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未完成のまま― 最適解に選ばれなかった僕たちへ ―  作者: はるねこ
第2期

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第57話 狂う羅針盤

光が舞っていた。

無数の光の粒子が、静かに空へと昇っていく。

1人の男が倒れていた。


ケイル「……」


背中に深い切り傷を負っていた。

もう、動かない。

身体の端から、少しずつ輪郭が失われる。

その光景を、1人の男が見下ろしていた。

リンネ。

身体には傷一つない。

息も静かで、ケイルが消えていくところを見ている。

やがて、身体が完全に粒子へ変わる。

最後の光が、空へ消えた。


リンネ「……」


視線を横に向ける。

少し離れた場所。

そこには、2人。


レン「……」


倒れたまま動かない。

呼吸は僅かに残っている。

だが、意識はない。

そして、レンを支えるように座り込むアイ。

意識はあるものの、身体はボロボロ。

リンネは、そんな2人を見ている。


リンネ「……アイ」


アイ「……?」


リンネは、ある方向を指さした。


リンネ「この方向にエデンがいる。早く行ってこい」


アイ「……エデン?」


リンネとアイの間に、一瞬空白が生まれる。


リンネ「そうかお前、エデンとは面と向かって会ったことがないのか。エデンは何でも治せるやつだ。お前と、」


視線をレンへと向ける。


リンネ「そいつ。もう虫の息だ。もうすぐ死ぬぞ」


アイ「……!」


アイはレンを見る。

呼吸は浅く、顔色も悪い。

リンネの言う通り、一刻を争う。


アイ「……うん」


震える手で身体を起こす。

そして、レンの身体も起こそうとする。

その途中で、動きを止める。


アイ「……リンネくん」


リンネ「何だ?」


アイの表情が和らぐ。

少しだけ、笑みを浮かべた。


アイ「……私たち、あの時まで敵同士だったのに助けてくれたんだね♡」


一瞬、沈黙する。

だがリンネは、表情を変えずに。


リンネ「勘違いするな。僕はシオン様の命令に従っているだけだ。命令されれば、お前たちを殺すことだってあるんだぞ」


アイ「……そうなの」


淡々と、それだけ。

そこに殺意はあるのか、ないのか。

アイには分からなかった。


リンネ「話は終わりだ。早く行け、手遅れになるぞ」


アイ「……うん」


アイは、レンの身体をゆっくり起こす。


アイ「よい……しょ……」


レンの腕を肩へ回す。

背中にレンを背負う。


アイ「……っ」


膝が沈む。

アイ自身も、大きなダメージを負っている。

普通なら立てるはずもない。

それでも。


アイ「……レンちゃん、大丈夫だからね♡」


返事はない。

それでも呟く。


アイ「絶対……助けるから♡」


一歩ずつ、ゆっくりと、言われた方向へ進む。

その後ろ姿を、リンネは黙って見つめていた。

数歩進んだところで、アイが振り返る。


アイ「リンネくん……ありがとう♡」


リンネ「……」


返事はなかった。

アイは、それ以上何も言わず前を向く。

レンを背負い、歩いていく。

やがて、2人の姿は崩れたビルの向こうへと消えていった。

その場に残ったのはリンネだけ。

そして、先程までケイルが倒れていた場所を見る。

そこにはもう、何も残っていなかった。


リンネ「はぁ……」


静かな風が吹く。

最後まで残っていた一つの光の粒子が、リンネの横を通り過ぎ、空へと消えていった。



道路の真ん中を、1人の男が走っていた。


???「ったく……」


周囲を見る。

誰もいない。

あるのは永遠に連なるビルのみ。


ラウル「マジで誰もいねぇな」


ラウル《指数(インフェルノ)加熱(・ブースト)》


足を止めずに走り続ける。

崩れたビル、亀裂の入った道路。

所々に戦いの跡が残っている。

だが、なかなか人とは出会わない。


ラウル「誰でもいいから、仲間いねぇかな」


1人で戦うことは嫌いではない。

むしろ、戦えるならそれで構わない。

だが、ハルトが言っていた。

絶対に1人で戦うな、と。

命がかかっている以上、無茶な行動はできない。


ラウル「ハルトでも、ケイルでも、誰でもいい。とにかく誰かと合流しねぇと」


その時、頭の中にもう1人浮かんだ。


ラウル「クロウは……」


数秒考える。


ラウル「……めんどくせぇからいいや」


即座に候補から外した。


