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未完成のまま― 最適解に選ばれなかった僕たちへ ―  作者: はるねこ
第2期

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42/48

第42話 見えるから

カナデの能力:旋響波動(メロディ・ウェーブ)

手のひらから音波を発生させる能力。

放たれた音波は、振幅を変化させることにより種類が変わる。

今のカナデは、三つの音波を出すことができる。

吹き飛ばす力に特化した低音(テノール)

細い光線のように放つ超音(アルト)

超高密度の音波により切り裂く高音(ソプラノ)

だが、これだけでは終わらなかった。


カナデが音波を放つ度に、周囲に振動が伝わる。

ビルのガラスが次々と割れていく。


カナデ「高音(ソプラノ・)穿波(ヴィヴァーチェ)!」


音速と同等の音による斬撃。


ユリカ「っ!」


ユリカは咄嗟に手が出る。

斬撃の軌道はズレ、ユリカの肩を掠める。

血が服に滲む。

少しでも反応が遅ければ、その時点で終了。

冷や汗をかき始める。


カナデ「超音乱射(アルト・マルカート)!」


連続して放たれる細い音波。

どれも当たったら怪我だけでは済まない。


ユリカ「干渉領域(インターフェア)!」


全ての音に干渉。

一つ一つの音波が、ユリカを避けるように動く。

そして、全て避けきった。

少しずつ、呼吸が乱れていく。


カナデ「……やっと分かってきた」


ユリカ「?」


カナデ「あなたの能力の唯一の弱点。今までの戦いでようやく理解できた」


カナデの姿は、最初より遥かに落ち着いていた。


ユリカ「本当に分かったのかな?私の弱点が」


カナデ「そう。あなたはただ“ズラしてる”だけ。だから、この技は突破できないはず!」


その時、空間全体が揺れる。


カナデ「重音震壊(バス・ディエスイレ)!」


四つ目の音波。

これはただの揺れではない。

“空間そのもの”を振動させている。

カナデはこう思っていた。


『空間全てを揺らせば、振動をズラしてもまた次の振動が伝わる。だから、ズラしが無意味になる』


だが、カナデは勘違いをしていた。

ユリカは物体に対して“点”を捉えていると思っていた。

だから、一つ一つ振動をズラさなければならない。

しかしそれは違う。

ユリカは物体に対して“点”で捉えていても、その“点”は大きな物だった。

振動一つ一つを“点”とするのではなく、振動という一つの括りを“点”で捉えていた。

そのため、ユリカは一度の干渉で振動そのものをズラすことができる。

つまり、カナデの作戦は失敗した。

そう思われた。

だが、カナデも想定していなかった、ユリカ側の問題があった。

それは、“干渉が困難”。

ユリカの能力の一部である軌道のズラし。

これは、物体そのものに干渉し軌道をズラすことができる。

だが今回は特殊だった。

カナデによる空間の振動は、音波が空気を振動させているのではない。

“空間そのもの”を振動させている。

ユリカは振動という触れて感じられるものには干渉できるが、空間という“因果”が絡むと干渉が困難となる。

エルマとの戦いでは、“時間”という因果に触れることができた。

しかし、因果に触れることはそう簡単ではない。

ユリカは時間の流れを時間をかけて掴むことで、干渉に成功できた。

だが今回は、不意による攻撃。

つまりユリカは、この一瞬で空間そのものに干渉できなければならない。

カナデの思い違いが功を奏する結果となった。


カナデ『これなら……』


カナデは歯を食いしばる。

今までにない範囲と威力。

次々と地割れが起きる。


カナデ『響く……!!』


その瞬間。

誰かが笑った。


ユリカ「最っ高……」


過去のユリカなら無理だ。

しかし、それは過去のユリカだから。

今いるのは今のユリカ。

過去のユリカと今のユリカは、全く違かった。


ユリカ「全域否定(ゼロ・ドミネーション)


空間全てを拒絶。

とてつもなく大きな空間の振動、それが最初から無かったかのように――消えた。


カナデ「……え」


カナデの背筋が凍る。

何か見てはいけないものを見てしまったかのように。


カナデ「……どうして?どうして!!」


ユリカ「どうしてって、簡単よ。空間に触れただけ。ね、簡単でしょ?」


簡単。

その言葉に、カナデは怒りを見せる。


カナデ「ふざけないで!!“空間に触れる”?そんなの簡単な訳ないでしょ!!」


もう一度、手のひらを向ける。

その雰囲気は、今までとは違う。

一種類だった音が、二種類、三種類、そして四種類。

全て、綺麗に重なり合う。


カナデ「もういい!!私、あなたのこと大っ嫌い!!」


それでもユリカは、まだ笑っている。

余裕を残している表情で。


ユリカ「いいよ!もっと、もっと私を楽しませてぇ!!」


その瞬間。

ユリカの口が止まる。

少し目を見開く。


ユリカ「……っ」


パチン!

