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未完成のまま― 最適解に選ばれなかった僕たちへ ―  作者: はるねこ
第2期

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第50話 盤上の終着点

ソラとレン、お互いに血を流しながら向かい合う。


ソラ『このままじゃ、長引くほど不利……。今すぐにでも決着をつけないと……』


ソラは肩を押さえながら息を整える。


一方。

ケイルはレンに視線を向ける。

レンとアイを引き離している雷。

ケイルにしか見えない磁力を持った雷。

その雷光が、僅かに弱まっていた。


バチッ……


火花が小さくなる。


ケイル『あっちの維持にも体力を使う。このままじゃ、保ちきれない……』


アイはそれを見逃さなかった。


アイ「あれれ〜?弱くなってるよぉ〜。近づいちゃってもいいのかな〜♡」


一歩踏み出す。

今まで弾かれていた身体が、ほんの少しだけ前へ進む。


ケイル『まずいっ……』


ケイルは咄嗟に両手を広げる。


ケイル「これ以上近づける訳にはいかないんだ」


轟音が響く。

八本の雷柱が、アイを囲うように大地へ突き刺さる。

雷柱同士を無数の稲妻が結び、一瞬で巨大な雷の檻が完成した。


ケイル「雷牢監獄(ボルト・アビス)!」


激しい放電が辺りを包む。


アイ「また閉じ込められちゃった♡」


ケイル「ここから先には行かせない」


アイは檻を見上げる。

上も左右も塞がれている。

それでも、笑った。


アイ「でも、今回は通れるね♡」


ケイルの表情が変わる。


ケイル「……え?まさか!?」


アイは一歩踏み出した。


バチィィィッ!!


全身を雷が駆け巡る。

皮膚が焼ける。

煙が立ち昇る。

それでも、アイは止まらない。

二歩、三歩。

焼ける痛みなど意にも介さず、雷の檻を突き進む。


アイ「えへへ……♡」


ケイル「やめろぉ!!」


叫びも虚しく、アイは雷の檻を突き破った。

同時に。


ケイル「ぐあっ!」


ソラ「がっ……!」


焼けるような激痛が二人の全身を襲う。

ソラの足が止まる。


ソラ『なんだ!?何があった!?』


レンは、その瞬間を見逃さない。


レン「百花乱突(ブルーム・ラブ)」


短剣が閃く。

一撃。

二撃。

三撃。

ソラは辛うじて避ける。

しかし、その動きは先ほどまでとは明らかに違っていた。

速さが落ちている。

反応が鈍っている。

積み重なった痛みが、確実に身体を蝕んでいた。

レンは口元を吊り上げる。


レン「さっきまであんなに私のことを舐めてたのにもう限界?情けないわね」


ソラは荒く息を吐き、レンを睨む。


ソラ『まだ……まだだ……』


その頃、ケイルもまた肩で息をしていた。

肩から腕へと走る激痛。

雷の檻を突破された反動に加え、アイが負った痛みが次々と流れ込んでくる。

雷を纏う身体は先ほどよりも明らかに鈍い。


ケイル「……っ」


歯を食いしばりながら、レンへ伸ばした左手を握る。

2人を引き離している雷。

その光は、今にも消えそうなほど弱々しかった。


アイ「限界みたいね♡」


ケイルは黙ったまま雷を維持しようとする。

だが。


バチッ……


火花が弾けるたびに、雷は細く、頼りなくなっていく。


アイ「もう少しだぁ〜♡レンちゃ〜ん♡」


アイは両手を上げて走り出す。

今度は押し返されない。

一歩、もう一歩。


ケイル「……くそっ」


止めようと雷を放つ。


しかし、その雷は以前のような勢いを失っていた。

アイはそのまま雷を突き抜ける。


バチッ!