ラウル「他のやつがいいな」


そんなことを呟きながら走っていた。

その時。

機械的な音声が流れる。


《ティレスの戦闘不能を確認》


《チームリオネの残存プレイヤー数:17》


ラウル「お、3人目撃破か!誰がやったか知らんが、めっちゃ調子いいじゃねぇか!よっしゃ、このまま全員ぶっ潰してやるぜ!!」


そして、続けて機械のノイズが走る。

また音声が響こうとしていた。


ラウル「なんだ?もう1人撃破か!?」


《ケイルの戦闘不能を確認》


《チームクリオの残存プレイヤー数:19》


ラウル「……は?」


一瞬、何が起きたか分からなかった。

すぐに足を止める。

この世界はバトルロイヤル。

もちろん、誰かがやられることはある。

それは敵も味方も。

だが、最初に消えたのがケイルだった。

あの、ケイルが。


ラウル「……誰だ、誰がやりやがった」


拳を強く握る。

軋む音が聞こえる。


ラウル「……ぜってぇぶっ殺してやる」


怒りを露わにしながら、また走ろうとした。

その時。

目の前のビルとビルの間、そこに円形の広場が見える。

ただ、ビルばかりのこの世界に、ぽつんと広場があることに違和感を感じた。


ラウル「……なんだ、あそこ?」


何か、いる。

姿が見えたわけではない。

音が聞こえたわけでもない。

それでも、何か感じる。


ラウル「熱……?」


気温が僅かに高い。

いや、それだけじゃない。

身体の奥。

自分の中にある炎が、何かに反応している。


ラウル「……」


まるで、炎が炎を呼んでいるような。

そんな、奇妙な感覚。


ラウル「……おもしれぇ。気分転換に行ってみるか」


口元が上がる。

迷う理由などなかった。

ラウルは広場へ向かう。

そして、円形の広場へ足を踏み入れた。


ラウル「……っ!」


そこに、1人の少女がいた。

巨大な燭台が円状に並び、赤い炎が揺れている。

その中央で、踊っている。


ラウル「なんだあいつ?」


最初はそう思った。

だが、違う。

一歩踏み出し、身体を回す。

腕を滑らかに伸ばす。

足を運び、再び回る。

一つ一つの動きに無駄がない。

静かなのに、力強い。


ラウル「……」


口を開けたまま見ていた。

“踊り”というより“舞”。

その言葉の方が近かった。

少女が一歩踏み出す。

その足元から。


――ボッ


小さな炎が生まれる。


ラウル「……!」


少女が身体を回す。

長い髪が弧を描く。

その軌跡を追いかけるように、炎が舞う。

右手を伸ばし、左手を返す。

炎が出て、消える。

まるで、少女と炎が一つになっているようだった。


ラウル「……綺麗だ」


いつの間にか、ラウルは見とれていた。

少女の舞に引き寄せられていた。


ラウル「……すげぇ」


少女はまだ気づいてない。

一歩、二歩と炎を纏い回る。

大きな炎が、少女の周囲に円を描く。

そして、少女が静かに腕を伸ばした。

炎が一斉に消える。

舞が終わったらしい。


――パチパチパチ


ラウルは、自分でも気づかないうちに拍手をしていた。


少女「……!」


ラウル「……あ」


少女が振り返る。

そして、目が合った。

互いに相手を見る。


少女「……誰?」


その瞬間。

お互いの視界に文字列が浮かび上がる。


《接触確認》

ラウル

・属性:炎

・ランク:Ⅳ《異常個体(イレギュラー)》


《接触確認》

カグラ

・属性:火

・ランク:Ⅴ《超越者(オーバー)》


ラウル「……!やっぱりか!」


カグラ「ふぅん……」


さっきまで美しく舞っていた少女のその雰囲気が、一瞬で変わる。


カグラ「あんた、炎なんだ。あたいと似てるね」


ラウル「へぇ、こんな偶然あるんだな」


そして、カグラは少し笑みを浮かべる。


カグラ「ちょうど退屈してたんだ。ねぇ、あたしと勝負しない?どっちがよく燃えるか」


ラウルも笑い始めた。

完全に、戦いを楽しむ目で。


ラウル「いいぜぇ、そういうの大好きだ!」


仲間を探していた。

そのはずだった。

だが、もうそんなことはどうでもいい。

心の底で、闘争心が燃え始めた。

ラウルは両手に炎を纏う。


ラウル「早速始めようぜ!!」


カグラ「うん、いくよ!」


燭台の炎が強くなる。

火と炎。

熱い風が2人の間を通り抜けた。

To be continued…

第58話 炎火再燃

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