第48話 分断作戦
大量の水が一気に流れ込む。
およそ3mの波が発生する。
ソラを含め3人が、水流に巻き込まれた。
レン「ちょっ……!?」
アイ「わぁ!」
一瞬にして戦場が変わる。
そこはもう、水の世界。
レン『もう!何も見えないじゃない!あいつどこいったのよ!』
水の中では上手く見えない。
視界が水に奪われる。
ソラ『やっぱりだ』
ソラは波に逆らいながら泳いでいる。
そして、レンの能力がだんだん弱まっていく。
ソラ『あっちが見えなきゃ能力は発動しない。今がチャンスだ』
ソラだけが位置を把握している。
水の流れ。
振動。
呼吸。
全てが分かる。
レン『あいつの目的は何なのよ?まさかこの水の中で私たちを仕留めるんじゃないわよね!いや、無理よ!所詮水の量は有限、こんな広範囲にばらまいたらすぐにでも止むわ。それなら本当の狙いは――』
波の高さが段々と低くなる。
勢いも弱まり始める。
レン『私とアイを分断!水の勢いで離れさせてサシに持っていくつもりね!でも残念。私とアイは一心同体、多少離れようがお互いの位置くらい分かるわ!』
レンは水中で動きを止める。
水流が止むのを待っているのだ。
ソラ『そろそろかな』
ソラは何かを待っている。
波の高さも、もうすぐ顔が出るほど低くなる。
その時。
ザバァン!
突然後ろから襲われる。
アイが勢いよく飛び出した。
アイ「みーつけた〜♡」
ソラは振り向く。
だが、驚きはしない。
攻撃もしない。
代わりに、アイの周囲の水が浮かび上がる。
アイ「へ?」
その場にあった大量の水が段々と集まる。
波は消え、水の世界が消滅する。
その代わり、ここにあった全ての水で、アイを包み込んだ。
ソラ「水牢監獄」
巨大な水球が、アイを完全に閉じ込める。
アイ「んっ……!?」
レン「アイ!?今助けるわ!」
レンは勢いよく駆け出す。
短剣を前に突き出し、水球を割ろうとする。
だがその時。
目の前にコインが過ぎる。
その直後、軌道に沿って水刃が流れる。
レン「っ!」
レンは一瞬足を止め、後ろへ後退する。
ソラの手元に、ありえない軌道でコインが帰ってくる。
ソラ「せっかくのチャンス、無駄にはしないよ」
レン『ちっ、読み間違えた!水流で距離を置くんじゃなくて、1人を閉じ込めてサシに持ってかれるなんて!まさに分断違い……』
その時。
ソラにも苦しさが来る。
ソラ「ぐっ……!」
息苦しい。
頭が痛い。
アイの呼吸が不可能となった今、ソラにもその分が共有される。
それでも。
ソラ「っ……まだだ!相棒に会うまでは……絶対に倒れない!」
レン「何よ!相棒相棒って!もういいわ!あんた!これから一生私以外のこと考えられなくさせてやるんだから!」
レンは一直線に飛んでくる。
地面が割れるほどの超高速。
絶対に避けられない。
絶対に当たる。
ソラ『運は狙うものじゃない、命を賭けて掴むものだ!』
だがソラは、その常識すら覆してしまう。
レンが真っ直ぐ狙った心臓。
ソラを貫く直前、短剣が先端から真下へと落下した。
今までで一番、不自然なほどに。
レン「え……?どう……して……?」
それは、過程がそれを否定した結果。
極限状態に達した時。
死を超えた自分に手を差し伸べた時。
ある条件下によって達成する。
覚醒条件
《この命を賭して、隣を守る》
――再発
『制限解除』
エグシヴの再発が起こる。
レンは笑っていた。
いや、笑うしかなかった。
目の前に立つソラから放たれるその圧力。
全てを覆すほど別格だった。
ソラ「確率操作水流」
何も無い空間から、確率そのものが水となって現れる。
その全部が、ソラの意思に従っているようだった。
ソラは静かに一枚のコインを親指に乗せる。
カンッ
弾かれた銀色のコイン。
