第43話 威風堂々
ナギの能力:風界守護。
空気を圧縮し、防御に特化した風の壁を形成する能力。
壁は一枚だけでなく複数同時に展開可能。
高密度に圧縮された風は、カイの斬撃すらも受け止める。
さらに風属性には、共通することがある。
それは、風そのものは基本的に他者から視認することはできない。
そのため、風の軌道や形状を直接確認することはできず、周囲の変化や衝撃からその存在を推測するしかない。
だがそれは、相手が別属性だった時に限る。
カイとナギは同属性。
互いの風を感知し、その軌道や形状、さらには圧力まで認識することが可能となる。
それだけではない。
さらにナギは、その先へと到達していた。
ただ見えるだけではない。
相手の風にも干渉することが可能となった。
風圧や流速を変化させることにより、カイの斬撃を逸らす。
風属性同士の戦闘において、ナギは今優位な存在に立つ。
ただ、数々の成長により2人の体力は消耗していた。
カイ「はぁ……はぁ……」
息が荒くなる。
傷も増え、立つことも辛い。
カイ『くそっ……さっきの一撃で終わらせるつもりだったが……。あいつ……俺の斬撃をずらしやがった……』
ナギもそうだった。
服が裂け、身体中から血が流れている。
お互い、限界を迎えていた。
ナギ「……まだ動くか」
カイ「そっちこそな……」
風が吹く。
2人とも理解した。
次で決まる。
次の技で勝敗が決まる。
カイ『同じ風なのに……センス次第で差が出るのか……。やっぱり――』
突然、笑いだした。
カイ『おもしれぇ!!』
2人の周囲で風が集まり始める。
風向きが変わり、都市の中で強風が起こる。
ナギ「これ以上長引かせる気は無い。終わらせる」
カイ「上等だ!」
次は無い。
これでもう、終わる。
ナギ「嵐圧排斥!!」
都市全体の風を巻き込む。
全てを押し出す超巨大な暴風。
対するカイも、風で対抗する。
カイ「天裂蹴撃!!」
超高速で脚を回転。
そのつま先に、全風力を乗せる。
全てを断ち切る超巨大な斬撃。
二つの暴風が今、激突する。
ドゴォォォォン!!!
空が裂け、衝撃が飛び交う。
近くのビルは一斉に吹き飛ぶ。
中心では暴風が渦巻く。
ほぼ互角。
だがそれは、一瞬だった。
カイの斬撃がズレ始める。
カイ「……!」
ナギ「何度やっても同じだ!ランクの低いお前は、俺には勝てないのだぁ!!」
その時。
カイは再び、風を見る。
流れ、圧力、軌道、全部を見る。
そして、笑う。
まるで戦闘狂みたいに。
同じ属性だから分かる。
なら――同じ属性だから“できる”。
カイ「借りるぜ!」
ナギ「……!?」
その瞬間。
カイの風向きが変わる。
斬撃が触れている部分から、ナギの暴風を自分の流れに合わせる。
ナギ「まさか――」
カイ「もっかいお前を超えてやるぜぇ!!」
斬撃の勢いが一気に跳ね上がる。
カイは成長した。
相手の風を読み、軌道を変え、それすらも利用する。
カイのセンスは、ナギを上回った。
ナギ「っ――!!」
初めて押し返される。
ナギの風が、カイによって支配されていく。
風力を増す度に、それを利用される。
押し返そうとしても、それ以上の力で押し返される。
カイ「これが――準最強のパワーだぁ!!」
ナギの風が全て飲み込まれる。
そして。
カイの斬撃が、真正面からナギへ叩き込まれた。
ナギ「がっ……」
ナギは大きく吹き飛ぶ。
高層ビルを貫通し、そのまま道路へと叩きつけられた。
戦場は、風だけが吹いていた。
カイは肩で息をする。
数々の成長により、もう限界だった。
その時。
《ナギの戦闘不能を確認》
《チームリオネの残存プレイヤー数:18》
崩壊した道路の中。
ナギは倒れていた。
身体が少しずつ粒子へ変わっていく。
カイ「サンキュー、あんたのおかげで最強に一歩近づいたぜ」
それでも、カイは少し寂しそうな顔をしていた。
カイ「……またどっかで戦おうな」
崩壊した都市。
静かな風だけが流れていた。
その時。
ミニクリオの声が響く。
ミニクリオ「第一縮小まで残り10分。対象エリアを表示します」
空中へ白いマップが映る。
巨大都市の外側。
その部分が赤く塗りつぶされていた。
カイ「……っと」
カイはゆっくり歩き出す。
仲間を探さないといけない。
誰でもいい。
今の状態では、1人は危険だ。
カイ「さてと、誰がいるかねぇ」
その背中が、ビルの隙間へ消えていく。
その遥か後方。
ビルの影。
三つの人影が、静かにカイを見ていた。
だが、3人とも動かない。
???「……強いね」
???「うん」
???「でも倒しがいがありそう」
3人は遠くから見るだけ。
静かに、カイを見守るように。
一方。
壊れた道路。
点滅する信号。
ハルトは1人、走っていた。
ハルト「……誰かいないか」
その時。
機械的な声が響く。
《ナギの戦闘不能を確認》
《チームリオネの残存プレイヤー数:18》
ハルト「カナデに続きもう1人撃破!今のとこ順調だ」
ハルトは周囲を見る。
仲間を探さないといけない。
『1人で戦うな』
自分で言った言葉だ。
ハルト「今もどこかで戦ってるかもしれない。早く誰か見つけないと……」
その時だった。
カツン。
小さな足音。
ハルト「!」
ハルトの目が鋭くなる。
もしかしたら敵かもしれない。
鎌に雷を纏う。
姿を見るまで警戒を解かない。
だが、物陰から現れた姿を見て、ハルトの動きが止まる。
白銀の髪。
少し怯えた表情。
そして、宝石みたいな瞳。
その瞬間、互いの視界に文字が表示される。
《接触確認》
セキ
・属性:石
・ランク:Ⅲ《観測対象》
一方、セキ側。
《接触確認》
ハルト
・属性:雷
・ランク:Ⅴ《超越者》
ハルト『あの子は確か……あの時の……』
セキ「っ……!」
セキは一歩下がる。
露骨に怯えていた。
ハルトはその姿を見て、ゆっくり雷を消した。
ハルト「安心して、いきなり戦うつもりはない」
セキ「え……」
セキは警戒したまま。
少し驚いた顔をする。
目の前の少女。
他の人とは違う。
そんな気がした。
ハルト「少し、話さないか?」
20人の願いを持つ男と、20人の中で最も弱い少女。
初めて向かい合った。
To be continued…
第44話 恋愛