雷が身体を走る。

それでも、足は止まらない。

ただ、痛みが返ってくるだけ。

そして。


パリンッ……


張り詰めていた磁力が、音を立てるように消え去った。


ケイル「……!」


レンとアイの距離を隔てていた見えない壁は、完全に失われた。

アイは嬉しそうに抱きつく。


アイ「やっと会えたぁ♡」


レン「もう、あんまくっつかないでよ」


2人が肩を並べる。

その姿を見た瞬間、ソラの表情が曇る。

レンの意識誘導。

アイの痛覚共有。

互いの能力を補い合う、最悪の組み合わせ。

ケイルはソラと合流する。


ケイル「ごめん、しくじった」


ソラ「いや、いいんだ。それに、やることはもう分かるよな」


ケイル「……うん」


言葉は、それだけで十分だった。

2人とも理解していた。

このまま長引けば勝機はない。

ソラはコインを強く握り締める。

ケイルは残った雷を身体へ集める。

互いに視線を交わす。

その一瞬で、考えは一致した。


『2人まとめて、ここで終わらせる』


ケイル「チャンスは一回だけ」


ソラ「後のことはどうでもいい。死ぬ気で全部をぶつける」


ケイル「……分かった」


レンとアイは一歩距離を置く。

体勢が変わる。

レンが踏み出す、その瞬間。

ケイルの口元が緩む。


ケイル「……いくよ」


ケイルはゆっくりと右手を掲げる。

指先を鳴らす。


パチン


その瞬間だった。


バチィィィッ!


レンとアイの身体が勢いよく互いへ引き寄せられる。


レン「っ!?」


アイ「きゃっ♡」


二人の身体が激しくぶつかる。

まるで見えない鎖で縛られたかのように、身体は密着したまま離れない。

レンは必死に後退しようとする。

だが、動けば動くほど反発ではなく吸引する力が2人をさらに引き寄せる。


ケイル「雷には二つの役割がある」


レン「……?」


ケイルは指を立てる。


ケイル「一つは、身体に極性を刻む雷。もう一つは、極性を運ぶ雷」


ケイルは目線をアイに向ける。


ケイル「君には最初から陽極を刻んでいた。そして、最後に放ったあの雷は、陰極の雷。でもそれは、刻むものではない、纏わせるだけの雷」


レンは息を呑む。


レン「まさか……」


ケイル「君がレンに触れた瞬間、陰極はレンに移った。元々極性を持っていない者は、自動的に極性が刻まれる。レン、君は既に陽極が消えているからこれに適用される」


パチンッ


2人の磁力が強まる。


ケイル「磁力は、離すことも、引き寄せることもできるんだよ」


レン「そんな……!」


アイ「あらぁ♡動けないわぁ♡」


ケイルはソラへ視線を送る。


ケイル「今だ!」


ソラは既に、地面に手をつけていた。

次第に地面が揺れ出す。


ソラ「はぁぁ!!」


巨大な水流が地面から巻き上がる。

一本。

二本。

三本。

いや、数え切れない。

戦場中の水がソラの元へ集まり始める。

水滴一つ一つが、青白く輝いていた。


アイ「すごぉい……♡」


アイも笑みを消す。

ソラは右手を前へ突き出した。


ソラ「これが僕の全てだぁ!!」


巨大な濁流が生まれる。

それはもはや水ではない。

巨大な龍のような奔流。

戦場そのものを飲み込む津波だった。


レンは叫ぶ。


レン「アイ!」


アイは笑う。


アイ「もちろん♡」


2人は手を重ね合う。

レンが意識を一点へ集中させる。

アイは全身に刻まれた傷から溢れる痛みを力へ変える。

2人の手が前へ突き出す。


レン・アイ「同調双極恋愛(デュアル・ラブハート)!!」


2人の前に巨大な衝撃波が形成される。


ドォォォン!


水流と衝突。

地面が砕け、空が震える。

衝撃だけで木々が吹き飛び、岩盤に無数の亀裂が走る。

互角。

誰もがそう思った。


ケイル「これで終わりじゃないよ」


ケイルは右手を、水流へ向ける。


バチッ。


黄色の雷が奔流へ飛び込んだ。

水全体が黄色へ染まる。


レン「また威力が……」


押し返していたはずの濁流が、さらに勢いを増していく。


アイ「もっと……もっとよぉ〜!!」


痛みを再び力へ変える。

衝撃波はさらに巨大になる。

二つの力がぶつかり合う。

均衡。

その均衡が数秒続く。

ケイルは静かに目を閉じる。


ケイル『僕の目的はこれじゃない!もっと、もっと全力を出せ!!』


ケイルの瞳が開く。

黄金色の雷光が宿る。

戦場一帯を覆っていた水が、一斉に黄色の光を帯び始めた。

次の瞬間。

さっきまで大量にあった水が、音もなく消えた。

あれほど荒れ狂っていた濁流は、まるで最初から存在しなかったかのように、その姿を失う。

残されたのは、空間を満たす無数の光だけだった。

2人の表情が凍りつく。


レン「……何をしたの?」


そして、ケイルは地面へ拳を叩きつける。


ケイル「轟けぇぇぇッ!!」


ゴォォォン!!


