第44話 恋愛
都市の中層区域。
ネオンが光る大通り。
貯水タンクが点々とする。
その中を1人、歩いている。
ソラ「相棒、どこにいるんだろう……?」
ソラ《確率操作水流 》
小さくため息。
辺りを見渡すが、誰もいない。
でもなぜか、胸が重い。
ここに来てからではないが、違和感を感じる。
ソラ『なんだろう、緊張してるのか?』
その時だった。
ヒュッ!
突然、風を裂く音がした。
ソラは異変に気づく。
ソラ「っ!?」
ソラの肩のすぐ横を通り過ぎる。
間一髪その攻撃は避けた。
一歩後ろへと下がる。
???「ったく、なんで避けれんのよ」
???「ふふっ、可愛い子が見つかったわね〜」
声のする方には、2人の女性がいた。
1人は、赤っぽい瞳に銀髪のショートヘア。
針みたいに細い短剣を指で回している。
そしてもう1人。
淡いピンクの瞳、黒髪のロング。
包丁のような刃を手に持っている。
その時。
《接触確認》
ソラ
・属性:水
・ランク:Ⅴ《超越者》
一方、ソラ側は。
《接触確認》
レン
・属性:恋
・ランク:Ⅴ《超越者》
アイ
・属性:愛
・ランク:Ⅴ《超越者》
ソラ「……2人組か、厄介だな」
レン「は?何よその言い方」
レンは眉をひそめる。
ソラ「い、いや別に」
レン「ムカつくんだけど」
その態度に、ソラは少し引く。
ソラ『うわっ、めんどくせぇタイプだこれ』
対して、アイはじっとソラを見ている。
笑っているが、目が怖い。
アイ「ねぇ、あなたって大切な仲間がいるの〜?」
突然の質問。
少し間が空く。
ソラ「……いるけど」
その返答に、アイは嬉しそうに笑う。
アイ「じゃあ、その人たちのこと大好きなんだ〜」
ソラ「まぁ、そうだな」
その瞬間、アイの笑みがどっと深くなる。
ゾワッと、背筋が冷える。
アイ「いいなぁ〜そういうの。私もだ〜いすき〜」
レン「ちょっとアイ」
呆れた顔で割り込む。
レン「初対面でそんなこと話すのやめなさいよ」
アイ「えぇ〜?」
不満そうに頬を膨らませる。
でも、包丁だけは離さない。
ソラ『こっちもこっちでめんどくせぇな』
レンはソラを見る。
そして、少しだけ目を細めた。
レン「あんた、1人なんでしょ」
ソラ「まぁな」
レンの短剣の握りが強くなる。
レン「なら、大チャンスね」
アイ「そうね〜、思いっきり愛せるわ〜」
その瞬間。
空気が変わる。
ソラの周囲に水が浮かび始める。
ソラ「悪いけど、君たちに時間を使ってられないんだ」
周囲の水が刃のようになる。
ソラ「2人同時にかかってきな」
一対二の圧倒的不利。
それでもソラは、怖がらない。
全ては、相棒に会うため。
超越者同士の戦いが今始まる。
薄暗いビルの下。
ハルトとセキは向かい合って座っていた。
セキはまだ警戒している。
少しでもハルトが動けば、すぐ逃げてしまいそうなほどに。
その様子を静かに見る。
ハルト「大丈夫、そんなに警戒しなくてもいい」
セキ「……だ、だって」
セキが目を逸らす。
その姿、まるで“戦いに向いてない”。
そんな印象だった。
ハルト「一つ聞いていい?」
セキ「……?」
ハルト「なんで、あんな願いになったか分かるか?」
その言葉を聞いた途端、セキの肩が小さく震える。
少し間が空く。
セキ「……私は、反対した。でも……」
ハルトの目が細くなる。
セキが俯く。
セキ「シオンには逆らえない……」
その声。
小さいけど、明確な恐怖があった。
ハルト「……シオン、あのランクⅥのやつか」
セキ「……あの人、強いから」
顔色が悪くなる。
思い出すだけで怖い。
そんな感じだった。
セキ「……多分、シオンが一番強い」
ハルト「……そこまでか」
小さく頷く。
セキ「本当に怖い……怒らせたらダメって、みんな思ってる」
ハルトは一つ一つ聞いていた。
シオン。
Ⅵ《到達者》。
ランクだけじゃない。
存在そのものが恐怖。
話を聞くと、そんな印象だった。
ハルト「じゃあ、もう一つ」
ハルトが首を傾げる。
ハルト「なんで君は、俺を見て怯えてたんだ?」
セキ「……え」
少し黙る。
そして、小さな声で呟いた。
セキ「……私、弱いから。この中で一番弱い……」
その声は、震えていた。
セキ「みんなからも……違う目で見られてる気がして……」
ハルト「……っ」
セキ「足引っ張るって思われてるような……」
セキの目に、涙が溜まる。
溢れぬように、拳を握る。
セキ「だから……怖い……置いてかれるのも……1人になるのも……」
確かに、その感情は本物だった。
なんて声をかけたらいいか。
ハルトも静かになる。
ハルト「……なるほどな」
こんな子を、今ここで倒す訳にはいかない。
敵として見る訳にはいかない。
ハルト「……じゃあ」
セキ「……?」
ハルト「君がどれくらいの実力なのか、試してみよう」
セキ「……え?」
セキの目が見開く。
ハルトはゆっくりと立ち上がり、前へ出る。
ハルト「大丈夫、傷つけたりしないから」
雷が指先へ走る。
バチッと雷光が鳴る。
ハルト「君が今どれくらい戦えるのか確かめたいだけだから」
セキ「……」
セキは少し戸惑う。
でも、ハルトの目を見る。
そこには、敵意は無かった。
しっかりと、真っ直ぐだった。
セキ「……分かった」
小さく息を吐く。
そして、セキは両手の指で五角形を作る。
セキ「宝石分裂」
キィンと宝石のような音。
セキが光に包まれる。
その光が、五つに分裂する。
赤、青、黄、緑、紫。
ハルト「……!」
光が形を変える。
そして、5人の“分身”が現れた。
それぞれ違う輝きを放つ。
ハルト「……面白い」
全身に雷が走る。
セキの身体が光る。
ハルト「遠慮なしで本気でかかってきな」
セキの実力が今判明する。
To be continued…
第45話 透明なる意思




