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未完成のまま― 最適解に選ばれなかった僕たちへ ―  作者: はるねこ
第2期

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第41話 音を奏でる

ガラスの割れたビル。

煙が舞っている。

開けた道路。

そこに1人、カナデが立っていた。


カナデ『これで倒せた……訳ないけど。流石に無傷じゃ済まないはず』


もう一度、手のひらを向ける。

その時。


カナデ「……!?」


目の前にいた。

何も無かったかのように歩く、ユリカの姿が。


カナデ『なんで……普通に動けるの……』


ユリカは何も言わず、ただ近づいてくる。

その顔は、少しだけ笑っていた。


カナデ「っ……!」


先に動いたのは、カナデだった。


カナデ「低音衝波(テノール・リゾルート)!」


力強い音波が放たれる。

真っ直ぐ、ユリカへと。

だが。


ユリカ「ふふっ」


ユリカはまだ、笑っていた。

指を軽く動かした瞬間、軌道が歪む。


カナデ『軌道が……変わった……?』


音波が遠くのビルへぶつかる。

窓ガラスが一斉に砕ける。


カナデ『なんで……どういうこと……?』


ユリカ「だめでしょ、考え事なんてしてたら」


ユリカはカナデに指を向けていた。


ユリカ「思考侵入(マインドスリップ)


その瞬間、カナデの身体へ違和感が走る。

視界がズレる。

平衡感覚が狂う。

思考が乱れる。


カナデ「うっ……!」


頭を抱え込む。

それでも、攻撃の手を止めない。


カナデ「超音閃波(アルト・アリア)!」


高速で放たれる音の光線。

その速さは、秒速約180m/s。

だが。


ユリカ「残念」


顔目掛けて放たれた音。

触れる寸前、勢いよく真下へと落とされた。

地面には数mの細い穴が作られた。


ユリカ「当たらなくてよかった〜」


カナデ『何……この人……』


ユリカは一歩前に進む。


ユリカ「ねぇ、カナデちゃん」


カナデ「っ……!」


もう一歩、前へ。


ユリカ「そんな綺麗な音だと」


さらに、もう一歩。


ユリカ「私には届かないよ?」


気づけばカナデのおでこに、ユリカの指が触れられていた。

だがもう、遅かった。


ユリカ「思考侵入(マインドスリップ)


目の前が白くなる。

何も、見えなくなる。


カナデ「……っ」


膝から崩れる。

カナデは、白目を剥いていた。


ユリカ「もう終わり〜?あーあ、つまんない」


動かなくなったカナデを見て、指を向ける。

先からは白いような、青いような、淡い光が溢れる。


ユリカ「今楽にするからね」


カナデは手も足も動かせない。

そもそも、考えることすらできない。

もう、何もできない。


『ふんふんふふんふーん♪』


どこかで聞き覚えのあるメロディー。


『ふふんふーんふふんふーん♪』


曲名も知らない。

歌手も知らない。

小さい頃から口ずさんでいた。

思い出のメロディー。


『ふんふふんふーん♪』


私の唯一のメロディー。


カナデ『……!』


突然、動かなかった身体が動き出す。

手も足も、徐々に感覚が戻る。


ユリカ「えっ?起きちゃったの?」


そしてカナデは、立ち上がった。

白目から黒目に戻る。


カナデ『これが、私のメロディー!』


キィィィン!!

ヘッドホンからノイズが溢れ出す。

周囲のビルのガラスが全て砕ける。


ユリカ「よかった〜。まだ戦う元気はあったね」


その時。

ユリカの視界が揺れる。


カナデ「高音烈斬(ソプラノ・カデンツァ)!」


圧縮された超高密度音波。

音が炸裂する。

その音は、初速から音速と同格だった。


ユリカ「……!」


ユリカの左頬を掠めた。

その音波が、ビルを真っ二つに切り裂いた。


カナデ「今度は……」


真っ直ぐ、ユリカを見る。

さっきまでとは違う、光り輝く瞳で。


カナデ「あなたに音を響かせる!」



ビルの屋上。

二つの風が衝突していた。

その時。

どちらかが吹き飛び、ビルへ激突する。

カイだった。


カイ『やっぱり、ランクⅤは伊達じゃねぇか』


すぐさま姿勢を立て直し、ナギに殴りかかる。


カイ「風閃打(ウィンドブロウ)!」


打撃の後に斬撃が飛ぶ初見殺し。

絶対に斬撃を喰らう。

ナギが手を振る。


ナギ「風陣障壁(ストーム・シールド)


