。
カグラ「舞えば舞うほど、あたいの火は強くなる!」
カグラは舞い続ける。
そして、それに呼応するように周りの火が大きくなる。
最初は指先ほどだった火。
それが今では、巨大な火の軌跡を描いている。
その時。
カグラの火が、ラウルの腕まで燃え広がる。
じわじわと身体を焼き続ける。
それなのに、ラウルは笑った。
ラウル「まさか、お前もなんてな!!」
その瞬間、ラウル自身の炎が全身を包み込んでいく。
ラウル「はぁぁ!!」
カグラの火の上から覆い被さっていく。
赤く燃えていた火が、より激しい炎の中へ呑み込まれていく。
消そうとしたのではない。
さらに燃やした。
カグラ「……えっ」
自分の火が見えなくなる。
その代わり、ラウルの炎に塗り潰されていく。
そして数秒後。
残っていたのはカグラの火ではない。
ラウルの炎だけだった。
カグラ「……!」
カグラは驚いていた。
自身の火が消されたことにではない。
ラウルの炎が、さっきよりも膨れ上がっていることに。
カグラ「……ちょっと待って。まさか、あんたも……」
カグラの表情が変わる。
カグラ「あたいと同じ?」
ラウル「……」
一瞬の沈黙。
2人の間で、火だけが燃える。
そして、ラウルの口角が上がった。
ラウル「あぁ、そうだ!」
拳を強く握る。
ラウル「俺の能力は、戦えば戦うほど火力が上がる!!お前と同じだ!!」
数秒、カグラも黙っていた。
そして。
カグラ「……ははっ。あははっ!」
ラウルと同様、笑っていた。
カグラ「最高じゃん!!」
ラウル「だろ!!」
2人の炎と火が応えるように燃え上がった。
ラウル「こっからは俺とお前の火力勝負だ!!」
カグラ「いいよ!お互い本気でいこう!!」
その広場だけ、周りよりも温度が上がっていた。
空気が熱によって歪む。
そして、炎と火が再び衝突する。
To be continued…
第59話 炎火高揚