高く宙へ舞い上がった。
ソラ「じゃ、行くよ」
その瞬間。
宙に舞ったコインが軌道を変える。
そのままレンの方向へと飛ぶ。
レン「こんなコインなんかで私を止められないわ!」
地面を深く踏み込む。
そして、短剣でコインを弾き返す。
だが、衝突する寸前。
コインはそれを避けるかのように軌道を変える。
レン「!?」
コインはそのまま、レンの左目のすぐ上に当たる。
その時点で、もう遅かった。
水刃はその軌道通りに流れ、レンの左目を切り裂いた。
レン「ぁああっ!」
視界が赤に染まる。
反射的に左目を押さえ、視界の半分が闇に飲まれた。
レン「よくも!!私の目を!!」
コインがソラの元に帰ってくる。
ありえない反射をして。
ソラ「ごめんよ。君の能力が厄介だから、仕方なくな。可哀想だから右目は残しておくよ」
レン「ちっ!私を舐めやがってぇ!!」
左目を閉じながら、一気に距離を詰める。
そして、ソラがコインを正面へ弾く。
その瞬間。
レン『かかったわね!』
瞬間移動のような速度で、一瞬で背後へ回り込む。
コインはそのまま落ちていく。
レン「瞬閃――」
ソラは振り向く。
ピンポイントで、レンと視線が合う。
その目は、とても静かで、とても深い。
コインが地面に落ちた瞬間。
レンの脇腹が裂かれていた。
レン「ぐっ……!」
レンが膝を付く。
いつの間にか水刃が迫っていたのだ。
地面を跳ねたコインがソラの元に戻る。
ソラ「別に、コインの軌道に沿ってそれが流れる訳じゃないよ。ただ君に当たらない確率を反転させただけ」
ソラは一旦、レンとの距離を置く。
レン「そんなの……普通じゃない……」
ソラは微笑む。
その瞳には、迷いなど一切なかった。
ソラ「今の僕には、“普通”はただの仮定にしか過ぎないよ」
その時だった。
巨大な水球の中。
アイ『ふふっ』
ゆっくりと包丁を左腕に当てる。
ザシュッ
皮膚が裂ける。
赤い雫が水へ溶けていく。
同時に。
ソラ「……!?」
左腕が突然痛む。
まるで、何かに斬られたように。
ソラ『……まさか』
水球の方を見る。
その中で、アイが笑っている。
その腕には、今できたばかりの切り傷。
さらに。
ソラ「がっ……!!」
ソラの身体へ激痛。
膝が地面に付く。
頭が割れるほど痛い。
アイを閉じ込め続けるほど、ソラへの負担も増えていく。
ソラ『くそっ……まだだ……』
限界が近い。
水が揺れ、形が崩れ始める。
共有された痛みにより、水球の制御が難しくなる。
アイ『もう無理でしょぉ♡』
その瞬間。
バシャァァン!
水球が崩壊する。
アイが解放された。
ソラ「っ……!」
一気に水が流れ込む。
アイはすぐさまレンの元へ駆けつける。
アイ「レンちゃ〜ん、大丈夫〜?」
レンは脇腹を押さえながら、ゆっくりと立ち上がる。
レン「……大丈夫。こんな傷で負けるほど安くないわ」
再び、一対二。
しかも、ソラはかなり消耗している。
ソラ『動けっ!速く動けっ!!』
だが、身体が言うことを聞かない。
ソラの肉体は既に限界だった。
レン「終わりね。今までの仕返し、百倍で返してあげるわ」
アイ「レンちゃんをいじめたお返しよぉ〜」
2人の目が狂気で染まる。
レン「極速貫撃!」
アイ「慈愛奔流!」
左右同時に動く。
完全に包囲される。
ソラ『まずいっ――』
その瞬間、空が光る。
バチィィィン!!
巨大な雷が落ちる。
レン「っ!?」
アイ「きゃっ!」
2人が後方へ吹き飛ぶ。
ソラの目が見開く。
ソラ「あ……相棒……!?」
黄色の雷の中。
1人の男が立っていた。
???「残念」
男は振り返る。
鋭い目で、ソラを見つめる。
ケイル「僕だよ」
To be continued…
第49話 逆境の一手