大地が砕けた。

その瞬間。

雲一つなかった空が、一瞬で黒く染まる。


ゴロゴロゴロ……


重々しい雷鳴が世界を包み込む。

黒雲の中心が渦を巻き始める。黒雲の中心が渦を巻き始める。

そこへ、黄色の雷光が一点へ集束していく。

まるで天そのものが一本の槍を作り上げるように。

次の瞬間。


ゴォォォォォォッ!!


天を裂く巨大な雷が降臨した。

一本ではない。

幾重にも絡み合った雷柱。

それは龍のように唸りを上げながら大地へ落ちる。

世界が白く染まる。

耳をつんざく轟音。

視界を埋め尽くす黄金の閃光。

雷柱はレンとアイ、2人の目の前へ吸い込まれ、無数の火花を散らしながら戦場を駆け抜ける。

当てるのではない。


ケイル「それでいい。僕の狙いは君たちじゃない。この一瞬だけで十分だ」


無数の火花が戦場を彩り、世界が眩い閃光に包まれる。

水の電気分解により生まれた大量の水素。

巨大な雷により生まれた無数の火花。

ケイルの本当の目的は―― “水素爆発”。


ケイル「メラ着火ファイヤー」


その瞬間。

戦場全体が白く染まった。

閃光。

爆音。

世界が揺れる。

ソラは腕で顔を庇う。

衝撃波が四方八方へ吹き荒れる。

地面は大きく抉れ、巨大なクレーターが形成される。

爆風は雲を吹き飛ばし、空へ一本の光柱が突き抜けた。


しばらくの静寂。

舞い上がった砂煙だけが戦場を包む。

やがて、風が吹く。

煙がゆっくりと晴れていく。

その中心、レンとアイは互いを支え合うように倒れていた。

全身は傷だらけ。

レンは意識を失っている。

アイの呼吸は浅い。

立ち上がる力すら残っていない。

だが、次の瞬間。


ソラ「がっぁぁぁ!!」


ケイル「っ……!!」


全身へ激痛。

2人は倒れ込む。

最後の超火力、その全部が返ってくる。


ソラ「くそっ……!まだ倒しきれてないのかよ……」


身体が動かない。

呼吸すら苦しい。

ケイルも雷が消えかける。


ケイル「……最悪だな」


身体が言うことを聞かない。

立ち上がろうとしても、全身が震える。


ソラ「早く……トドメを……」


最後の力を振り絞り、ソラは立ち上がる。

一歩ずつ、ゆっくり近づく。

静かに水を集める。

掌の上で、一枚の水刃がゆっくりと形を成していく。


ソラ「これで……終わらせる……」


その声に反応したのか、アイの瞼がわずかに震えた。

薄く目を開ける。

霞む視界の中で、ソラを見つめる。

そして、小さく笑った。


アイ「……えへへ♡」


血を吐きながらも、その笑みだけは崩れない。


アイ「最後まで……私に構ってくれるんだぁ……♡嬉しい……♡」


ソラは何も答えない。

水刃を握る手に力を込める。

アイはゆっくりとレンへ顔を向けた。

震える腕で、そっとレンの手を握る。


アイ「レンちゃん……一緒なら……怖くないよぉ♡」


息を一つ吐く。

そして再びソラを見つめ、優しく微笑んだ。


アイ「だから……最後は……2人一緒に愛してね♡」


ソラの瞳が揺れる。

それでも迷いはない。


ソラ「流水刃(りゅうすいじん)」


水刃が振り下ろされる。

その時。


スゥゥン……


ソラ「……っ!?」


水刃は跡形もなく消えた。

ソラの目の前に、いつの間にか1人の男が立っていた。

黒い髪が揺れる。

静かに顔を上げる。

ソラの瞳が大きく開かれた。


ソラ「……誰だ……お前?」


男は無言のまま、ソラを真っ直ぐ見据える。

その瞳には、一切の感情が宿っていなかった。

そして、目の前に文字列が生まれる。


《接触確認》

リンネ

・属性:無

・ランク:Ⅵ《到達者(アライバル)》


To be continued…

第51話 絶対否定

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