突然、自分の頬を叩く。


カナデ「……え?」


ユリカは小さく息を吐く。


ユリカ「ダメね、私。人の命がかかってるのに、また楽しんじゃってる」


その声は、自分に言い聞かせているようだった。

ユリカは目を閉じる。

そして、ゆっくり開く。

その瞬間、空気が変わった。

さっきまでの余裕。

笑顔。

楽しさ。

全部が消える。

残ったのは、冷たい戦意だけ。


カナデ「……!?」


本能が危険と叫ぶ。

これは、今までのユリカではない。


ユリカ「すぐに終わらせるわ」


ユリカの瞳が暗く光る。

心臓の音が聞こえる。

目を見る度に、胸が痛くなる。


カナデ「っ……もうどうなっても知らない!!」


四つに重なった音。

それが、同時に放たれる。


カナデ「四声協奏曲(カルテットレクイエム)!!」


放たれたその時、空間は振動し、ビルは崩れ始める。

本来一種類しか出せないカナデの音波。

それを、高音(ソプラノ)超音(アルト)低音(テノール)重音(バス)

四種類同時に発動する。

ユリカとの戦闘により成長したカナデだからこそできる大技。


カナデ「もう二度とあなたの顔を見ないために!!全部消え尽くす!!」


もう、遅かった。

ユリカは既に、動いていた。


ユリカ「全干渉領域(フルインターフェア)


世界が止まった。


カナデ「っ――!?」


視界が真っ白になる。

身体が動かない。

四つの音波は、ユリカに届く直前に逸れた。

ここにあるものを全て、“完全支配”。


カナデ『動け……ない……』


無理やり音を放つ。

しかし、上手くまとまらない。

カナデの精神そのものを押さえつけている。

ユリカはゆっくり近づく。


ユリカ「カナデちゃん」


返事ができない。

ユリカは続ける。


ユリカ「私はね」


ゆっくり歩き続ける。


ユリカ「あなたのこと」


耳元まで近寄る。


ユリカ「大好き」


静かに指を鳴らす。


ユリカ「精神断裂(マインドブレイク)


精神側が完全に破壊される。

カナデは膝を付き倒れる。

完全に動かなくなった。

そして、身体が光の粒子となり消えていく。


ユリカ『本当はもっと、一緒に楽しみたかったな……』


その時、どこからか機械的な声が響く。


《カナデの脱落を確認》


《リオネチームの残存プレイヤー数:19》


ユリカはカナデを見ている。

どこか寂しいような、悔しいような、そんな表情で。

ゆっくりと顔を上げる。


ユリカ「さて、みんなを探さないと」


目つきが変わる。

次の戦場へと向かう目。

足音を鳴らしながら、崩壊した都市を歩き出した。



二つの暴風が衝突する。

ビルが揺れ、道路が砕け、電子看板が吹き飛ぶ。

都市そのものが嵐へ飲まれていた。

その時。


《カナデの脱落を確認》


《リオネチームの残存プレイヤー数:19》


ナギの動きが一瞬止まる。


ナギ『さっそくやられたのか。思ったよりも速いな……』


カイ「よそ見してんじゃねぇぞ!!」


カイは両手を広げる。

風がカイの周りに集まっていく。


カイ「空裂刃(エアリッパー)連撃(ラッシュ)!」


無数の斬撃。

だが、さっきまでとは違う。

ナギは見えなくても分かった。

風の壁を明らかに避けている。


ナギ「……!」


ナギも斬撃は見えていなかった。

斬撃をモロに喰らう。

さっきまで傷一つ無かったが、次々と増えていく。


カイ「どうした!!壁見えてんぞ!!」


完全に流れが変わっていた。

風向きが一気にカイへと向いた。


カイ『いける!このまま押し切ってやる!!』


風の流れ。

壁の位置。

全てが見える。

だからもう、止まらない。


カイ「絶空断界(ゼックウダンカイ)!!」


幾つにも重なる巨大な斬撃。

ビルすら断ち切る超風圧が、ナギを襲う。


ナギ「風陣障壁(ストーム・シールド)


正面に巨大な壁が築く。

だがその威力は、ナギの壁をも切り裂く。


ナギ「何ぃ!?」


カイ「ぶった斬れぇ!!」


その時。

ナギの視界に何かが見える。

風が揺れる。

空気が流れる。

そして、全てが見える。


ナギ「……っ!」


その瞬間。

カイの斬撃が逸れる。

後方の高層ビルが崩壊する。


カイ「なっ!?」


ナギはゆっくりカイを見る。


ナギ「お前だけじゃない」


ナギの周りに風が集まる。

どんどん強くなり、竜巻が起こる。


ナギ「俺だって見えるからな」


暴風と暴風が、再び衝突する。

To be continued…

第43話 威風堂々

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