だが、何も起こらない。

変化も何も無い。


カイ「どうしたぁ!力みすぎたかぁ!」


拳を振りかぶる。

圧縮した風を乗せて。


カイ「ぶっ飛べぇ!!」


その時。

ナギのすぐ手前で、拳が何かにぶつかった。

さらに斬撃も“そこ”にぶつかる。


カイ「!?」


カイの身体が空中で停止する。

見えない。

でも確かにそこにある。

まるで、巨大な壁を叩いているみたいだった。


ナギ「調子に乗りすぎだ」


ナギはもう一度手を振る。


ナギ「風圧殺壁(ストーム・プリズン)


何も見えない。

だが、カイの周囲から圧力がかかる。


カイ「がっ……!」


肺が潰れそうになる。

ナギがゆっくり歩く。

その足元。

まるで、何かを踏み台にしている。


カイ『なんだこいつ……!』


今のナギは、空間を支配しているように見えた。


ナギ「風陣障壁(ストーム・シールド)


ナギが一瞬で距離を詰める。

何かを蹴り加速。

そのまま、拳がカイへと叩き込まれる。


カイ「ぐぁっ……!!」


大きく吹き飛ぶ。

だが。


ナギ「風陣障壁(ストーム・シールド)


空間の途中で、背中に強い衝撃が加わる。

また、壁にぶつかったかのように。


カイ「ぐっ……!」


ナギ「その程度か?」


カイは歯を食いしばる。


カイ「まだだぁ!!」


大きく手を広げる。

周囲の風を集める。


カイ「空裂刃(エアリッパー)連撃(ラッシュ)!」


無数に放たれる風の斬撃。

それでもナギは立ったまま。


ナギ「無駄だ」


斬撃は何かにぶつかり、無効化される。

再びカイを見る。

だがもう、そこにはいなかった。


カイ「空走脚(エアステップ)!」


その声は、後ろからだった。


カイ「風閃打(ウィンドブロウ)!」


大きく振りかぶる。

さっきよりも素早く。

だが。


カイ「っ……!」


そこにもあった。

謎の壁が。


ナギ「俺の正面だけだと思ったか?残念、後ろもだ」


カイの身体に衝撃が加わる。

またもや吹き飛ばされてる。

そして、空中で急に止められる。


カイ「うっ……」


息が乱れる。

完全に劣勢。


ナギ「おいおい、さっきまでの威勢はどうした?まさかこれがお前の本気か?」


めまいが止まらない。

強い衝撃により脳に大きなダメージ。


カイ『……最強……すまねぇ。お前の言葉……従ってれば……』


その時。

突然、脳裏に浮かぶ。

あの時の言葉。

それよりももっと前。

ハルトと、ケイル。

同じ雷属性の共闘。

あの時の2人。

まるで、お互いに見えているかのようだった。

雷の流れが。


カイ「……あ」


風が吹く。

その瞬間。


カイ『同じ属性なら、見えるはずだろ』


ナギ「?」


カイは静かに目を閉じる。

風の流れ。

空気の揺れ。

全部を感じる。


カイ『どこだ……』


都市を流れる風。

その中に、“不自然な流れ”。

そこだけ、止まっている。

風の壁が。


カイ「……見えた!」


ナギ「!」


その瞬間。

カイが消える。


カイ「空走脚(エアステップ)!」


今までとは違う。

真っ直ぐ突っ込まない。

壁を避けるように動く。


ナギ『避けた……!?見えているのか、俺の風が!?』


カイ「瞬風穿脚(ゲイルランス)!」


ナギへ初めて攻撃が通る。

さらに、打撃のあとの斬撃も当たる。


ナギ「ちっ……」


後方へ下がる。

カイは不気味に笑う。


カイ「なるほどな。風の壁、見えりゃただの障害物だ」


ナギの表情が変わる。

少し、焦っているような顔。


カイ「こっからは俺のターンだ」


風が強まる中。

カイの反撃が始まる。

To be continued…

第42話 見えるから

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