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未完成のまま― 最適解に選ばれなかった僕たちへ ―  作者: はるねこ
第2期

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第47話 重すぎる心

最初に変化を感じたのは圧だった。

さっきまでもは比にならない、全く違う二つの圧力。

今すぐにでも押しつぶされそうなくらい。

その時。


レン「瞬閃刺突(ブリッツ・ラブ)!」


高速の突き。

その突きは、さっきよりも遥かに速い。


ソラ『速っ!避けきれない……!』


咄嗟に横に避ける。

だが、間に合わなかった。

レンの鋭い短剣がソラの左腕を貫く。


ソラ「ぐっ……!」


真っ赤な血が大量に溢れ出る。


レン「あら、いい色してるじゃない」


ソラ「くそっ……」


ソラは、小さな穴の空いた腕に水が集まる。

次第に傷が埋まり、簡易的な止血を完了する。


レン「こんなのまだ準備運動なんだから!」


レンは止まらない。


レン「百花乱突(ブルーム・ラブ)!」


連続の突き。

速すぎるあまり、一つ一つの突きで衝撃波が生まれる。


ソラ『もう、これを使うしかない……!』


ソラは避けながら、ポケットから何かを取り出す。

太陽の光を反射する。

父の形見のコイン。


ソラ「確率偏向投擲(オッズ・キャスト)!」


コインを真上へと飛ばす。

その軌道が、不自然に変化する。


レン『えっ、何よその動き?』


本来当たるはずのない、レンの短剣へと向かう。


ソラ「低確必中水刃(ロー・プロバリティ)!」


その軌道に沿うように、水刃が走る。

短剣と衝突し、突きの攻撃が止まる。


レン「何よこれ!?意味わかんない!」


その時、右からアイが攻めてくる。

包丁を両手で握りしめながら。


アイ「次は私よぉ〜!受け取ってぇ〜!」


だが、レンよりは動きが遅い。

簡単に避けられる――はずだった。


ソラ「……?」


何故かレンから目を離せない。

アイを警戒するべきなのに、目線がレンから動かせない。

レンが笑う。


レン「ちゃんと効いてるわね」


ソラ「……何をした?」


アイがすぐそこまで攻めてくる。

避けたくても、意識がレンから離れない。


アイ「えいっ!」


ソラの右肩を裂く。

だが、アイが思っていたよりも浅い傷。

ソラはギリギリ、当たらない確率へとズラした。


ソラ「流刃(リュウジン)星列(メテオライン)!」


無数の水刃が空中に浮かぶ。

そのまま落ちるのではなく、2人に向かって流れるように。


アイ「わぁ〜綺麗!」


レン「アイ、任せるわ!」


レンはアイの背後へ隠れる。

そしてアイは、両手を広げる。

まるで、全てを受け止めるかのように。


アイ「その痛み、全部もらうわぁ〜!」


ソラ『は?まじで?』


水刃が次々とアイへ直撃する。

当たる度、服が破け、血が溢れる。

それでもアイの表情は、笑ったままだった。

まるで痛みを感じてないかのように。

そして、水刃が止む。

全て、受けきった。

本来なら、肉が裂け、人の形を保つことは難しい。

なのにアイは、擦り傷のような軽傷で済ました。


アイ「ねぇ、もう終わり?残念」


次の瞬間。

ソラの全身に激痛が走る。

まるで、刃に切り裂かれたかのような。


ソラ「がぁっ!?」


思わず膝をつく。

身体は切れていない。

でも、痛みに襲われる。


ソラ『どういうことだ……!まるで、痛覚が跳ね返ってきたみたいだ……』


アイは嬉しそうに笑う。


アイ「私の痛みは、あなたの痛み。お互い、痛みで繋がるのよ♡」


アイの能力:離愛不能(ネバー・ハート)

受けた痛みは、その原因となった相手へ等しく共有される。

また、自ら負った痛みも共有対象となる。

さらにアイは、驚異的な耐久力により、受けた攻撃は痛みこそ伴うものの、肉体への損傷は最小限に抑えられる。

その身は痛みに慣れ、傷を恐れない。

ただし、共有されるのは痛覚だけであり、致命傷や身体的損傷が相手に及ぶことはない。


ソラ『痛覚の共有か?それならだいぶ厄介だな……』


アイ「痛みこそが本物の愛よ♡」


アイの目がどんどん狂気を増していく。


アイ「だから、もっと傷つけてぇ!」


ドゴォォン!


アイの速度が一気に上がる。

ソラは痛みに耐えながら起き上がる。

包丁を振り回しながら、ソラを追い詰める。


ソラ『速っ!?さっきよりも格段に速い!』


アイは、傷やダメージを受けるほど、攻撃力やスピードが上昇する。

だがこれは、能力によるものではない。

アイという存在に刻み込まれた、本能そのものである。


レン「アイ、ノってきたじゃん」


アイ「だってぇ〜、この子いーっぱい傷つけてくれるんだもん♡」


ソラ『まじで怖ぇ……』


ソラは水で包丁を受け止める。

できるだけ傷つけぬように、反撃はしない。

だが次の瞬間。

レンが視界に入る。

意識が吸われる。


ソラ『また目が離せない……!こっちはどういうことだ……?』


レンの能力:執着恋鎖(ラブ・チェイン)

相手にダメージを与えるほど、その相手の意識を自身へ引き寄せる。

蓄積したダメージに比例して効果は強まり、他の敵へ注意を向けようとしても、レンから意識を逸らすことが困難になる。

最終的には、レン以外への対処がほぼ不可能となる。


ソラ『ダメだ……!意識が逸らせない……!』


その隙。

アイが横から迫る。


アイ「愛撃解放(バースト・ハート)!」


ソラ「っ――!!」


愛を全て解放。

大きく吹き飛び、ビルへ激突。

ソラは息を荒らげる。

痛い。

全身が痛い。

集中が削がれ、痛覚が共有される。


ソラ『この組み合わせ、最悪だ……』


2人はゆっくりと近づく。

まだまだ、余裕がある。


レン「ねぇ、もうフラフラじゃない」


アイ「可愛いねぇ〜」


ソラはゆっくり立ち上がる。

その目だけは、死んでいなかった。


ソラ『せめて、一対一に持ってければ……勝率はまだある……。でも、どうやって……』


周りを見渡す。

どこを見てもビルばかり。

だが、そこにはあった。

巨大な貯水タンク。

一つだけではない。

等間隔に点々と設置されている。


ソラ『2人を引き離す方法……これしかない……!』


突然、貯水タンクが揺れ出す。

その振動が、地面へと伝わる。


アイ「あら?何かしら?」


アイはまだ楽しそうに笑う。

レンの目が細まる。


レン「何か来るわ」


そして、ソラは両手を広げる。

何かを掴むように、静かに構える。


ソラ「相棒に会うためだ……絶対に負けられない……」


その瞬間、貯水タンクが壊れる。

大量の水が溢れ出し、一気に広がる。


レン・アイ「!?」


そしてソラも、少し笑う。


ソラ「もうひと頑張りだな」


To be continued…

第48話 分断作戦

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