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未完成のまま― 最適解に選ばれなかった僕たちへ ―  作者: はるねこ
第2期

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第46話 死の恐怖

シオンは音もなく地面に着く。


ハルト「お前がシオンか」


その瞬間、シオンの視線がハルトへ向く。


ゾクリ


全身が粟立つ。


ハルト『……なんだ……こいつ』


強い。

とかじゃない。

“死”、そのものみたいな圧。


シオン「ハルト……だったな、今はお前に用はない。そこをどけ。用があるのはセキだ」


ハルト「なぜセキに用がある。理由を説明しろ」


シオン『セキめ、こいつに何か話したな。やはりタダでは済ませない』


死の気配が強くなる。

シオンの身体から、黒い何かが溢れ出す。


シオン「これ以上妙な真似をする前に、そいつを殺しておく」


セキ「……!?」


セキの肩が震える。

ハルトはセキを守るように立つ。


ハルト「なぜた。なぜ攻撃するんだ。仲間じゃないのか」


シオン「……仲間?」


初めて、声へ感情が混じる。

不快感。

嫌悪感。

そして、殺意。


シオン「理解できないな」


その瞬間、シオンの瞳が光る。

白でもなく、黒でもない。

“死”の光。


シオン「死線視認(デッド・サイト)


ドクン


心臓を貫かれた。

肺に血が流れ込む。

呼吸ができない。

体温が奪われていく。

世界が暗くなる。


ハルト「っ……ぁ……」


気づけば、膝から崩れていた。

傷など一つもない。

それでも、心臓だけは狂ったように脈打っていた。


シオン「お前は、死を知らなすぎる」


その恐怖は圧倒的だった。

身体が動かない。

雷すら出ない。

シオンはゆっくり近づく。

セキは震えていた。


セキ『やっぱり……無理だ。シオンに勝てる人なんて……』


誰も、シオンには勝てない。

その時。


バチッ


ハルトの指先。

震えながらも、雷が走っていた。


ハルト「……だめだ」


シオン「?」


歯を食いしばる。

怖い。

今でも。

頭の中は死で埋め尽くされてる。

それでも、立ち上がるのを止めない。


ハルト「……絶対に……セキには手を出させない」


無理やり地面を踏み込む。

鎌を強く握る。

恐怖を振り切り、雷が爆発する。


ハルト「突雷断(アサルトスパーク)!」


真正面から斬りかかる。

シオンの目が僅かに見開く。


シオン「……そう来るか」


雷が炸裂。

だが次の瞬間には、シオンの姿は消えていた。


ハルト「っ……!」


シオンは既に、遠くのビルの影に移動していた。


シオン「初めてでここまでやれるのはお前で3人目だ」


ハルトはシオンの目を見る。

その目だけが少し変わっていた。


シオン「勝負はお預けだ。また今度、決着を着ける」


そして、シオンがセキを見る。

さっきとは違う、冷たい目で。


シオン「……お前はもういらない」


セキ「っ……」


シオン「後は好きにしろ」


完全な切り捨てだった。

そして、シオンの身体が闇に溶ける。

気づけば、もういない。

ハルトとセキだけが残されていた。


ハルト『なんだよ……あれ』


今まで戦った誰とも違う。

あれは、“死”そのものだった。


セキ「……私、もういらないんだ」


セキは俯く。

瞳が揺れていた。


セキ「だったら、ハルトが私を倒してよ」


ハルト「……」


その声は、諦めきった声だった。


セキ「どうせ私は弱いし、シオンにも捨てられたし、生きてても意味が無い……」


その瞬間。

ハルトはセキの肩を掴む。


セキ「っ……!」


ハルトの目。

シオンとは違う。

真っ直ぐだった。


ハルト「ダメだ、君は生きてなきゃダメだ」


セキ「……え」


ハルト「必ず強くなって、そしてあいつらに一泡吹かせてやるんだ」


全身が震える。

そんなこと、考えたこともなかった。

でも、セキは首を横に振る。


セキ「無理だよ……!シオンには絶対勝てない……!他のみんなだって、私が勝てるような相手じゃないし……!私は……」


涙が滲む。

恐怖、焦り。

全部吐き出すように。


セキ「私は、絶対に勝てない……」


ハルトは黙り込む。

そして、心の中で同じことを思っていた。


ハルト『多分、今のままじゃ勝てない。今のセキの力だけだと……多分』


短期間であのシオンに届く。

そんな簡単な話じゃない。

でも、その時。

ハルトの脳裏へ、あることが浮かぶ。

ソラやミナたちが急に強くなった現象。

レイとトア、あの2人が話していた。

極限状態。

感情。

死線。

ある条件下で発動する。

あの2人が名ずけた。


ハルト「…… “エグシヴ”」


セキ「?」


ハルトの表情が変わる。


ハルト「それだ」


セキ「え?」


ハルト「セキがエグシヴに成功すれば、勝てるかもしれない!」


セキ「ま、待って!そのエグシヴって何?」


ハルトは静かに答える。

過去のソラたちを思いながら。


ハルト「突然能力が大幅に強化される、覚醒みたいなものかな。セキにも可能性は十分ある」


全員、死線の中で変わった。

だったら、セキにもできるばすだ。


セキ「でも……どうやってエグシヴになるの?」


ハルト「詳しくは分からない」


即答だった。


セキ「えぇ……」


ハルト「でも、戦いの中で極限な状態になればいけるはず」


セキは少し黙る。

それでもハルトは続ける。


ハルト「ただ、俺がいてもダメだ」


セキ「……え、なんで?」


ハルト「俺に守られたら、多分極限状態になれず、エグシヴになれない。だから、1人で戦うんだ」


セキ「っ……」


セキの顔色が変わる。

怖い、当然だった。

今のセキにとって、1人は死と同じ。


ハルト「死を超えた時、何かあるはずだ」


セキ「そんなの……!」


でも、否定できない。

できることはそれしかない。

ハルトもそれを分かっていた。

セキは拳を握る。

怖い、逃げたい。

でも、変わりたい。

シオンに何もできなかった自分を、変えたい。


セキ「……分かった」


声は震えていた。

でも、目だけは少し変わっていた。


ハルト「大丈夫、セキは絶対に強くなる」


ハルトは小さく笑う。

そして、背を向けて歩き出す。


セキ「……どこに行くの?」


ハルト「仲間探し。1人で戦うなって言っちまったからな」


雷が走る。

周囲を確認する。


ハルト「それじゃ、今度会う時はお互い強くなってような」


セキ「あっ、ハルト……くん」


ハルト「ん?どうした?」


セキは震えながらも。


セキ「……無理しないでね」


その言葉。

色んな人に沢山言われた言葉。

ハルトは笑顔で。


ハルト「無理しすぎるのも、案外悪くないかもよ」


そしてハルトは、雷を纏いどこかへ消えてしまった。


セキ「……ありがとう。私、強くなる」


セキは、光が通る明るい場所へとゆっくり歩き出した。


ハルトはビルを足場にしながら、淡々と移動する。

その時。

ミニクリオの声が聞こえた。


ミニクリオ「確認します」


ハルト「?」


ミニクリオ「敵プレイヤーを見逃してもよろしいのですか?」


ハルトは少し空を見る。

青々とした不自然な空。

そして。


ハルト「当たり前だ」


ミニクリオ「理由を確認しても?」


ハルトは少し黙る。

脳裏へ浮かぶ、あの頃の光景。

アイラ、ノア、フィオ、セラ。

初めて出会った時。

優しかった。

温かかった。


ハルト「敵味方関係ない。困ってる人がいると助けちゃうんだよな。自然に」


ハルトは少し苦笑する。


ハルト「そう教えられたみたいなもんだけどな。もうすっかり変わっちまったよ」


ミニクリオは数秒沈黙する。

そして、頷いた。


ミニクリオ「承知しました」


ハルトは再び走り出す。

まだ戦いは始まったばかり。


ハルト『みんな……無事でいてくれよ』


ハルトは巨大な都市を駆け出した。

仲間を探すために。



数キロ離れた場所。

レンの突きがソラを襲う。


ソラ「やべっ」


咄嗟に後方へ飛ぶ。

だが、避けきれず頬が裂ける。

血が滲む。


ソラ『くっ、速すぎて避けきれない……』


細い針みたいな攻撃。

しかも、妙に軌道が読みにくい。


レン「また避けんの?しつこいわよ」


ソラ『それはこっちのセリフでもあるんだけどな』


その瞬間。

背後からゾワッとした気配を感じる。


アイ「こっちよぉ〜」


ソラ「っ!?」


アイは包丁を振り下ろす。


ソラ「流水刃(りゅうすいじん)!」


水の刃が生成させる。

二つの刃が衝突する。

だが、アイは止まらない。

包丁が水を裂く。

異常な執念。

異常な圧。


ソラ「まじかよ!」


包丁がソラに当たる直前。

不自然に軌道がズレる。


アイ「あれ〜?」


ソラ『良かった。あの時レベルの確率操作は出来なくても、多少は抗える』


AIとの決戦当時のエグシヴ状態よりも、精度は大幅に落ちている。

だが恩恵はあり、エグシヴを経験した者は、幾分のエグシヴが常時発動する。

ソラは一時的に2人から距離を置く。


ソラ『この2人、さっきから能力を使ってない。これで押されてるのはマズイな』


その時。

突然、アイが不気味に笑い出す。


アイ「ねぇ〜、もう “あれ”使ってもいい〜?」


レン「そうね。これ以上遊ぶ必要もないわね」


アイの口角がゆっくりと吊り上がる。


アイ「やったぁ〜!」


その一言と同時に、2人の雰囲気が変わる。

先ほどまでの余裕とは違う。

全く違う二つの圧。

ソラは思わず足を止めた。


ソラ「……まさか」


全身を這う悪寒。

目の前にいる2人はまだ何もしていない。

それなのに、今までとは比べ物にならないほどの圧迫感が、空間を支配していた。


レン「全部受け止めてよね」


アイ「ちゃんと耐えてねぇ〜」


次の瞬間。

2人は能力を解放した。

To be continued…

第47話 重すぎる心

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